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妊娠したのに体重が増えないときの胎児への影響は?

妊娠すると、羊水や赤ちゃんの重さが増えることで、妊婦さんの体重は基本的に増えます。体重が短い期間で急に増え過ぎてしまうと、赤ちゃんの成長や妊娠経過、出産に予想外の影響を及ぼす可能性があるため、慎重になることが大切です。

一方で、妊娠中に体重が増えないのも問題とされています。
本記事では、妊娠したものの体重が増えない場合に胎児へ及ぶ影響について詳しく解説します。

妊娠したけれど体重が増えないことによる胎児への影響

妊娠したのに体重が増えないときの胎児への影響は?

妊娠する前、もともと健康で普通体型であった場合、妊娠によって体重の増え方が少な過ぎると、低出生体重児分娩あるいは早産の可能性が高まるとされています。

出生の際に、体重が2,500gに満たない赤ちゃんのことを低出生体重児といいます。赤ちゃんの出生体重については、2,500〜4,000gを正出生体重としてWHOが定めています。[注1]
これは、赤ちゃんが健康でいるために必要な体重の目安です。この目安から外れてしまうと、健康にさまざまな影響を及ぼすとされています。

赤ちゃんが2,500gよりも少ない体重で生まれてきた場合、成長してから生活習慣病を発症するリスクが高まるとされる研究結果が出ています。[注1]
事例によって報告されている影響や症状は異なる部分がありますが、以下6つについては特に低出生体重児と関係があるされています。

  • ・高血圧
  • ・冠動脈疾患
  • 2型糖尿病
  • ・脳卒中
  • ・脂質異常
  • ・神経発達異常

妊婦さんの体重が理想的に増えていなかったことで、胎児期に必要な栄養が少ない状態が長期間にわたって続いてしまったり、早産によって出生が早まってしまったりすると、胎内で赤ちゃんの内臓がしっかりと育ちきることができません。

これにより、赤ちゃんが成長してから成人を迎えてからも生活習慣病といった影響を与える可能性があるのです。

[注1]厚生労働省:低出生体重児保健指導マニュアル 小さく生まれた赤ちゃんの地域支援 p.1,9
www.mhlw.go.jp/content/11900000/000592914.pdf

体重が増えればいいというわけでもない

赤ちゃんの将来を考えるのであれば、妊娠中はとにかく太ったほうがいいのかもしれないと思われる方もいるかもしれません。しかし、妊婦さんの体重はとにかく増えればいいというわけでもないのです。

WHOが定める正出生体重は下限が2,500gである一方で、上限を4,000gとしています。妊娠中の妊婦さんが体重を増やし過ぎると、赤ちゃんが出生時の体重が4,000gを超える巨大児となることがあります。また、帝王切開のリスクも高まるとされています。

過度な痩せ過ぎも太り過ぎもよくないので、妊婦さんが健康であることが大切です。

妊娠したときの体重増加の目安

妊娠の際、妊婦さんは赤ちゃんの体重に気遣いながら適度に自分の体重を増えていくことが理想的です。理想的な体重増加の目安について、以下2つを参考にしてください。

BMIを妊娠前と比較する

痩せ過ぎか太り過ぎかを調べたいときは、BMIを参考にしましょう。BMIとは、その人の体重と身長を用いて今痩せているのか太っているのかを確認できる数値です。

BMIは、以下の計算式で算出できます。

体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)=BMI

妊娠前のBMIを確認しておけば、妊娠してから増えてほしい体重の数値が確認できます。[注2]

BMIの数値 痩せ/肥満 妊娠中に増やしたい体重
18.5未満 痩せ 12〜15kg)
18.5〜25.0 ふつう 10〜13kg
25.0〜30未満 肥満1度 7〜10kg
30以上 肥満2度以上 〜5kg(個別対応)

妊娠することで、赤ちゃんの体重に加えて羊水、胎盤、卵膜により、最低でもおよそ4kgは体重が増えます。加えて、皮下脂肪などの増加許容量といったものを加味した際に、妊娠前の体重から増えてほしい理想的な体重が異なってくるのです。

[注2]厚生労働省:「妊産婦のための食生活指針」改定の概要(2021年3月)
www.mhlw.go.jp/content/000776927.pdf

妊娠の中期から後期にかけて緩やかに体重を増やしていく

妊娠して直ぐの初期については、赤ちゃんがまだとても小さい状態にあるので、体重を増やすべきと焦る必要はありません。妊婦さんは、妊娠していないときよりも、より多くのカロリーを摂ることが推奨されます。[注3]

ですが、初期については1日あたり通常児に加えて50カロリー程度とされており、通常時とほとんど異なりません。妊婦さんが必要な栄養と水分をしっかりと摂取していれば十分です。

妊娠してから16~27週の中期に入ると250カロリー、28~40週の後期に入ると450カロリーも1日あたり摂取量を増やしていくことが求められます。

[注3]厚生労働省:妊産婦のための食事バランスガイド
www.mhlw.go.jp/content/000788598.pdf

体重が増えないときに気を付ける点

妊娠後、妊婦さんの体重があまり増えていかない場合、慌てず医師に相談することが大切です。

妊娠後に増える妊婦さんの体重は、赤ちゃんの体格と大きく関係しているのは前述の通りです。妊婦さんの体重が増えていないと、赤ちゃんの体格も基準より小さくなることがあります。

このような際に、無闇矢鱈にカロリーを摂取する必要はありません。妊婦健診などのときに治療あるいは生活上の指導といったことをしてもらえるので、必ず医師の指示に従うようにしましょう。

赤ちゃんの体格が基準よりも小さくなってしまうのは、妊婦さんの体重が増えないこと以外にも、母体の喫煙や病気、胎盤の異常、感染といったことも原因として考えられます。原因を正しく見極めたうえで、適切な形で対処することが大切です。

摂取しているカロリー量に原因があるのであれば、以下のような形で対応することが求められます。

食事の栄養バランスを気を付ける

妊婦さんの健康に気遣いながら必要なカロリーを摂取して体重を増やしていくには、やはり食事の栄養バランスを気をつけることがとても大切です。食べたものが妊婦さん、そして赤ちゃんの健康を作ります。

まずは、主食と主菜、副菜を揃えることを心がけましょう。これにより、体を動かすのに必要なエネルギー源と体をつくるのに必要なタンパク質、そしてビタミン、ミネラル、カルシウムといった栄養素を一通り摂取できます。

1回の摂取カロリー量を減らして食事回数を増やす

赤ちゃんが成長していくについれ、子宮が大きくなって妊婦さんの内臓が圧迫されていき、1回の食事で食べられる量がどうしても少なくなってしまいます。しかし、妊娠中期や後期はよりカロリーをしっかり摂ることが大切です。

そこで、1回の食事で摂るカロリー量を減らし、食事の回数を増やすようにしてみましょう。結果的に摂取すべきカロリー量が摂れるようになります。

体重が増えなくても焦らず健康を心がけることが大事

妊娠は、一つの新しい命が生まれるための大切なことです。赤ちゃんの健康は、母体である妊婦さんにかかっています。赤ちゃんが健康に育ってくれるように、必要なことをしてあげましょう。

かといって、体重が増えないからと焦る必要はありません。焦って食べ過ぎたりストレスを抱えたりしては逆効果です。困った際は、医師や専門家に相談するようにしましょう。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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