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卵子の個数は決まってる?|女性の身体の仕組みと妊娠との関係を解説

卵子の数は女性が生まれたその時から決まっています。」このように伝えられたら、どういうことなの?と気になる方も多いのではないでしょうか?卵子の数はもともと決まっているということもあり、将来は赤ちゃんを授かりたいけれども、今は仕事に邁進したい、もっと経済的に安定したいといった理由から、卵子を凍結させておくということを検討される方もいらっしゃいます。この記事では、どうして卵子の数が生まれた時点で決まっているのかを女性の身体のメカニズムから紹介していきます。そして、女性の年齢と卵子の数の関係性、卵子の質の関係性に関してもご紹介し、それらが妊娠を検討される際にどのように影響するのか、現在の医療体制はどのようなものがあるのかをご紹介していきます。

ぜひ最後までご覧ください。

卵子ってどのようにできているの?

疑問
卵子が作られる過程には、卵子を作るもととなる「原始卵胞」というものが関係しています。

卵巣の中にはこの「原始卵胞(卵胞)」がたくさん存在しており、さらにこの卵胞の中に小さな卵子が1つ存在しています。

排卵に至るまでには、まず初めに視床下部と下垂体からの命令によって、卵子が卵胞とともに成熟していきます。月経周期に合わせて、10~20個ほどの卵胞が2つの卵巣それぞれで成長します。

そして毎月1つずつ、十分に成熟した卵胞のみが破れて卵子が卵管を通って子宮へと移動します。この現象を私たちは「排卵」と呼んでいます。

そして破れるまでに至らなかった卵胞は黄体黄体ホルモンと卵胞ホルモンを分泌する球場の内分泌物)へと変化していきます。

女性の年齢と卵子の数

卵子の数は、まさに卵子のもととなる原始卵胞の数であるとも言えるわけですが、原子卵胞はいつ作られ、そして年齢とともにどのように数が変化しているのでしょうか?

原始卵胞は女性がお母さんのお腹の中にいる「胎児」のうちから既に作られています。そして、出産の際には約200万個もの原子卵胞が卵巣内に蓄えられています。その後、月経が開始されるまでに原子卵胞は自然と減少していき、思春期・生殖適齢期となる頃には20~30万個ほどまで減少しています。

胎児のときから生殖適齢期、その後の卵子(原子卵胞)の数の推移を示したものが以下の表になります。表の数値はあくまでも目安であり、すべての女性が該当するというわけではないことにご留意ください。

女性の成長 卵子・原始卵胞の数
胎生6か月 約700万個
出生時 約200万個
思春期・生殖適齢期 約20~30万個
月経開始後 1回の月経の周期に約1000個減少
35歳ごろ 約2~3万個

卵子が老化するとは?

不妊症治療や体外受精などについて調べた経験のある方は「卵子の老化」といったワードを聞いたこともあるのではないでしょうか?

この卵子の老化というのは上記で解説したように、卵子のもととなる原始卵胞が、女性が生まれた後に新しく作られることがないため、「排卵された卵子の年齢=排卵時の女性の年齢」であることを意味しています。

一方の男性の精子は精子のもととなる細胞を増やすことができるため、何歳になっても精子を作ることができるようになっています(精子を新たに作り出すことが可能ではありますが、決して男性の年齢が精子に影響しないというわけではありません)。

卵子の老化と妊娠の関係性

関係性
次にご紹介するのは卵子の老化と妊娠の関係性に関してです。

皆さんは、中学の保健授業や理科の遺伝に関する授業で、子どもの遺伝子はお父さんとお母さんの遺伝子を半分ずつ引き継いでいるとという話を聞いたことがあるのではないでしょうか?

遺伝子の情報は「染色体」に詰まっているのですが、本来の染色体は2つで1対という構造をしています。しかしながら、生殖行為(有性生殖)をする際に、次の世代に新たな染色体の組み合わせを引き継がせるため(生物学的には遺伝子を変化させて環境に適応するためとされています)、生殖器官では染色体を1つにする分裂が行われています。これを「減数分裂」と言い、卵子と精子を作り出す細胞分裂がこれにあたります。

そして、卵子と精子が受精をし、新たな受精卵となることで染色体が2つで1対のものに戻るわけです。「両親から半分ずつ遺伝子を引き継いでいる」というのはこのことを意味しています。

では卵子が老化することで受精や妊娠などにどのような影響が及ぶのかについて詳しく見ていきましょう。

卵子の老化による妊娠への影響

卵子が作られるメカニズム、卵子の老化とは「卵子の年齢=排卵時の女性の年齢」であるとお伝えしましたが、どのようにして影響が生じているのかを見ていきましょう。

上述したように卵子は減数分裂という細胞分裂を通じて作られています。その一方で、卵子を作るもととなる原始卵胞は女性が母親のお腹の中にいるときから既にできあがっているともお伝えしました。

これらのことを踏まえると、「赤ちゃんのうちにできあがった原始卵胞は、排卵に至るまでの間、卵子を作り出すための”減数分裂”という作業を中断させている状態」にあるということがお分かりいただけるでしょうか?

この中断期間が長くなればなるほど、いざ減数分裂を再開させる(卵子を作り出す)という作業が行われたとしても、減数分裂が上手くいかないケースが生じやすくなっていきます。

卵子の生成が上手くいかなかった場合は、受精卵になったとしても受精卵の内部では染色体異常などが生じており、着床に至らない、流産の危険性が高まる、無事に赤ちゃんを授かれたもののトリソミー(2つで1対である染色体が3つで1対となっているケース)を患うなど、さまざまな症状を引き起こすことが明らかとなっています。

卵子の老化・不妊症に対する医療体制

これまでの説明で卵子の老化がどのような影響をもたらすのかをご理解いただけたかと思います。

卵子が若いうちに赤ちゃんを授かるということの方が、赤ちゃんやお母さんの身体への負担という観点からも良いのかも知れませんが、現状はそう簡単にいくものではありません。

ここでは卵子の老化・不妊症に対する医療体制に関して、卵子凍結と人工授精・体外受精に関してご説明していきます。

卵子凍結

卵子凍結とは、卵子を凍結させて保存しておき、妊娠をしようと思ったタイミングで卵子を融解し受精に用いるというものです。

何度も説明したように「卵子の年齢=排卵時の女性の年齢」であり年齢を重ねるほどに妊娠の可能性は小さくなるとともに、妊娠したとしても抱えるリスクが大きくなる傾向にあります。

卵子凍結を利用することによって、今は妊娠を望まない、もっと仕事に邁進して経済的な安定性を確保してからにしたいといった理由から、比較的、妊娠への期待が大きい「若い卵子」を採卵しておき、凍結保存させておくことで後々にも妊娠を期待できるようになります。

卵子の凍結に関する費用や年齢制限・凍結した卵子での妊娠率など詳しい内容は以下のコラムにてご紹介していますので、ぜひそちらもご覧になってください。

卵子の凍結とは?妊娠率や年齢制限・費用まで紹介 (minerva-clinic.or.jp)

人工授精・体外受精

人工授精とは、女性の排卵日のタイミングに合わせて、男性から採精した精子を女性の子宮内に直接送り届け、妊娠を手助けする治療方法です。

体外受精とは、卵子と精子を採卵・採精したのちに、培養液上にて卵子と精子を出合わせ、2つの自力をもって受精をサポートする治療方法です。体外受精では受精卵を更に培養して、初期胚(しょきはい)、胚盤胞(はいばんほう)まで成長させた後に子宮内へと移植します。

卵子が老化するという可能性以外にも、卵子を作り出すための器官(卵巣や卵胞)などが老化によって機能が弱まってしまうということもあります。患者さん自身の改善によって得られる効果もある一方で、治療を通じたサポートもまた効果的です。

人工授精・体外受精に関する費用やスケジュール、体外受精の更に細かな移植方法など詳しい内容は以下のコラムにて紹介されていますので、お時間のある際にはこちらも覗かれてみて下さい。

卵子の老化は防げる?

老化
卵子の老化には「加齢」が大きく影響するというのは間違いのない事実です。しかしながら、日頃の生活習慣が「老化を加速」させている可能性も十分に考えられます。

「身体が老化する」というのが具体的にどのようなことかというと、体内の細胞が活性酸素と結びついて酸化し、細胞が本来果たすことのできた機能を失ってしまうことを指しています。

活性酸素とは、生物が酸素を取り込み、生命活動に必要となるエネルギーを生み出す過程においてその酸素の一部が変化した物質のことを指しています。

この活性酸素は「他の物質と非常に結びつきやすい(化合しやすい)」という特徴を持っており、体内に活性酸素を溜め込むことはまさに「老化を加速」させていることと同じ意味なのです。

そのため、卵子の老化を防止するための生活習慣としては、「①活性酸素の産生をできる限り抑えると同時に、②活性酸素が体内の細胞と結びつくことを防ぐこと」が重要となってきます。

活性酸素の産生を抑える

活性酸素は人がエネルギーを生み出すうえで必ず生まれるものであるため、ゼロにはできません。加えて、卵子の質の向上にはストレスの緩和や肥満の防止なども効果的であるため、「運動をしない」という選択も正解とは言えません。これらを踏まえて、効果的なのはウオーキングやヨガといった「緩やかな運動」です。

基礎代謝の向上や血流の改善、ストレス軽減などさまざまな効果を得られるのでぜひ試されてみてください。

活性酸素と体内細胞の結びつきを防止する

身体の酸化を防止するには、普段の食事に「抗酸化作用」のある栄養素が含まれた食物を取り入れることが効果的となります。代表的なものではビタミンエースと称されるビタミンA・C・EやコエンザイムQ10などがあります。これらの物質が体内の細胞よりも優先的に活性酸素と結びつくことで、体内の酸化・老化を防止することができるようになるのです。

それぞれのビタミンは水溶性・脂溶性、体内に留まっていられる時間など違いがあるため、調理法を工夫されてみたり、日々の食事と併せてサプリメントを利用することで補っていくことをお勧めします。

より詳しい改善方法に関しては以下のコラムも参考になるかと思います。ぜひそちらもご覧になってみてください。

妊娠しやすい体を作るために|生活習慣・食事についても紹介 (minerva-clinic.or.jp)

まとめ

楽しそうに考えている女性
ここまで、卵子の老化のメカニズム、老化による妊娠への影響、不妊治療体制、老化を防止するための日常習慣の改善方法に関してご説明してきましたがご理解いただけたでしょうか?

妊活に励むうえで大切なことは、排卵によって既に手放してしまった卵子を嘆くのではなく、今ある卵子やご自身のお身体をどのように大切にしていくかです。

この記事が妊活に励まれる女性やカップルのお力になれれば幸いです。

東京の「ミネルバクリニック」は臨床遺伝専門医が在籍するNIPT実施施設であり、たくさんの妊婦さんの悩みや不安と真摯に向き合い、笑顔になれる出産に導いてきました。ミネルバクリニックでは、妊娠9週から受けられる赤ちゃんの健康診断である「NIPT」を業界最新の技術と業界随一の対象疾患の広さで行っております。遺伝のエキスパートである臨床遺伝専門医が出生前診断を提供しておりますので、是非、お気軽にご相談ください。妊娠初期からの出生前診断を受ける医療機関にお悩みの方は、知識・経験・実績とも「第三者から認証されている」臨床遺伝専門医が診療している「ミネルバクリニック」まで是非、ご相談ください。

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プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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