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出生前診断のメリットとデメリットは?受けるかどうか悩んでいる方へ

日本では女性の社会進出に伴い晩婚化が進み、35歳以上の女性が初産を迎えるのが当たり前になっています。35歳以上の女性が出産をすると、赤ちゃんが先天性疾患を持って生まれてくる可能性が20代の方よりも高くなります。そのためNIPT新型出生前診断)を筆頭に出生前診断を受けるのはメリットとして大きいと言えるでしょう。
出生前診断は、お腹の赤ちゃんの健康状態や医学的なリスクを知るための重要な手段です。しかし検査を受けるか受けないか、その選択は慎重に行うべきです。

本記事では、出生前診断を受けるメリットとデメリットについて医師の観点で解説します。正確な情報を得て、あなたの家族の未来を明るくするための一助としてください。

出生前診断とは

出生前診断とは、妊娠中に行われる検査の一環であり、生まれる前の赤ちゃんの染色体異常の有無を調べることができます。胎児超音波検査やNIPT(新型出生前診断)など、合計6種類の検査があります。
これらの検査は、それぞれ染色体異常の有無を確認する確率が異なります。結果に基づき、適切な分娩方法を検討したり、出生後の準備を行ったりできる利点があります。

出生前診断のメリット

出生前診断の目的は「赤ちゃんの状態を知ること」です。事前に知っておくことでどういったメリットがあるのかをご紹介します。

妊婦さんの不安が和らぐ

まず挙げられるメリットとして、妊婦さんの不安が和らぐことです。妊娠中はホルモンバランスの影響などで、精神的に不安定になる方が多い傾向にあります。人によってはマタニティブルー、妊娠うつなど精神的に追い詰められてしまう方もいるほどです。
その理由の1つとして、赤ちゃんが無事健康に生まれてくるかという心配があります。胎児の状態を調べられる出生前検査を受けて、出産の前に状態を知っておくことで不安が1つ解消されるでしょう。

出産後の生活に備えて準備ができる

また、お腹の赤ちゃんの状態を知っておくことで出産後の生活の準備ができるようになります。
例えば、もしダウン症候群の子どもが生まれるとわかれば支援センターへの相談をしたり、生活環境を整えたりするなど出産前から準備できます。
また、先天性疾患による合併症の治療をするために、NICUと呼ばれる新生児の集中治療室のある病院で分娩の手続きもできます。

出生前診断のデメリット

事前に検査結果を知ることはメリットだけではありません。知ることによってかえって混乱してしまい「検査を受けなければよかった」といった声もあります。どのような時にそう感じる患者さんが多いのでしょうか。

難しい決断を迫られることがある

出生前診断を受けて陽性だった場合、特に難しい決断を迫られるのが中絶をするかしないかです。
例えば検査の中でも、羊水検査は妊娠11週まで受けられません。結果が出るまでに2週間かかるケースもあり、検査実施時期が遅い検査を受けると、妊娠22週目までに数週間で決断しないといけません。しかもこの時期は胎動が始まっており、赤ちゃんが生きようしていることを強く実感します。そんな中で決断をしなくてはいけないので、大変な精神的苦痛を伴うでしょう。

すべての異常がわかるわけではない

出生前診断は、お腹の赤ちゃんのすべての疾患が判明するわけではありません。例えば自閉症は、出生前診断では判別不可能です。出生前診断で陰性だったのに、検査項目に含まれない病気が発覚する可能性はあります。

出生前診断の種類とそれぞれのメリット・デメリット

出生前診断 メリット デメリット2

出生前診断には確定的診断と非確定的診断の2種類に分かれています。
確定的検査は検査の結果を確定させるために実施します。非確定的検査は、仮に陽性が出たとしても病気の「可能性」を知るための検査なので、結果を確定させるためには、非確定的検査→確定検査の順番で受ける必要があります。

現在では、非確定的検査を受ける場合NIPTが主流となりつつありますが、それぞれ検査時期や方法、金額も異なり、メリット・デメリットがあるため、解説していきます。
どの検査を選んだらいいのか参考にしてください。

非確定的検査 確定的検査
NIPT(新型出生前診断) 羊水検査
超音波検査 絨毛検査
コンバインド検査
クアトロテスト

NIPT(新型出生前診断)

出生前診断の中で最も新しい検査がNIPT(新型出生前診断)です。妊娠9週〜10週頃から検査を受けられます。母体の血液を採取し、母体血漿中に浮遊する胎児由来のセルフリーDNAの断片を分析して染色体数の異常や形態の異常を調べることが可能です。

メリット

・母体の採血のみで検査できるので流産のリスクがない
・妊娠9週〜と、初期段階で検査できる
・検査精度が非常に高い
・調べられる染色体異常の種類が多い

出生前診断の中には流産のリスクを伴うものもありますが、NIPTは母体の採血のみで調べることができるため、安全性の高い検査です。しかも検査精度は99.9%と他の非確定診断のクアトロテスト、コンバインド検査よりも高い精度を誇ります。
また、染色体異常の検査項目は出生前診断の中で最も多い種類を誇り、ダウン症候群(21トリソミー)・18トリソミー13トリソミーを患っている可能性を調べることが可能です。施設によっては、さらに多くの染色体異常を調べられます。

デメリット

・費用が高い
・施設の見極めが非常に重要

NIPTは2013年に日本で開始されて以降、多くの医療機関で行われています。
しかしデメリットとして挙げられるのが検査費用の高さでしょう。大体10万円〜20万円で、他の非確定的検査と比較しても高額です。また、医院によっては、検査の前に妊婦さんへ遺伝カウンセリングを実施していないところもあるので慎重に選ぶ必要があります。

仮に陽性判定が出た場合、多くの妊婦さんは落ち込んだり、次はどうしたらいいのかパニックに陥ってしまいます。
その際、遺伝カウンセリングを受けられる施設ではないと、赤ちゃんにどのような病気の可能性があるのか専門的な観点で説明できる医師はいません。
相談できる専門家がいない中、自分で確定的検査を受けられる病院を探したり、本当は健康な赤ちゃんなのに中絶を選んでしまったりというケースもあります。
NIPTは、検査を受ける施設選びが非常に重要となります。

超音波検査

妊婦健診でお馴染みの超音波検査は、胎児の状態(向き・体型・心拍など)や羊水の量・胎盤の位置などを2D・3D・4Dで観察する検査です。
胎児の後頚部に向けて超音波機器を当て、静脈管血流・三尖弁血流・鼻骨・心拍数などを計測することで染色体異常を持っている可能性も調べられます。

メリット

・注射針を刺すことなく、母子ともにリスクがない

妊娠10週〜13週、妊娠18週〜30週という風に妊娠初期と中期で分けて行われるのが一般的です。
母親、胎児に共に安全が保証された検査で、注射針を刺すような手技もないため安心して受けることができます。

デメリット

出生前診断の中では染色体異常を検出できる確率が最も低い検査です。他の検査と併せて受けるようにするのがいいでしょう。

コンバインド検査

コンバインド検査は、超音波検査・母体血清マーカー検査の結果2つを掛け合わせて、染色体異常症のリスクを調べる検査です。妊娠11週〜13週頃に実施されており、母親の年齢・体重・家族歴・糖尿病の有無など複数の情報を加味してスクリーニング検査を実施しています。

メリット

・費用が安い
・超音波検査より精度が高い

費用は約3万円~5万円と他の検査と比べて費用が安いのがメリットです。もう1つは超音波エコー検査よりも精度が高く、約80%の確率で染色体異常症を持っているかどうかを判定することができます。

デメリット

検査できる項目が少ない

染色体異常症の検査項目はNIPTよりも少ないダウン症候群・18トリソミーの2種類のみが弱みといえます。

クアトロテスト(母体血清マーカー)

クアトロテストとは、母親から採取した血液を分析して、胎児に由来する4種類のタンパク質成分(AFP/hCG/uE3/Inhibin A)の解析を行い、染色体異常を調べる検査です。母体血清マーカーとも呼ばれています。費用は2万円〜3万円程度です。

メリット

・母体の採血のみで検査できるので流産のリスクがない
・コンバインド検査よりもさらに精度が高い
・費用が安い

流産・早産に至るリスクが全くない点が大きなメリットです。確率が83%とコンバインド検査よりも高い精度を誇ります。

デメリット

・検査できる時期が遅い
・調べられる検査項目が少ない

妊娠15週〜妊娠18週頃と、検査時期が遅い点が欠点です。検査項目もダウン症候群・18トリソミーの2種類のみです。

羊水検査

確定診断の1つである羊水検査は羊水を10ml〜20ml採取し、羊水細胞を培養させて染色体異常の解析をします。妊娠15週から16週目に受けることが可能です。費用はおおよそ15万円から20万円になります。
事前にNIPT(新型出生前診断)を受けた場合、医院が費用負担をしてくれることがあるので事前に確認をしておきましょう。

メリット

・ほぼ確実に染色体異常を調べることができる

出生前診断の中で高い精度を誇るため、ほぼ100%の確率でダウン症候群・18トリソミー・13トリソミーに加えて全染色体異常の有無が判明することです。

デメリット

・流産のリスクがある
・検査費用が高い
・受けられる時期が遅い

羊水検査の手技によっては、胎児が死に至る可能性があります。その確率は1,000人に3人〜4人くらいです。侵襲的検査と呼ばれる羊水検査は、このように無視できないリスクが伴うため、まずは非確定検査を受けてから受検を検討することをおすすめします。
検査実施時期が遅いので、パートナー同士話し合う時間を事前に設け、納得した結論を出しておくことが必要です。

絨毛検査

超音波検査で胎児の位置を確認した後、母親のお腹にとても細い針を刺して子宮内まで挿入し、胎盤組織の絨毛を採取する検査です。妊娠15週~18週の間に行われています。

メリット

・ほぼ確実に染色体異常を調べることができる

羊水検査同様、染色体異常症の有無がほぼ確実にわかる点がメリットです。NIPTやクアトロ検査といった非確定診断を受検した後に受けるのがおすすめです。

デメリット

・流産のリスクがある
・検査費用が高い
・受けられる時期が遅い
・検査可能な施設が少ない

羊水検査と同じく、侵襲的(母体・胎児に負担がかかる)な手技の検査となるため胎児が死に至る可能性があります。その確率は100人に1人ですのでリスクのある検査だということを理解しておかなければなりません。
もう1つのデメリットとしては検査可能な病院が少ないことです。特に地方だと絨毛検査ができる医院は限られています。

NIPTは受けるべきなのか?メリットデメリットを踏まえて考えたいこと

出生前診断 メリット デメリット3

冒頭でもお伝えしたように、日本では女性の社会進出に伴い晩婚化が進み、35歳以上の女性が初産を迎えるのが当たり前になっています。
しかし、35歳以上は高齢出産となります。そのためNIPT(新型出生前診断)を筆頭に出生前診断を受けるのはメリットとして大きいと言えるでしょう。
しかしながら、思わぬ形の結果を受けて非常に難しい決断を迫られる恐れがあります。少しでもそうした不安を和らげるためには家族のサポートはもちろん、医師と相談をしながら受ける必要があります。

特にNIPT(新型出生前診断)を受検するなら、遺伝カウンセリングを受けるのは必須です。もしNIPTをご検討されているならば遺伝カウンセリングをしている医院を選んでください。
覚えておいてほしいのは、出生前診断を受けるのは「命の選別」をするためではありません。
そして、陽性でも陰性でも、産まれてくる赤ちゃんをどうやって迎えるのかを考えるきっかけになれば幸いです。NIPTに関する様々な観点での意見をまとめた記事もありますので、ご覧ください。

NIPT(新型出生前診断)は受けるべき?メリットとデメリットを理解して受検の判断を

NIPT(新型出生前診断)に反対意見があるのはなぜ?中絶は悪いことなのでしょうか

まとめ

妊娠初期以降にたくさんの妊婦さんが受検している出生前診断は、非確定的検査と確定的検査に分類されます。非確定的検査の場合は流産や早産に繋がるリスクがないという大きなメリットがありますが、検査精度に限界があります。
一方で確定的検査は流産や早産に繋がるリスクは伴いますが、ほぼ確実に染色体異常症の有無を調べることができます。それぞれの検査のメリット・デメリットをしっかりと理解した上で、自分にとって最適な出生前診断を受けるようにしましょう。

東京の「ミネルバクリニック」では、どこよりも早い妊娠9週0日目から(ご希望の方は妊娠6週から)NIPTを実施しております。染色異常症・遺伝子疾患に精通した臨床遺伝専門医が在籍しているクリニックのため、質の高い検査・遺伝カウンセリングを受けていただけます。NIPTを受ける医療施設にお悩みの方は、染色体や遺伝子の専門家である臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングの実施している「ミネルバクリニック」までご相談ください。

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ミネルバクリニックでは、以下のNIPT検査を提供しています。少子化の時代、より健康なお子さんを持ちたいという思いが高まるのは当然のことと考えています。そのため、当院では世界の先進的特許技術に支えられた高精度な検査を提供してくれる検査会社を遺伝専門医の目で選りすぐりご提供しています。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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