InstagramInstagram

子宮復古不全になるかもしれない7つの原因とは?治療方法も詳しく解説

子宮は妊娠後期には妊娠前よりも6倍の大きさになると言われていますが、出産をしても子宮の大きさが元に戻りにくくなる「子宮復古不全」を知っていますか?

子宮復古不全になると悪露や出血が続き、痛みや貧血といった症状に悩まされてしまい、出産後に体の不調を抱えて生活しなければならない可能性があります。

今回は、子宮復古不全を引き起こしてしまうかもしれない7つの原因を中心に、子宮復古不全の基礎知識や治療方法を解説していきます。

子宮復古不全とは

妊娠すると赤ちゃんが大きくなるにつれて子宮も大きくなりますが、出産すると通常1ヶ月程で妊娠前の子宮の大きさまで戻ります。

しかし、何らかの原因で子宮が妊娠前の大きさに戻りにくくなっている状態のことを「子宮復古不全」と言います。

症状

子宮が収縮することで分娩の時に傷ついた血管が塞がりますが、子宮復古不全は子宮が産後日数に対して十分に収縮をしていないので、子宮が通常よりも大きく柔らかい状態であり、出血量が減りづらくなります。

そのため、血の塊を含んだ悪露が続き出血が治まりづらくなるだけではなく、多量の出血が原因で貧血を引き起こすこともあります。

また、悪露が続くと子宮内に感染症を起こすリスクが高まり、痛みや発熱といった子宮以外の部位にも症状がでる可能性があるので注意が必要です。

診断方法

診断方法は、まず問診や触診によって悪露や出血量、子宮の状態を確認します。

出血量が多い場合や子宮に異変が見られた場合は超音波による検査を行い、子宮の大きさや残存物を確認し子宮復古不全の診断を行います。

また、子宮復古不全の場合、貧血や感染症を引き起こしている可能性があるため、血液検査を一緒に行うのが一般的です。

万が一、感染症が疑われる時や子宮以外にも症状がでている時には、細菌の培養検査やMRI検査を行う可能性もあります。

子宮復古不全になりうる7つの原因

お腹が痛くて横になっている女性

子宮復古不全は出産後に起きてしまうトラブルの一つですが、どのようなきっかけで引き起こされてしまうのでしょうか。

ここからは、子宮復古不全になってしまうかもしれない原因を7つ解説します。

胎盤や卵膜が子宮に残っている

通常は、出産を終えると胎盤や卵膜は排出されますが、時に全て排出されず子宮内に一部が取り残されてしまうことがあります。

胎盤や卵膜が子宮に残ってしまうと、子宮の収縮の妨げになり十分に子宮が出産前の大きさまで戻ることができず、子宮復古不全を引き起こす原因になります。

子宮復古不全になる一番多い原因が、胎盤や卵膜の残存であると言われています。

子宮筋腫がある

子宮筋腫とは子宮にできてしまう筋肉のこぶのことで、良性腫瘍です。

2〜3割程度の女性が子宮筋腫があると言われており、悪性腫瘍になることはないとされています。

しかし、子宮筋腫が原因で不正出血や生理過多、月経困難症などの症状が出ることがあり、悪化すると鉄乏性貧血を引き起こしてしまうこともあります。

そして、子宮筋腫は子宮の収縮の妨げになるため、子宮復古不全になる原因の一つでもあります。

また、子宮筋腫があり、なおかつ、子宮復古不全になってしまうと、子宮復古不全で増えた悪露が子宮筋腫の妨げにより十分に排出されず、子宮内の状態がより悪化してしまう負の連鎖に陥ってしまうのです。

羊水過多や多胎児分娩

羊水が通常よりも多い場合や多胎児を妊娠していた場合、子宮がより大きく引き伸ばされることで子宮の筋肉が疲労してしまいます。

子宮の筋肉が疲労すると子宮が収縮しづらくなり、子宮復古までに時間がかかります。

子宮収縮抑制剤を長期間使用した

子宮収縮抑制剤とは、出産予定日よりも早い時期に起こってしまう切迫流産や切迫早産の時に使用される薬です。

子宮収縮抑制剤を切迫流産などの治療で長期期間使用すると、子宮復古不全になるリスクが高まってしまうと言われています。

母乳で授乳を行っていない

出産後、赤ちゃんに母乳で授乳をすることでオキシトシンというホルモンが脳から分泌されますが、このオキシトシンには子宮の収縮を促す作用があります。

そのため、完全ミルクで授乳を行っている方や、乳首が傷ついたり出産後すぐに母乳で授乳を満足に行えていなかったりする方は、完全に母乳で授乳をしている方よりも子宮復古不全になる確率が高くなると言われています。

帝王切開での出産

一般的に、帝王切開で出産をした場合は手術によって子宮の筋肉が疲労することで、子宮収縮に時間がかかりやすく子宮復古不全になりやすいと言われています。

そのため、帝王切開をした方は手術後に子宮収縮薬を投与することが定められており、薬を使って子宮の収縮を促し子宮復古不全になるのを防ぎます。

必ずしも帝王切開をしたからといって子宮復古不全になるわけではなく、子宮収縮薬が効かない時や他の原因が隠れていた時に発症してしまうことがあります。

便秘

子宮だけではなく、便や尿が溜まることで膀胱や直腸が膨らんでしまっても子宮収縮の妨げになります。

妊娠中は特に便秘になりやすく、出産後も便秘が続いていたり排尿を我慢したりしてしまうことで子宮復古不全を引き起こす可能性を高めてしまいます。

子宮復古不全の治療方法

おっぱいを飲んでいる赤ちゃん

それでは、もしも子宮復古不全と診断されてしまった場合、どのような治療を行うのでしょうか。

子宮復古不全の治療は、投薬や外科的な処置といった病院で行う治療以外にもご自身が行うことで子宮復古不全を改善させる治療方法があります。

それでは、子宮復古不全の治療方法を6つ解説していきましょう。

子宮収縮薬を服用する

主に、子宮の中にまだ胎盤や卵膜などが残っており子宮の収縮を妨げている時に子宮収縮薬を使用します。

子宮を収縮する作用がある薬の中でも、麦角アルカロイドやオキシトシンを投与することが一般的で、オキシトシンは陣痛促進剤としても使用されています。

また、子宮内に感染症を併発している場合や貧血症状がでている場合は、抗生物質や鉄剤を一緒に服用し、子宮復古不全以外の症状にも対処していきます。

症状が悪化している場合には、入院をして薬を投与する治療を行うこともあるので、子宮だけではなく出産後に異変を感じたら、早めに処置することが重要になります。

手術する

子宮収縮薬を使用しても子宮の中に残っている胎盤や卵膜を排出できない時には、残存物を取り除く手術を行う可能性があります。

しかし、出産後の子宮は非常に柔らかく傷つきやすいため、手術を行うことはリスクが高いといえます。

そのため、子宮復古不全で手術を行うのは最終手段であり、ほとんどの場合は子宮収縮薬を使用するなど他の方法で治療を行います。

授乳をする

赤ちゃんに母乳で授乳を行うことで、脳からオキシトシンが分泌されます。

子宮収縮剤や陣痛促進剤に使用されるオキシトシンは子宮を収縮する作用があるので、子宮復古不全である場合は積極的に母乳を吸わせると効果的です。

子宮の収縮が通常よりも遅れており、なおかつ、母乳が出づらかったりミルクで育てたかったりと授乳に関して悩みがある場合は、産婦人科で行っている母乳外来の利用をお勧めします。

母乳が出やすくなるマッサージを教えてくれるなど、授乳に関しての悩みを医師や看護師、助産師といったプロに相談することができるので、まずは出産した産婦人科で母乳外来の有無を確認し活用してみましょう。

排便や排尿を促す

前項でも解説しましたが、子宮の収縮を妨げているのは子宮自体の問題だけではなく、子宮の近くにある膀胱や直腸に尿や便が溜まり膨らんでしまうことも原因の一つになります。

そのため、子宮復古不全が疑わしい場合や診断がでた場合は、排便や排尿を我慢しないように気をつけて生活することが重要です。

赤ちゃんとの生活でトイレに行くタイミングを失いがちになることも多く、排便や排尿が出産前よりも回数が減ってしまう方も少なくありません。

排便や排尿を促すためにも、水分をこまめに摂取し食物繊維の摂取を心がけて、1日3食しっかりと食事を取ることが大切です。

万が一、食事で改善しない場合は、薬は母乳を通じて赤ちゃんに影響を与えてしまう可能性も考えられるので、市販されている便秘薬の使用は避けて、必ず医師の診察のもと処方された薬を服用しましょう。

子宮を冷やす

子宮を冷やすことで子宮の収縮を促すことができると言われていますが、お腹を冷やすと痛みが出たり風邪をひきやすくなったりする可能性があるので、子宮を冷やして子宮収縮を促したい場合は、医師に相談してから行いましょう。

子宮底マッサージをする

子宮底マッサージとは、子宮の筋肉を刺激することで子宮の収縮を促すマッサージです。

輪状マッサージとも言われており、子宮を円を描くようにマッサージすることで子宮の収縮を促進します。

病院によっては、子宮復古不全を防ぐために産後に必ず行うところもありますが、子宮を刺激して行うので間違った方法や子宮を刺激してはいけない状態の方が行うと、体調を崩す原因に繋がります。

そのため、子宮底マッサージを行う時には、必ず医師や看護師、助産師から指導を受けて行いましょう。

まとめ

今回は子宮復古不全について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。

子宮復古不全は出産後の検診で診断されることが多いですが、お腹の痛みが続いていたり悪露や出血の量が減らなかったりと、ご自身の体調に異変を感じた時に早めに病院を受診することで悪化させずに対処することができます。

また、食事の改善や子宮底マッサージといった薬以外でできる治療方法もあるので、母乳外来などの相談窓口を利用し、生活の中で子宮復古不全を改善できるポイントを探していきましょう。

子宮復古不全になることで次の妊娠への影響を気にしてしまう方もいらっしゃると思いますが、基本的には子宮が戻り妊娠できる環境が整えば子宮復古不全が原因で妊娠しづらくなることは考えにくいと言われています。

ご自身の体調のためにも、子宮復古不全が疑われる場合は無理をせず医師の診察を受けましょう。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

関連記事