InstagramInstagram

妊婦はいつから体重が増える?妊娠初期の体重増加についても解説

お腹の中にいる赤ちゃんへ充分な栄養を届けるためにも大切な食事ですが、一方で急激な体重増加は母体・赤ちゃん双方の身体機能に影響を及ぼす可能性が高くなります。本記事では、妊娠中の目安体重や増加の程度など、母体の機能維持に関わる情報をお伝えします。

赤ちゃんが育つのに必要な一日のカロリーは?

ご存じだと思いますが、妊婦さんが摂った栄養は直接赤ちゃんへいくわけではありません。一旦妊婦さんの身体に蓄えられてから必要な栄養だけ血液から胎盤を通して赤ちゃんに送られます。妊娠すると妊娠前よりも鉄分やたんぱく質が必要になってくるので意識して摂るようにしましょう。

ただ、必要なカロリーになってくると想像よりも低いです。妊娠初期で約50キロカロリー(バナナ2分の1)、妊娠中期だと約250キロカロリー(ご飯一杯分(175g))、妊娠後期でも約500キロカロリー(ラーメン一杯分)です。

妊娠すると太ってしまうのは当たり前?

妊娠中は、ホルモンのはたらきや赤ちゃんを守るための皮下脂肪がつくことにより徐々に体重が増えていきます。また、お腹の中の赤ちゃんに栄養を送り、発育を促す目的から食欲が増すことも知られています。
個人差はありますが、妊娠初期ではつわりなどの症状により食欲が落ち、体重増加は緩やかである傾向が多く、つわりが落ち着く妊娠中期から後期にかけて食欲が増し、一定した体重増加がみられるようになります。

妊娠中期から後期にお正月や誕生日といったイベントが重なると、普段と異なるメニューになることでたくさん食べてしまい、一気に体重が増えてしまうことがあります。

妊娠経過別の体重目安と体重管理ポイント

続いては妊娠期別の体重目安と管理のポイントについて解説をします。

妊娠初期

妊娠初期は、つわりをはじめとした妊娠にともなう諸症状の出現により、充分な食事を取ることができないなどの理由から、体重増加量は個別対応とされることが一般的です。また、つわりの程度や食欲の有無には個人差があり、中には「何か食べていないと気持ち悪い」という「食べづわり」の症状が出る方もいます。

このような場合は、無理な体重制限を行うと、母体にとってストレスとなる場合があるため、赤ちゃんにも栄養素となるカルシウムや葉酸などを含む食材を積極的に取ると良いでしょう。

妊娠中期

妊娠中期から後期における推奨体重増加量は、妊娠前のBMIにより異なります。BMI18.5未満(やせ型)およびBMI18.5以上25.0未満(ふつう体型)の方では、1週間あたり0.3〜0.5kgの増加が望ましいとされています。BMI25以上(肥満)の方については、高血圧や糖尿病などの持病がある可能性を考慮し、状況に応じた個別対応が必要です。

また、妊娠中期はつわりが徐々におさまってくる時期でもあります。それにより食欲が増加し、「初期はつわりのせいで食べられなかったから」とついついたくさん食べてしまいがちです。厳密なカロリーコントロールや食事制限を行う必要はありませんが、栄養バランスを考えた食事を意識するようにしましょう。糖分の多いスイーツや、塩分の摂りすぎに注意することも大切です。

妊娠後期

妊娠中期・後期の推奨体重増加量は、やせ型(BMI18.5未満)、ふつう体型(BMI18.5以上25.0未満)の方で、1週間あたり0.3〜0.5kgとされています。

妊娠後期になるとつわりもだいぶ落ち着くことから、それまでの反動で食欲が増し、体重が増えてしまう場合があります。特に、年末年始やお正月、誕生日などのイベントが重なる際は食事内容とボリュームに注意が必要です。高カロリー、高脂質などの偏った食事は急激な体重増加につながるため、誘惑に負けないよう一層の自己管理が大切になります。

妊娠中の適正体重

体重が気になって体重計に乗る妊婦さん

妊娠前の体重から、ご自身のBMI(Body Mass Index)を算出したことはあるでしょうか。妊娠中における体重増加量の目安はこの「BMI」により定められており、妊娠前は痩せていたか、あるいは太っていたかなどの体型によっても異なります。妊娠前のBMIが18.5未満(やせ型)の方は9〜12kg、18.5以上25.0未満(ふつう体型)の方は7〜12kgが体重増加量の目安となります。

なお、妊娠前のBMIが25.0以上(肥満)の方は、数値により個別対応が必要となります。25.0をやや超える程度の場合はおおよそ5kgの増加を目安とし、25.0を大幅に超える場合は健康リスクと個人の状況を考慮して決定します。

目安体重の引き上げ

2021年3月、日本産婦人科学会より、妊娠中における適正体重の新たな目安が発表されました。これまでの適正体重では、妊婦さんが体重増加を気にするあまり、赤ちゃんへの充分な栄養を確保することができずに発育に影響が出るほか、自然分娩が難しく帝王切開となる可能性が懸念されていました。また、未熟児で出産した赤ちゃんが、成人後に高血圧や糖尿病になりやすいという報告もされています。

適正体重の判断に妊娠前のBMIを用いることは変わりません。BMI18.5未満(やせ型)の方は12〜15kg、18.5以上25.0未満(ふつう体型)の方は10〜13kg、25.0以上30未満(肥満)は7〜10kg、BMI30以上の方は上限5kgまでが体重増加量の新目安となります。

厚生労働省が妊娠中の体重増加指導の目安を発表しています。以下の表になるのでご確認ください。

妊娠前の体格 体重増加指導の目安
低体重(やせ) 18.5未満 12~15㎏
普通体重 18.5以上 25.0未満 10~13㎏
肥満(1度) 25.0以上 30.0未満 7~10㎏
肥満(2度以上) 30.0以上 個別対応(上限5㎏までが目安)

※厚生労働省|妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針より引用

妊娠中は栄養のバランスが整った食事を摂り、適切に体重を増やしていくのが大切です。低体重児は、将来生活習慣病になるリスクが高まるという報告もあります。
お腹の中にいる赤ちゃんのためには体重が増えることを過度に恐れないでください。

妊婦が太るリスク

妊婦中に太ってしまうことにより、様々な健康リスクが挙げられます。

  • ・妊娠高血圧症候群
  • 妊娠糖尿病
  • ・膝や腰の痛み
  • ・脂肪による産道の圧迫
  • ・微弱陣痛により出産が長引くおそれ
  • ・産後に高血圧や腎臓病などの慢性疾患へ移行する可能性

 

妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病は、体重の急激な増加により発症することが知られています。特にこの2つの疾患は、一方を発症するともう一方も合併する可能性が高いため注意が必要です。妊娠高血圧症候群は高血圧症状のほか、母体に脳出血など循環器系の障害をもたらすことがあり、赤ちゃんに酸素や栄養を供給することができず死に至る可能性があります。

妊娠糖尿病は母体が高血糖(糖尿病の状態)を呈した場合に診断されますが、同時にお腹の中の赤ちゃんも高血糖となり、巨大児や、流産を引き起こすことがあります。妊娠高血圧症候群と妊娠糖尿病は、どちらも、母体のみならず赤ちゃんの命も脅かす危険な状態です。ほかにも、急激な体重増加により、身体全体に負荷がかかり膝や腰の痛みを引き起こすことがあります。

また、産道に脂肪がつくことで、赤ちゃんがなかなか産道へ下りてこられなくなることも。「微弱陣痛」とは、陣痛が通常よりも弱いことを意味し、出産までの時間が長引くことで母体に負担となる可能性があります。さらに、妊娠中に急激に太ったことで、産後も高血圧や腎臓病が継続し、慢性疾患へ移行することも問題となります。

妊婦が痩せるリスク

妊娠中の体重増加が気になるからといって、過度な制限は禁物です。母体が痩せてしまうと、以下のようなリスクを招く可能性があります。

  • ・低出生体重児での出産
  • ・赤ちゃんの栄養不足
  • ・母体の健康状態の悪化
  • ・切迫早産または早産
  • 胎児発育不全

 

母体の体重が増えずに痩せた状態である場合、まず心配されるのは低出生体重児のリスクです。出生児体重が2,500g未満の赤ちゃんは「低出生体重児」と呼ばれ、母体の栄養状態が良くない場合や早産で生まれてきた場合などでみられます。低出生体重児は、赤ちゃんが母体から充分な栄養を得ることができなかった結果、身体機能の変化や異常が生じ、成人後に高血圧や糖尿病といった生活習慣病を発症する割合が高いことが報告されています。

また、母体の栄養が不足している、または少ない状態からさらに赤ちゃんに奪われることでエネルギーがさらに減り、健康状態が悪化して、妊娠中のトラブルに限らず様々な症状が出現します。早産や胎児発育不全児での出産となる可能性もあるため、母体の健康状態をしっかり管理することが大切です。

妊娠後期に体重増加が止まらないときの対策

妊婦と医師

妊娠後期の体重増加が止まらない場合の対策として、最も大切なことは食生活の見直しです。特に、糖分・塩分・脂質の摂りすぎには注意が必要です。過度な食事制限は母体にとってストレスになることもありますが、かといって自分を甘やかしすぎることは良くありません。心当たりがある場合は糖質や脂質を控え、バランスの良い食事を取るように心がけましょう。

また、食生活の見直しと同時に、毎日の体重計測も有用です。計測の際はできるだけ決まった時間に行うようにしましょう。前日、または1週間前の体重と比較して増減の範囲がリアルタイムにわかり、食事内容を調整したり、軽めの運動を取り入れたりして微調整することが可能になります。さらに、適度な運動をすることも効果的です。ただし、「増えた体重の分を取り戻そう」と激しいスポーツを行うことは厳禁。医師から特に運動に関する制限が出ていない場合は、ストレッチや散歩などを無理のない範囲で行うと良いでしょう。適度な運動は気分を落ち着かせ、リフレッシュにも最適です。

妊娠後期に体重が増えないときの対策

妊娠後期になり体重が増えない、もしくは伸び悩んでいる場合、まずは少量の食事をこまめに取るようにしてみると良いかもしれません。妊娠後期はお腹の中で赤ちゃんが大きくなっているため、内臓が圧迫されて1回の食事量が減少することがあります。そのため、「食事は3回」と決めてしまうと1回量が多くなり、完食が難しくなってしまいます。このような場合は1回の食事量を減らし、その分こまめに回数を重ねるようにすると、改善がみられる場合があります。

また、一度食生活を見直し、バランスの良いメニューに切り替えたり、状況に応じて栄養補助食品を取り入れたりすることも効果的です。食生活の改善や回数を工夫してみても体重増加が見られない場合は、一度担当医や助産師さんに相談しましょう。

まとめ

妊娠
体重管理は母体と赤ちゃんの健康維持のために不可欠な要素です。体重が増えることそのものに神経質になる必要はありませんが、あまりに急激な体重増加は様々なトラブルを引き起こします。食事内容の見直しや適度な運動、日々定刻の体重測定を取り入れるなど、無理のない範囲で工夫して管理するようにしましょう。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

関連記事