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男性不妊の改善につながるサプリ利用|必要な栄養素と食生活の見直し

「不妊症」とは、健康な男女が妊娠を望んで避妊をせずに性行為を重ねるものの1年以上に亘って妊娠に至らない症状のことを指します。

不妊症の定義はもともと「2年以上に亘って」妊娠に至らない場合とされていましたが、晩婚化の進展などを背景に、日本産婦人科学会からの発案によって1年へと短縮されました。

晩婚化に伴った不妊症に悩むカップルも増加傾向にあります。特に不妊症の原因が男性側にある場合を「男性不妊症」と言います。

WHOが公表する調査では、不妊症に悩む全ての夫婦のうち、男性側に原因があるケースの割合は約50%に至るという報告がされており、妊娠を望む際には女性だけでなく男性も一緒になって妊活に励んでいく必要があると言えます。

この記事では妊活に励まれているカップルや、男性不妊症で悩まれているカップル向けに、食生活やサプリメントの併用を通じた妊娠の際に重要となる栄養素に関してご紹介していきます。ぜひ最後までお読みください。

妊娠のための良質な精子とは?

喜ぶ男性
まず初めに妊娠の可能性を向上するうえで重要となる精子とはどのような状態であるのかを確認したいと思います。

WHOが公表する妊娠の際の精子の状態を表す基準値は以下のようになっています。

項目 基準値
精液量 1.5ml以上/1回
精子量 3,900万以上/1回
精子濃度 1,500万以上/1ml
運動率 40%以上
正常精子形態率 4%以上

これらの数値はあくまでも基準値として定められているものであるため、これらの基準値を十分に上回っていても他の要因から妊娠に至らない場合や、基準値を下回っていても適切な改善や治療を通じて赤ちゃんを授かることもあります。

精液検査の結果も重要ですが、結果を踏まえたその後の取り組みを大切にしていきましょう。

男性不妊の改善に向けた食生活

食事
男性不妊症はさまざまな原因によって引き起こされるのですが、そのうちの約9割を占めるのが「造精機能障害」です。

精液中に精子が確認できない無精子症、精液中の精子量が僅かしかない乏精子症、精液中の精子量は十分であるものの運動能力の低下が見られる精子無力症などを総じて造精機能障害と呼び、良質な精子を造ることができなくなる症状を指します。

この障害が生じている要因が身体的なものであるならば外科手術によって改善を図りますが、そのようなケースでない場合には具体的に1つが要因となっているとは言い難く、日常の生活習慣に複数の要因が含まれているという場合がほとんどです。

そのため、それぞれに対して適切な改善を図ることが重要だと言え、ここでは特に食生活を中心とした栄養面での改善に関してご紹介していきます。

食事と精子の関係

まず初めに紹介するのは食事と精子の関係に関してです。妊娠のために男性が重視すべきことは「精子量を増やし、精子の質を高める」こと。精子の質を高めるというのは、簡単に言ってしまえば元気な精子(運動率の高い精子)を作ろうということです。

男性の精子は、精巣の中で毎日作られており、その日数は約70日ほどを要します。また、精子ができあがってから射精できるようになる(精巣から精巣上体、精管へと運ばれる)までには更に15日ほどの日数を必要とします。

つまりは、精子の量や質を改善していくためには最低でも3か月の日数を要するということです。

積極的に摂取したい栄養素

精子を作りだすうえで重要となる栄養素は以下のものが挙げられます。

  • たんぱく質
  • 亜鉛
  • ビタミンA
  • ビタミンC
  • ビタミンE
  • ビタミンB群

それぞれに関して見ていきましょう。

たんぱく質

精子は主にたんぱく質から作られており、精子の形成に関わる重要な栄養素のひとつです。精子に留まらず、人体のさまざまなパーツもたんぱく質を始めとした栄養素から作られています。

たんぱく質は動物由来の動物性たんぱく質(豚肉や牛肉など)と、植物由来の植物性たんぱく質(大豆など)に分類されます。

動物性たんぱく質はヒトが生活するうえで欠かせない必須アミノ酸を多く含んでいるという良さと同時に、植物性たんぱく質と比較して脂質の摂取も多くなってしまうという特徴があります。

植物性たんぱく質は動物性と比べてエネルギー量が小さいため量をたくさん摂れることや、その他の栄養素として水溶性ビタミンを含んでいるものが多いという良さがあります。一方で動物性よりも必須アミノ酸が欠けている、吸収率が僅かに小さい(動物性97%、植物性84%)といった特徴もあります。

このように、動物性・植物性たんぱく質にはそれぞれの良さがあるためバランスの良い摂取が重要と言えます。厚生労働省が公表する成人男性のたんぱく質摂取の1日当たりの推奨量は60gです。

亜鉛

亜鉛は骨や皮膚の成長を促進させ、免疫力を高める機能を持つ必須ミネラルです。加えて、男性の性機能に関わる働きを持つ前立腺や性腺に多く含まれ、この他にも男性ホルモンを作ることや、良質な精子を生み出す(精子の形成)ことにも大きく影響しています。

注意すべきこととして、亜鉛は必須ミネラルに指定されている一方で、一度の過剰摂取は急性中毒を引き起こしてしまう恐れがあります。1度に2g以上の摂取で中毒の可能性が出てくるので注意が必要です。

亜鉛を多く含むことで有名な牡蠣ですが、牡蠣100gの摂取で成人男性の1日当たりの摂取推奨量の12gを軽く上回りますので、一度に多く摂取しないように気をつけましょう。牡蠣の他にもレバーやソラマメなどにも多く含まれていますので、これらから亜鉛を摂取してみてもよいかと思います。

ビタミンA・C・E

人体の老化を防止する観点から「抗酸化」という言葉を聞いたこともあるのではないでしょうか?精子も例外ではなく老化をしてしまうものですが、それを防止する「抗酸化作用」をもつのがビタミンA・C・Eなのです。これらをビタミンエース(ACE)と呼ぶこともあります。

これらのビタミンを併せて摂取することにより相乗効果を見込めるのはもちろんですが、ビタミンAとビタミンEは脂溶性であること、ビタミンCは水溶性であり熱に弱いという性質があるため、脂溶性ビタミンは油や肉を使った野菜炒めにしたり、ビタミンCは生や蒸しものにするといった調理の工夫が必要となります。

加えて、ビタミンC・Eは人体へ蓄えられる量に限りがあり、排泄までの時間が比較的短い(体内に留まる時間が短い)ため、サプリメントなどを利用したこまめな摂取もお勧めされます。

ビタミンB群

ビタミンB群というのは、ビタミンB1、B2、B3、B5、B6、B7、B12、葉酸をひとまとめにしたものです。

これらのひとつを摂取するのではなく、バランスよく摂ることでビタミンB群のそれぞれが総合的に機能し効果を高めるようになっています。

妊活に励む際に重要にしたいのが特に葉酸です。葉酸を十分に摂取することで精子の染色体異常を抑える効果があることが明らかとなっています。

食生活の改善効果を高めるサプリメント

サプリメント
日々の食生活の改善を心掛けていたとしても、妊活に重要な栄養素を毎日バランスよく摂取するというのは簡単なことではありません。

そんな場合に検討したいのがサプリメントの利用です。普段の食事で足りていないと感じる栄養素を補えることはもちろん、摂取することそのものが難しい栄養素であっても手軽に摂取することができ食生活の改善効果を高めることができます。

ここでは上記に紹介した栄養素以外に、サプリメントだからこそ摂取をお勧めしたい栄養素をご紹介していきます。

コエンザイムQ10

コエンザイムQ10とは、体内で産生されヒトの細胞のうちミトコンドリアに貯蔵される化合物のことを言います。体内で生成可能である成分ではあるものの、その生成力は加齢に伴って減少していきます。高齢者ともなるとコエンザイムQ10が欠乏するということもよくあることです。

コエンザイムQ10が持つ重要な機能は細胞のエネルギーの産生を助ける機能と、高い抗酸化作用です。この高い抗酸化作用によって男性不妊症の場合には精子の老化防止、運動率の上昇効果が期待できます。

オメガ3脂肪酸

オメガ3脂肪酸とは脂質を構成する脂肪酸の一種であり、脂肪酸が他のさまざまな物質と結びつくことで脂質が形成されます。

脂質の人体に対する効果としては、脂質性ビタミンの吸収促進、身体活動のエネルギー源となるといったものが挙げられ、オメガ3脂肪酸に特有な効果として血流の改善効果があります。

血流が改善されることによって精巣や陰茎への血流が安定し、精子の生成の向上が図れるようになります。

マカ

マカとは植物のことであり、ペルー原産のアブラナ科に該当します。主に根の部分が食用として利用され、私たちの体へと摂取されています。

マカが持つ効能には、精力の回復効果や更年期障害の緩和、動脈硬化の予防などが挙げられます。

セレン

セレンは亜鉛などと同様のミネラル分になります。セレンの効果には抗酸化作用や免疫系や甲状腺ホルモンの正常な機能の維持が挙げられます。

男性不妊症では抗酸化作用が精子の老化防止として機能しますが、抗酸化作用を持つビタミンCの再生を促すための酵素の構成成分となることで更に抗酸化作用を発揮するという機能も有しています。

カルニチン

カルニチンとはアミノ酸の一種であるものの、体内では構造が少し変化したアミノ酸誘導体として存在しています。

カルニチンは人体のエネルギー産生を司るミトコンドリアの機能低下を抑制するという効果を持ちます。加えて、カルニチンは精液中に含まれ、含有量が増大するほど精液中の精子の運動能力の向上や精子量の増加が見られることが明らかとなっています。

まとめ

ここまで男性不妊の改善に役立つ食生活で摂取すべき栄養素や、サプリメントで補うことで更に食生活の効果を向上させる栄養素に関してご説明してきましたがご理解いただけたでしょうか?

妊娠のための良質な精子を作り出すには、必要な栄養をしっかりと摂取することに加えて、十分な睡眠や運動が重要となります。加えて、体に害となる喫煙を控えるといったことも有効となります。

今回の記事では栄養面の観点からご説明しましたが、妊活のための健康的な生活習慣づくりにも興味を持っていただけましたら幸いです。

東京の「ミネルバクリニック」は臨床遺伝専門医が在籍するNIPT実施施設であり、たくさんの妊婦さんの悩みや不安と真摯に向き合い、笑顔になれる出産に導いてきました。ミネルバクリニックでは、妊娠9週から受けられる赤ちゃんの健康診断である「NIPT」を業界最新の技術と業界随一の対象疾患の広さで行っております。遺伝のエキスパートである臨床遺伝専門医が出生前診断を提供しておりますので、是非、お気軽にご相談ください。妊娠初期からの出生前診断を受ける医療機関にお悩みの方は、知識・経験・実績とも「第三者から認証されている」臨床遺伝専門医が診療している「ミネルバクリニック」まで是非、ご相談ください。

ミネルバクリニックでご提供している不妊症遺伝子検査では、不妊症や性染色体異常に関連する遺伝子変異を特定することで正確な予後判定を行い、患者さんに最も適した治療法を特定することができるため、子供を持ちたいと願うすべてのカップルや個人に対して、最適な治療計画を導くことができます。是非ご検討ください。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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