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妊娠安定期のスタートはいつ?見逃せないトラブルは?

つらかったつわりを乗り越えて体も心も落ち着いてきた妊娠安定期は、妊婦さんにとって嬉しい時期だと思います。お腹も大きくなってきていよいよ「子どもが生まれてくるんだ」と実感を持てる頃ですが「安定期はいつからになるの?」と疑問を持つ方もいるでしょう。今回の記事では、妊娠安定期はいつからスタートするのか?注意しなくてはいけないトラブルについて詳しく紹介をします。

最後までご覧になって妊娠安定期を無事に過ごすための参考にしてください。

妊娠安定期はいつ頃から?どんな状態?

一般的に妊娠安定期と呼ばれるのは妊娠16週目(妊娠5ヶ月)に入る頃を指します。理由はとしては妊娠初期よりも流産のリスクが低くなり、つわりが収まってきて母体から赤ちゃんへ安定して血液や栄養が送られるようになる頃だからです。

個人差はありますが、胎動を感じる時期でもあります。早い人で妊娠16週目から、初産の人だと20週目くらいで感じるようです。もし胎動を感じるようになったらお腹を優しくマッサージしたり、話しかけたりして赤ちゃんとのコミュニケーションを図ってください。

母体の状態は?

つわりが収まる場合が多いので精神的に安定していきます。ただし、個人差があるため一度収まったつわりがぶり返すこともあります。その場合、注意して欲しいのが体重増加です。つわりが収まるとなくなっていた食欲が旺盛になり、食べる量が増えてしまいがちだからです。BMIが25を超えるとご自分の体と赤ちゃんに影響を悪い影響を与えてしまうので食べる量はほどほどにしましょう。

もう一つ注意して欲しいの変化が妊娠線です。妊娠安定期はお腹が大きくなってくるため皮膚が急激に引き伸ばされ、ひび割れたような赤い筋状の「妊娠線」ができます。お腹だけならまだしもおしりや太もも、乳房にもできることがあります。ほとんどは妊娠後期にできるのですが、つわりが終わり急激に体重が増加するとできてくる場合もあるのでおなかに保湿クリームなどを塗って予防をしてください。なぜなら皮膚の伸びが悪くなり妊娠線ができる要因になるからです。

お腹の赤ちゃんの状態は?

妊娠19週ごろの赤ちゃんの身長は約25cm、体重は約280gです。骨が丈夫になって筋肉が付くようになってきます。全身に皮膚を守る胎毛が生え、薄っすらとまつげや眉毛、髪の毛も生えてくる頃です。

なお、妊娠初期に必要な栄養素である葉酸ですが、安定期になっても意識して摂るようにしてください。なぜなら赤血球をつくるために大事な役割を果たすからです。中期には通常の240μgに加えて240μg必要となります。食事だけでは足りないのでサプリメントを補ってください。

妊娠安定期に起こる母体の変化

妊婦さんのおなか

個人差はありますが、妊娠17週目に入るとお腹の張りを感じやすくなります。主な原因は妊婦さんの行動や何らかの刺激による子宮の収縮です。生理痛のような痛みだったり、お腹全体が引っ張られるような感じだったり、いつもよりお腹が硬かったりと妊婦さんによって感じ方はさまざまです。妊娠中にはよくあることですが、トラブルを知らせるサインの場合もありますのでいつもより張りが長引いたり痛みが強かったりする場合は医師に相談しましょう。

張りは何かしらの原因があります。症状に応じて対処してください。

・冷えによる張り
室内が冷えすぎるとお腹の張ってくる場合があります。エアコンで温度調節したり、服の重ね着やプランケットを羽織ったりしてみてください。

・締め付けによる張り
腹帯やマタニティ用以外のボトムおよび下着などをつけているとお腹が張ってくる場合があります。その場合、帯を緩めたり別の服に着替えたりしてください。

・疲れによる張り
体が疲れてくるとお腹が張りやすくなります。もし家事や運動で疲れを感じたら無理をせずすぐに休息をしてください。

・ストレスによる張り
仕事や人間関係によるよってストレスもお腹の張りの原因です。疲れ同様無理をせず休息を取ってストレスをためないようにしましょう。

・胎動による張り
妊娠中期から始まる胎動は、慣れていないと子宮収縮と胎動を勘違いすることがあります。この場合は特に気にする必要はありません。

・性行為による張り
妊娠中も妊婦検診で特に問題がなく、医師から許可が出れば性行為は可能です。そのときに硬くなって張りを感じることがあります。時間が経てば収まることがほとんどなのであまり気にしないください。

・乳首マッサージによる張り
出産後の母乳生活の準備として乳首マッサージをする場合があります。そのときに子宮収縮を促すホルモンを分泌しやすくなるのでおなかが張ってきます。もしマッサージに張りが出たときは一旦中断して時間をおいてから再開してください。

妊娠安定期に起こるマイナートラブル

娠安定期に入るとお腹の赤ちゃんは状態が安定してくるのですが、ママさんにはちょっとしたトラブルが起きる場合があります。そこで妊娠安定期に起こりがちなトラブルをご紹介します。

医師の診断を受けるなくてもいいケースが多いですが、症状がひどくなったら我慢しないで受診してください。

貧血が起きやすい

妊娠中に血液は増えますが、赤血球はあまり増えません。そのため貧血になりやすい状態です。また、大きくなった子宮が横隔膜を押し上げるため、肺が圧迫され息切れが生じやすくなります。

対処法としては鉄分やビタミンCが豊富な食材を普段から食べるようにしてください。鉄分が多い食材と聞くとレバーやほうれん草が上がりますが、ビタミンAの含有量が多いので注意が必要です。妊娠初期に摂りすぎると奇形児が生まれてくる可能性があります。そのためあさりや大豆、緑黄色野菜や切り干し大根、ひじきや赤味の多いお肉がおすすめです。

便秘や頻尿になりやすい

お腹が大きくなりはじめる妊娠安定期は、腸が子宮に圧迫されて動きにくくなり便秘になりがちです。便秘になると先述したお腹の張りにもつながるので適度な運動、こまめな水分補給、食物繊維が豊富な食べ物を摂るようにしましょう。どうしても便秘が解消されないならば医師にしてください。

また、妊娠中は膀胱が子宮に圧迫されて頻尿や膀胱炎になりやすくなります。尿意を感じたら我慢しないでトイレに行くようにしてください。排尿する時に痛みを感じたり残尿感が残ったりしたら膀胱炎かもしれません。医師の診察を受けてください。

腰痛になりやすい

妊娠安定期は大きくなったお腹を支えるのに腰をそってしまいしまいがちです。また、体が出産に備えて腰回りの筋肉を硬くするホルモンを分泌するため腰痛を感じやすくなります。

負担を減らすために長時間の立ちっぱなしを避けたり、腰が沈まないような固めのマットレスを使用したりしてください。体重増加も腰痛の原因となるので食べ過ぎには注意しましょう。

動悸・息切れをしやすい

先述したとおり妊娠安定期は赤ちゃんの成長に伴い、大量の血液を送り出します。そのため貧血の他に心拍数が上がり動悸や息切れを感じる場合があります。

対策としては貧血と同じように鉄分やビタミンCが豊富な食材を食べることです。他にはこまめな休息と普段からゆっくりした動作を心掛けてください。

皮膚のトラブルが起きやすい

妊娠安定期に入ると、蕁麻疹のような症状が出るママさんがいます。これは妊娠性痒疹といって妊婦さんの約2%に起きる症状です。手足や体に蕁麻疹が出て強い痒みを伴うので症状が出たら母子手帳を持って皮膚科の医師に相談してください。

原因は不明でひどくなると眠れないほどのかゆみになるケースもあります。出産後には自然と治まる人が多く、自身や家族にアトピーの方がいるママは発祥しやすい傾向です。

もしアトピー性皮膚炎の持病をお持ちならば、妊娠中一時的に症状が悪化するため医師に話して診断を受けてください。

妊娠安定期に気をつけたい病気と症状

医師に相談中の夫婦

「安定期」と呼ばれているからと言って病気や流産・早産の危険はあります。ここでは特に早産や流産につながる症状や病気について紹介します。

切迫早産

妊娠安定期では先述したようにお腹の張りに注意する必要があります。それは張りからくる痛みによって切迫早産・切迫流産の可能性があるからです。妊娠22週までは切迫流産、妊娠22~36週までは切迫早産となります。

原因は子宮頸管無力症や絨毛膜羊膜炎、多胎妊娠など様々です。安静にして出産後の生存率が上がる妊娠22週以降を目標にして赤ちゃんを胎内に留めるように処置をします。

子宮頸管無力症

子宮の収縮によって子宮口が開いてしまい流産や早産を引き起こす子宮頸管無力症は、妊娠16週目から24週目にかかりやすい病気です。原因がわからない場合が多いのですが、子宮頸部にダメージがあるとなりやすいことがわかっています。

例えば、掻爬(そうは)手術の際に医療器具で子宮頸部を傷つけられたのが原因でかかった人がいます。他にも円錐切除手術を受けた人もかかる可能性があります。

もし先述したような経験があるならば医師に話しておき、対策をしておきましょう。

妊娠高血圧症候群

妊娠高血圧症候群は妊娠20週以降出産12週までの時期に起こる高血圧症のことです。妊婦全体の3~7%に起こる病気とも言われ、蛋白尿や浮腫みを伴うこともあります。

妊娠高血圧症候群を発症すると胎盤が正常に機能しなくなり低出生体重児や胎児発育不全、子宮内胎児脂肪などの原因になります。35歳以上、BMI25以上のママさんがかかりやすいので食事管理などをして体重をコントロールしておきましょう。

妊娠糖尿病

妊娠糖尿病は、妊娠中に初めて糖代謝異常になった人のことです。かかってしまうと妊娠高血圧症候群になる恐れがあり、赤ちゃんは巨大児、羊水過多、心臓の肥大、胎児脂肪の症状にかかる可能性があります。

通常の糖尿病同様に食生活が乱れているとかかりやすいので食べ過ぎや運動不足には注意しましょう。もし妊娠糖尿病になった場合は食事療法で改善を目指します。

前置胎盤

胎盤が子宮の低い部分に形成され、子宮口を塞いでしまっている状態が前置胎盤です。受精卵が子宮口の近くに着床してしまうことが原因です。そうなる理由ははっきりとしていません。妊娠初期に見られますが、成長するにつれ、多くは元の位置に戻ります。

もし、そのまま成長した場合は注意が必要です。前置胎盤だけの場合は特に症状がありません。ただし、腹痛を伴わない突然の「警告出血」が起こることがあります。 胎盤からの大量出血があると母子ともに危険な状態にさらされるためハイリスクな妊娠となります。前置胎盤の診断を受けた場合には医師の指示に従って慎重に安定期を過ごしましょう。

妊娠安定期のいつまで旅行に行けるのか?

出産すると忙しくて旅行に出かける余裕もないのでその前に行っておこうと先輩ママの多くも妊娠安定期に旅行へ出かけています。もし旅行へ行くのならば、人にもよりますが妊娠16週目から27週目がいいでしょう。母体が安定しているケースが多く、旅行中に状態が悪くなる可能性が比較的少ないからです。

ただし、前置胎盤などリスクがある場合は医師の診断を受けてからにしましょう。

出かける場所も海外は長時間での移動だと負担が大きいためおすすめできません。国内でもあまり遠出せずに近場にしておくのがいいでしょう。スケジュールもゆとりを持って組み、あちこち移動するような旅行は避けた方が無難です。

旅行先での万が一に備え、旅行先にある産婦人科を事前に調べておきましょう。後は、旅行に行くときは下記の持ち物も持っていってください。

  • ・母子健康手帳・健康保険証
  • ・処方されている薬
  • ・普段摂っているサプリメント
  • ・パジャマ
  • ・保湿クリーム
  • ・ポリ袋

妊娠安定期のいつまで仕事をしていいのか?

妊娠してからも仕事を続けるママさんは今や当たり前です。妊娠初期は体調不良で思うように仕事ができなかった分取り戻したくなる気持ちにもなるでしょう。しかし安定期と言われる時期でも、無理は禁物です。お腹の赤ちゃんは未成熟ですし、先述したように切迫早産・切迫流産の可能性もあります。まず、一番はチームや上司にはっきりと自分の体調を伝え、出来ること・出来ないことを明確にしておきましょう。特に男性の場合、妊娠の大変さを理解できませんのでご自分から働きかけてください。

仕事自体は臨月になるまで続けられます。もし体調が良くないのならば産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)であれば産休に入ることができます。ちなみに産後8週間は本人の希望であっても仕事をすることはできません

妊娠をすると体調が大きく変化するため妊娠・出産を理由に社会的不利な状況にならないために労働基準法や男女雇用機会均等法などの法律によっていくつかの措置をとることが定められています。「母性健康管理指導事項連絡カード」を持っておくと、会社の上司に相談する際に役立ちますので是非活用してください。カードは下記のURLからダウンロードできますのでプリントアウトして主治医に渡せば必要事項を記入してくれます。

外部サイト:「母健連絡カード」(母性健康管理指導事項連絡カード)について

まとめ

ここまでトラブルや病気、症状を中心に妊娠安定期について詳しく紹介をしました。「安定期」という名前が付いているから油断しがちなりますが、大小含めてさまざまなことが起こり得ますので注意しながら日々の生活を送ってください。

ただし、妊娠初期に比べると日々の生活が送りやすいのは間違いありませんので、この時期だからこそできることを楽しんだり、準備したりしましょう。そして元気な赤ちゃんを生んでください。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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