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妊娠中の出血の原因は?初期~後期まで

妊娠中に出血があると、不安な気持ちになる一方で、病院に行くかどうかを迷うこともあるのではないでしょうか。妊娠中の出血は、問題がないケースもありますが、早急な措置が必要なケースや安静が必要なケースも少なくありません。
ここでは、妊娠初期と妊娠中期~後期に分けて、出血の原因や症状、受診の必要性などについて解説していきます。

妊娠初期の出血

妊婦さん

妊娠初期の出血の原因として、主に次の3つが考えられます。

  • 着床出血
  • ・胎盤形成の過程
  • 流産

 

妊娠初期で少量の出血があり、ほかに症状がない場合は、慌てずに診療時間内に病院を受診します。

妊娠初期の出血については、以下の記事でも紹介しています。

関連記事:妊娠の初期出血とは?知っておきたい5つの特徴と注意点

着床出血

着床出血とは、受精卵が着床した後、絨毛という組織が子宮内膜に入り込むときに、細かい血管を傷つけてしまうことによって起こるものです。ただし、出血しても体内に自然に吸収されるケースのほうが多いため、必ずしも妊娠初期に着床出血が起こるとは限りません。

一般的に、着床出血が起こるのは妊娠4週目で、出血は2~3日程度で止まります。まだ妊娠に気付く前のタイミングで生理が始まる頃と重なり、生理と間違えられることもあります

血液の色は、おりものにピンクの血が混ざっているケースや、茶色の少量の出血があるケース、赤い鮮血のケースなど様々で、個人差があります。また、着床出血は、軽い生理痛と同じような腹痛を伴うこともありますが、血液の塊が出ることはない点が生理との違いです。

着床出血は正常な妊娠の過程であるため、心配することはありません。出血がごく少量であれば、診療時間内に病院を受診しましょう。

胎盤形成の過程

胎盤形成の過程では、絨毛膜下血腫と呼ばれる、子宮内に血液が溜まる症状が起こることもあります。これは、絨毛が子宮内膜に入り込むときに血管を傷つけることに起因する出血が多い場合に起こるもので、胎盤の膜である絨毛膜と子宮の壁の間に血液が溜まった状態になります。

絨毛膜下血腫の多くは妊娠中期までに自然になくなるため、心配する必要はありません。ただし、子宮内に溜まっている血液の量が多い場合や妊娠中期までになくならない場合には、流産や早産のリスクがあります。

妊娠初期に大量の出血があった場合には、絨毛膜下血腫が疑われるため、早めに病院を受診しましょう。

流産

妊娠12週目までの流産は早期流産と呼ばれています。流産は、子宮の収縮によってお腹の内容物が押し出されることによって起こります。下腹部の腹痛と少量の出血が起こるケースが多いですが、場合によっては激しいお腹の痛みや大量の出血を伴うこともあります。早期流産のほとんどは、染色体異常によるもののため、母体には問題がなく、防ぐことはできません。

流産が疑われる場合は、病院を受診します。仮に流産であった場合、子宮を妊娠前の状態に戻すための治療が行われます。

妊娠中期~後期の出血

妊婦さんの膨らんだお腹とベビー服

妊娠中期~後期の出血は、主に次に挙げる原因によって起こります。

  • ・子宮頸管ポリープ
  • ・切迫流産
  • ・切迫早産
  • ・子宮腟部びらん
  • ・前置胎盤・低置胎盤
  • ・常位胎盤早期剥離

 

妊娠中期は出血する可能性が低いため、出血がある場合は何かしらのトラブルが起きている可能性が高いです。妊娠後期での出血はトラブルのサインである可能性が高く、出産の兆候であることもあります。いずれにしても、主治医に連絡をして指示を仰ぐことが重要です。

子宮頸管ポリープ

子宮頸管ポリーブとは、子宮出口の近くの頸管にできた腫瘍のことで、ほとんどが良性です。細菌感染による炎症や女性ホルモンの影響などによって、子宮頸管の細胞が増殖することで起こります。

子宮頸管ポリープができると、おりものが増えたり、少量の出血があったりすることもありますが、特に症状が出ないことも多いです。

妊娠中に頸管ポリーブが判明した場合は、経過観察になることが一般的ですが、頻繁にポリープからの出血がみられる場合は、細菌感染によって早産を招く恐れがあることから、切除することもあります。

切迫流産

切迫流産とは、妊娠22週未満で子宮の伸縮によるお腹の張りや痛みを伴う出血があり、流産の恐れがある状態をいいます。切迫流産は、赤ちゃんの心拍が確認できれば妊娠を継続できる状態です。切迫流産が起こっても、多くの場合は正常な妊娠の状態に戻れます。一般的に、少量の茶色の出血がみられる場合は、流産に進行する可能性は低く、赤い鮮血による大量の出血があり、強い腹痛を伴う場合は流産に至る可能性が高いといえます。

切迫流産が疑われる場合は、早めに病院を受診し、医師の指示に従って安静にして過ごしましょう。

切迫早産

切迫早産とは、妊娠22週以降に子宮の伸縮によってお腹の張りや痛みを伴う出血があり、子宮頸管が短くなっている、子宮口が開き始めているといった早産の兆候がみられる状態を指し、破水が起こることもあります。
切迫早産の原因は、絨毛膜羊膜炎や前置胎盤、低置胎盤、子宮頸管無力症のほか、ストレスや喫煙など様々です。

お腹の張りや痛みが横になって休むことでおさまるのであれば、心配ありません。病院に連絡して出血の量を伝えて、医師の指示を仰ぎます。破水が起きた場合には、子宮から細菌感染を引き起こす可能性があるため、速やかな受診が必要です。

切迫早産では、子宮収縮抑制剤が処方され、自宅での安静になるケースのほか、入院になるケースもあります。破水した場合には入院となり、抗菌薬などが投与されます。

子宮腟部びらん

子宮腟部びらんとは、子宮の入り口が赤くただれた状態になっていることをいいます。ただし、実際に炎症が起きているケースは少なく、女性ホルモンのバランスの変化によって、子宮頸管の円柱上皮という部分がめくれ、ただれているように見える仮性びらんがほとんどです。

仮性びらんは病気ではなく、妊娠にも影響しないことから、通常は治療の必要がありません。ただし、妊娠中は出血の原因を特定する必要があるため、受診は必要です。

前置胎盤・低置胎盤

正常な妊娠では、胎盤は子宮の上にある子宮体部に位置しています。胎盤が低い位置にあるのが、前置胎盤や低置胎盤です。前置胎盤は子宮口の一部、または全部を覆っているのに対して、低置胎盤は子宮口を覆っていないという違いがあります。

前置胎盤や低置胎盤は、子宮口の近くに受精卵が着床することによって起こります。前置胎盤や低置胎盤のメカニズムははっきりとはわかっていませんが、子宮に何かしらの跡があると受精卵がひっかかりやすいと考えられています。子宮筋腫や高齢での妊娠、双子や三つ子などの多胎妊娠、堕胎、流産、帝王切開などの経験がある人はリスクが高いとされています。
前置胎盤や低置胎盤は大量出血のリスクが高く、出血が起こった場合には、少量であっても速やかに受診が必要です。妊娠後期になっても前置胎盤や低置胎盤が解消されない場合には、帝王切開となります。

常位胎盤早期剥離

常位胎盤早期剥離は、妊娠中で胎盤が剥がれてしまう状態をいいます。常位胎盤早期剥離が起こると、急なお腹の痛みやいつもとは違うお腹の張りを感じます。少量あるいは大量の出血が起こることもありますが、胎盤と子宮の間に血液が溜まっていて、出血がみられないケースもあります。

正常な状態では、胎盤は子宮と接着しています。何かしらの理由で血行不良になり、子宮と胎盤が接着している面の組織が壊死してしまった場合、胎盤が剥がれてしまう原因となります。
胎盤が剥がれると出血が起こり、血液が溜まっていくことで、さらに胎盤が剥がれてしまいます。大量の出血が引き起こされて、貧血やショック症状が起こることもあります。また、赤ちゃんには胎盤から栄養や酸素が届かなくなり、脳性麻痺の原因になります。常位胎盤早期剥離は、母体と赤ちゃんの両者が非常に危険な状態になる可能性があるため、早急な措置が必要です。

常位胎盤早期剥離が疑われる場合は、速やかに病院に連絡をするか、救急車を呼びましょう。常位胎盤早期剥離が起こった場合は、子宮口が完全に開いている場合を除いて、ほとんどのケースで帝王切開を行います。母体にも赤ちゃんにも異常がみられない場合には、入院して経過観察をすることがあります。

まとめ

妊娠中の幸せそうな談笑中の夫婦

妊娠中の出血には、緊急性の高いものから、特に処置が必要ないものまでありますが、自己判断は禁物です。

出血の量が少なく、お腹の痛みが強くないときでも、母体や赤ちゃんに危険が及ぶ状態になっている可能性もあります。まずは、落ち着いて主治医に連絡し、受診をするべきか経過観察でよいのか、指示を仰ぐようにしましょう。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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