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出生前診断後に中絶が認定される条件と手術におけるリスクを紹介

自分の血を引いた赤ちゃんを授かることは何より大きな喜びですが、全ての赤ちゃんが健康体で生まれるとは限らないのが現実です。

先天性疾患であるダウン症候群などを患っているかどうか調べる出生前診断は多くの妊婦さんが受検しますが、陽性反応が出てしまった場合はとても大きなショックを受け、中絶を決めてしまう妊婦さんも少なくありません。

皆さんは、出生前診断を受けた後に妊娠何週目まで中絶を決断する猶予があるかご存知でしたか?

この記事では、出生前診断後に中絶が認定される条件と人工妊娠中絶手術におけるリスクをご紹介していきます。

中絶(人工妊娠中絶)とは?

妊娠
ほとんどの妊婦さんが中絶とはどのような行為か理解していると思いますが、法で定められている人工妊娠中絶の定義についてまずご説明します。

人工妊娠中絶は「母体保護法」に基づいて妊娠を人工的に中断してしまうことを指します。

母体保護法に基づいて中絶が認められた場合、母親の妊娠週数に応じた人工妊娠中絶手術が実施されますが、妊婦さんは手術内容以前に、自分の妊娠に対して中絶が認められるかどうかを知っておかなければなりません。

出生前診断後に中絶が認定される条件

人工妊娠中絶は母体保護法に基づいて行えるかどうかが決まりますが、母体保護法では母親の状態のみ言及しており、以下の状態の何れかに当てはまることで中絶が認定されます。

  1. 妊娠の継続、もしくは分娩によって母体の健康を著しく害する可能性があるケース(経済的な理由も含む)
  2. 暴行、もしくは脅迫によって抵抗・拒絶ができない間に姦淫されて妊娠したケース

中絶が法律的に認められるのは、妊娠22週未満(妊娠21週6日まで)且つ医師の認定と夫の同意を得られた場合としています。

中絶は経済的な理由であったとしても医師の許可と夫の同意があれば認められるため、出生前診断の結果を見て中絶を決める場合は「妊娠21週6日までに結果が出る検査」を受けておく必要があります。

妊婦さんのほとんどが受ける出生前診断ですが、その本質は「赤ちゃんが生まれる前に染色体異常などの先天性疾患を調べることで、結果に応じた最適な分娩や出生後の療育環境を準備できる」というものです。

しかし、理想と現実は異なり、出生前診断で陽性反応が出た後にたくさんの妊婦さんが中絶を選択しているのが現状です。

出生前診断に対する論理的問題

日本ではかつて、企業が医療機関に対して母体血清マーカー検査のサービスを社会的・経済的価値があるとして販売した過去があり、障がいを持った子どもたちの親から「障がい児の出生を予防することを目的にした営利的な目的で提供している」と問題視されることもありました。

その後、1999年に厚生労働省より、母体血清マーカー検査に対して以下のような問題が懸念されると報告がありました。

1. 出生前診断を受ける妊婦が検査内容と結果を十分に理解せずに実施されている傾向がある
2. 胎児が疾患を持つ確率に対して、妊婦に誤解や不安を招く可能性がある
3. 胎児の疾患を見つけることを目的としたマススクリーニング検査として実施される可能性がある

日本では出生前診断に対してさまざまな見方がありますが、より安全で精度が高いNIPTの誕生によって、以前より出生前診断の認知が広まったことは間違いありません。

しかし、一部の施設では検査やリスクに対する説明が十分にされていないなどの問題が解決されていないため、染色体異常・遺伝子疾患に精通した臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーが在籍する施設を選ぶことは大事になってきます。

出生前診断の実施期間

「もし自分の子供が重い染色体異常症を患っていたらどうしよう…」と考える妊婦さんは、染色体異常症を検査できる出生前診断の実施時期を把握した上でスケジューリングしなければなりません。

以下は、全6種類の出生前診断の実施期間となっています。

出生前診断 実施期間
(妊娠週数)
結果待ちの期間
胎児超音波検査
非確定検査
10週〜13週
18週〜30週
0日
コンバインド検査
※非確定検査
11週〜13週 2週間程度
母体血清マーカー検査
クアトロテスト
※非確定検査
15週〜18週 2週間程度
NIPT
※非確定検査
9週〜10週以降 1〜2週間
絨毛検査
※確定検査
10週〜14週 2〜3週間
羊水検査
※確定検査
14週以降
2〜3週間

出生前診断は、非確定的検査で染色体異常症を持っている可能性を調べた上で、最終確認として確定的検査を受けるケースが多く見受けられます。

羊水検査は妊娠14週以降に受けることが可能ですが、結果を見た上で妊娠を継続するかどうか決める場合、結果待ちの時間を考えて妊娠17週までに検査を受けることが推奨されます。

出生前診断を受ける時期が遅くなってしまうとスケジューリングが上手くいかず、希望する検査が受けられない可能性があることを十分に理解しておきましょう。

人工妊娠中絶手術におけるリスク

妊婦
母体保護法に基づいて中絶が正式に認められた場合、妊娠週数に応じた人工妊娠中絶手術が行われます。

どのような手術が行われるのか気になる方のために、妊娠12週未満とそれ以降の人工妊娠中絶手術内容やリスクをご説明していきます。

妊娠12週未満の人工妊娠中絶手術

妊娠初期にあたる妊娠12週未満で中絶を決めた場合、「掻爬法」または「吸引法」という手法を用いた手術が行われます。

掻爬法は、ピンセットのような鉗子やスプーンのようなキュレットという医療器具を用いて子宮内容物を取り出す手術で、多くの医療施設で実施されています。

吸引法は、子宮内にチューブを挿入して子宮内容物を取り除く手術になり、WHOでは手動真空吸引法(Manual Vacuum Aspiration : MVA)を用いた手術を推奨しています。

多くの医療施設で掻爬法が実施されていますが手技が難しく、手術時間が長い・出血が多い・子宮内膜を傷つける可能性があるなどのリスクがあります。

一方で、吸引法の方は手術時間が短い・出血が少ない・子宮内膜へのダメージが少ないなどのメリットがあるため、人工妊娠中絶を受ける女性に推奨されています。

妊娠12週〜22週未満の人工妊娠中絶手術

妊娠12週〜22週未満の場合は、器具を用いて子宮口を開き、子宮収縮剤を用いて陣痛を人工的に促して流産させる方法となります。

患者様の体に負担がかかる可能性もあるため、基本的に数日間の入院が必要となります。また、妊娠12週以降に人工妊娠中絶を行った場合は、胎児の死亡届を役所に提出して埋葬許可証を発行してもらう必要があります。

人工妊娠中絶手術はほとんどのケースが健康保険の対象外となりますが、妊娠12週以降は手術費用の負担もさらに大きくなります。

出生前診断の結果に応じて中絶を考えるという方は、早めの決断をすることによってさまざまな負担が少なくなるといえます。

早い時期に受けておきたいNIPTとは?

NIPT
出生前診断は、赤ちゃんが障がいを持っているかどうかを妊娠初期から知ることができる検査ですが、なるべく早く受けておきたい方には新型出生前診断と呼ばれる「NIPT」をおすすめします。

NIPTは妊娠9週〜10週頃から実施されている染色体検査であり、染色体異常によって引き起こされるダウン症候群・18トリソミー13トリソミーなどを患っている可能性を調べることができます。

検査精度は感度99%・特異度99%を誇り、母親の血液を採取するだけで済むため、流産や早産を誘発するようなリスクも全くありません。

ただし、NIPTはスクリーニング検査のため、陽性・陰性どちらの結果が出ても染色体異常症の有無を確定することまではできません。

それでも非確定的検査の中でダントツの検査精度となっているため、NIPTを受検する妊婦さんは増加傾向にあります。

絨毛検査や羊水検査などの確定的検査には流産や早産のリスクが伴うため、赤ちゃんの染色体検査を受ける場合はまずはNIPTから検討することをおすすめします。

まとめ

出生前診断は検査結果に応じて出生後の準備を早い段階から進められるというメリットがありますが、NIPTや羊水検査で陽性と結果が出た場合にたくさんの女性が人工妊娠中絶を選択してしまっているのが現状です。

妊娠の継続・中断を決めるのは妊婦さんご自身ですが、染色体異常症に関して十分な知識を得ていないまま決断してしまう方もいるため、出生前診断を受ける場合は臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーが在籍する医療施設を選ぶのがポイントです。

東京の「ミネルバクリニック」では、妊娠9週0日目から世界最新鋭の技術を取り入れたNIPTを実施しております。

臨床遺伝専門医が在籍する遺伝子専門のクリニックであり、染色体異常・遺伝子疾患・染色体検査に関する専門知識を共有する遺伝カウンセリング体制も整っております。

出生前診断を質の高い医療施設で受けたいという方は、是非この機会に「ミネルバクリニック」までご相談ください。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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