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子宮脱は出産経験がある女性なら誰でも起こりうる疾患!原因や症状・治療法・予防法について

「夕方になると膣から何か降りてくる感じがする」「力を入れると尿漏れすることがある」「お風呂に入った際、何か丸いものが外陰部に触れた」などの症状はありませんか?

このような症状がある場合、「子宮脱」の可能性があります。

子宮脱とは、子宮を支えている靭帯や筋肉が緩むことで子宮が下がってくる女性特有の疾患です。骨盤臓器脱のひとつに分類され、軽度の場合を子宮下垂、進行して子宮の一部もしくはすべてが外陰部より脱出した場合を子宮脱と呼びます。

子宮下垂くらいの状態では無症状のケースも多く、婦人科健診などで発覚することも多いですが、子宮脱にまで進行すると、お腹に力を入れたときや歩いているときなどに自分で気づくこともあるようです。

この記事では、子宮脱の主な症状や原因、治療と予防についてご紹介します。なんらかの症状を感じていながらも、恥ずかしさから受診できずにお悩みの方は、ぜひ最後まで読んでみてください。

子宮脱とは

上述の通り、子宮脱とは子宮が膣の出口から脱出した状態のことです。がんなどとは異なり、命に直接関わる疾患ではありませんが、症状が気になって外出しにくくなり、家族や友人と旅行することも無くなってしまいます。

また、仲の良い友人同士でも話しにくいデリケートな内容のため、症状を感じていても医療機関を受診しにくく、ひとりで悩んでいる方も多いようです。

ここではまず、子宮脱の原因や症状などについてご紹介します。

骨盤臓器脱とは

骨盤臓器脱とは、子宮や膀胱、直腸などの骨盤内にある臓器が体外に脱出する女性特有の疾患です。膀胱や直腸などの臓器は、子宮の付近にあるため、複数の臓器が一緒に下がってくるケースも多いことから、総称して「骨盤臓器脱」や「性器脱」と呼ばれることもあります。

また、骨盤臓器脱は脱出する臓器によって呼び名が変わります。たとえば、子宮が下がることで起こるのは「子宮脱」、膀胱なら「膀胱瘤」、直腸なら「直腸瘤」といった具合です。

その症状からなかなか他人に相談できず、女性のQOLを低下させる要因になるため、症状を感じたら早めに医療機関を受診することが大切です。

子宮脱の主な症状

以下は、子宮脱の主な症状です。

  • 外陰部にピンポン玉のようなものが触れる
  • 座ったときに丸いものの上に座っている感じがする
  • 股に何か挟まっているような違和感がある
  • 頻尿
  • 尿漏れ
  • 尿閉(尿が出にくい)
  • 便秘
  • 便失禁

子宮が脱出して下着に触れることによって下着に血がつくことはあるものの、子宮が外陰部から脱出したことが原因で子宮自体に起こる症状はあまりありません。それよりも、むしろ子宮とともに下垂した膀胱や直腸に関する症状の方が多いです。

軽度の場合は症状がないことも多いですが、進行して重度の状態になると外陰部から完全に子宮が脱出した状態になるため、歩きにくくなったり痛みを感じたりと、生活に支障をきたすこともあります。

また、子宮脱を放置すると膣から雑菌が侵入して膣炎や子宮頚管炎、骨盤腹膜炎などを引き起こす恐れもあるので、早めに適切な治療を受けるようにしましょう。

子宮脱の原因

以下は、子宮脱の原因です。

  • 出産
  • 閉経による女性ホルモン(エストロゲン)の減少
  • 長時間にわたる立ち仕事
  • 日常的に重たいものを持っている
  • 肥満
  • 排便時のいきみ
  • 便秘
  • 気管支炎や喘息などによる慢性的な咳
  • 骨盤内の手術

子宮脱は、子宮が下がることから子宮になんらかのトラブルが起きたと考える方も多いですが、実は子宮ではなく膣が原因で起こります。さらにいうと、膣や子宮、膀胱や直腸などをハンモックのように支えている靭帯や筋肉、筋膜(骨盤底筋群)がゆるむことが原因です。

骨盤底筋群がゆるむ原因はさまざまですが、中でもとくに多いのが出産です。出産回数が多い方や巨大児を産んだ方は、出産の時点で骨盤底筋群が損傷を受け、すでに子宮下垂の状態になっていることも。

出産後すぐに子宮脱が発症することはあまりないですが、閉経を迎える頃になると症状が現れはじめるケースも多いでしょう。

子宮脱になりやすい方とは

原因からもわかるように、子宮脱になりやすいのは出産回数が多く、更年期を迎える頃から60代の女性です。なぜなら、出産によるダメージだけでなく、年齢を重ねたことによって骨盤内の臓器を支えきれなくなってくるからです。

出産を経験した方の約50%が、子宮脱を含むなんらかの骨盤臓器脱になっているといわれています。

子宮脱の治療と予防について

子宮脱が疑われる場合、女性泌尿器科や骨盤臓器脱専門外来、ウロギネ科などを受診するのがおすすめです。婦人科を受診しても診てくれますが、場合によっては子宮脱を専門としている医療機関を紹介されることもあるでしょう。

医療機関では症状や妊娠、出産歴、既往歴などの問診を行います。その後は尿検査や内診、超音波検査を行うのが一般的です。初診時に重症度や治療方針までほぼ決定するので、場合によってはさらに詳しい検査が行われるかもしれません。

子宮脱の治療法は、程度によって変わりますが、具体的にどのような種類があるのでしょうか。ここでは、子宮脱の治療と予防についてご紹介します。

子宮脱の治療は主に5種類

以下は、子宮脱の主な治療法です。

  • 骨盤底筋トレーニング:軽度や中程度の場合に行う、骨盤底の緩んだ筋肉を鍛えて症状を改善するトレーニング。肛門や膣を意識的に締めたりゆるめたりする。
  • 薬物療法:初期の段階で行われる治療。漢方薬や女性ホルモン補充療法などがあるものの、効果のほどは明らかでない。
  • ペッサリー療法:手術を避けたい場合や既往や高齢で手術が不可能な場合に挿入する膣内装具。子宮口にはめ込んで固定し、子宮が脱出しないようにする。2〜3か月に1回の交換が必要。
  • フェミクッション:クッションがついたパッドを股にあて、外から圧迫することで子宮の脱出を防ぐ方法。従来の治療法が適応しない患者さんも使用でき、継続して使用することで症状の進行を抑制する。
  • 手術:上記の治療で症状が改善されない場合などは手術が検討される。現在「TVM手術」や「膣閉鎖術」、「子宮摘除・膣断端吊り上げ固定・膣壁縫縮」、「腹腔鏡化仙骨膣固定術」の4つの方法で手術が行われている。

一般的に、症状が軽度の場合は骨盤底筋トレーニングや生活指導を行い、子宮の一部もしくはすべてが完全に脱出している場合はペッサリー療法や手術などの治療が行われます。軽度の場合でも、ペッサリーを使用したり手術を行ったりすることもあるようです。

手術が必要になった場合でも、開腹せずに腹腔鏡下で行われるケースや膣からのアプローチでできるケースも多いので、従来の手術よりも短い期間で治療が可能となりました。現在では、腹腔鏡下による子宮脱の手術も保険が適用されるので、比較的治療を受けやすいのではないでしょうか。

子宮脱を予防するためには

子宮脱の原因は、出産や加齢です。なかなか回避しにくいものですが、重症化すると手術が必要になることもあるため、予防を心がけておきましょう。

以下は、子宮脱の予防法の例です。

  • 高齢出産の場合は自然分娩にこだわらず、無理な出産をしない
  • 骨盤底筋トレーニングで筋肉を鍛える
  • 太り過ぎない
  • 排便時に強くいきまない
  • 便秘にならないよう心がける

子宮脱は、症状を自覚する頃には外陰部から子宮が脱出しているケースも多いです。子宮は一度下がってしまうと筋肉を鍛えても完全に元に戻らないことも多いため、日頃から骨盤底筋群を鍛えておきましょう。

結局のところ、食事や運動などの基本的な生活習慣を見直していくことで、子宮脱の予防にもつながります。肥満や便秘にならないためにも、食物繊維が豊富なものや水分量の多いものなどを多く摂取し、運動不足にならないよう心がけることが大切です。

子宮脱は長期間かけて徐々に進行します。骨盤底筋群を意識しながら、健康的な生活習慣を送りましょう。

まとめ

子宮脱の主な症状や原因、治療と予防についてご紹介しました。

子宮脱は、子宮の一部もしくはすべてが膣から体外に脱出する疾患です。膀胱や直腸なども一緒に下がってくることも多く、それに伴ってさまざまな不快な症状が現れることもあります。

年齢を重ねた中高年の女性の多くが悩んでいるポピュラーな疾患ではありますが、恥ずかしさから医療機関を受診できない方も。

また、どの診療科を受診すればよいかわからないなどの理由で、症状を我慢している方も多いため、実際にはさらに多くの方が罹患している可能性もあるでしょう。

子宮脱は、自分で気づくことができるうえ、適切な治療を受ければ必ず治ります。出来るだけ手術を受けたくない場合は、その旨を担当の医師に伝え、他の治療法で治せないか相談してみるのもおすすめです。

我慢して日常生活を過ごすことがないよう、自分に合った治療を受けるようにしましょう。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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