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多嚢胞性卵巣症候群と妊娠の可能性|自然妊娠・体外受精で差はあるの?詳細解説

皆さんは多嚢胞性卵巣症候群という病気をご存じですか?これは「たのうほうせいらんそうしょうこうぐん」と読みます。

現代女性は昔の女性と比べると、生活習慣が乱れやすい社会的要因を多く抱えており、さまざまなストレス環境の中に身を晒しています。これに加えて、女性の社会進出の進展、晩婚化の進行に伴って、不妊症に悩むカップルが増加傾向にあります。

「不妊症」とは、健康な男女が妊娠を望んで避妊をせずに性行為をするものの1年以上に亘って妊娠に至らない症状のことを表しています。不妊症となる原因にはさまざまなものが挙げられるのですが、多嚢胞性卵巣症候群も不妊症の原因となることがあります。

この記事では多嚢胞性卵巣症候群がどのような病気であるのか、多嚢胞性卵巣症候群がどのような原因によって引き起こされるのか、治療はどのように行われるのか、多嚢胞性卵巣症候群を発症した女性の妊娠の確率はどの程度であるのかをご説明してまいります。ぜひ最後までご覧になってください。

多嚢胞性卵巣症候群とは

とは何?というイメージ画像

「多嚢胞性卵巣症候群」とは、生殖器官が本来有する機能が適切に発揮されないために、①卵胞・卵子の成熟を通常よりも多く行ってしまう、②卵胞・卵子の成熟が未発達なままで停止してしまう、③排卵後に卵胞が別組織へと変化するための機能が作用しない、という症状を引き起こし排卵・月経のサイクルを乱す病気のことを指しています。

正常な排卵・月経のサイクルでは、以下の3ステップが1サイクルとなっています。

  • 1:卵胞・卵子の成熟
  • 2:排卵
  • 3-1:受精着床・妊娠
  • 3-2:月経

女性の卵巣の中には「原始卵胞・卵胞」と呼ばれる細胞が存在しており(思春期・生殖適齢期には約20~30万個)、この卵胞ひとつひとつの中に卵子が存在しています。

女性が思春期頃になると、分泌されるホルモンなどの影響によって、赤ちゃんを授かるための身体づくりが行われるようになっていきます。排卵・月経もホルモンの影響によるひとつの身体作用です。

卵胞・卵子の成熟は、脳の視床下部・下垂体からの指令を受けて分泌される「卵胞刺激ホルモン」の作用によって生じています。そして、ホルモンの作用が正常に機能している場合には、数十個ほどの卵胞が成熟を開始します。しかしながら、ホルモンの分泌量や複数のホルモンバランスが崩れると、卵胞の成熟が通常よりも多く行われ、多嚢胞性卵巣症候群を引き起こすきっかけとなることがあります。

卵胞・卵子は成熟に伴って一次卵胞、二次卵胞、成熟卵胞と少しずつ大きくなっていき、排卵(卵子を卵胞内から排出する)のために、十分に成熟した卵胞1つだけが卵子を排出します(この卵胞を「主席卵胞」と呼びます)。ホルモンの分泌量、ホルモンバランスの崩れは卵胞の成熟に作用を及ぼすとお伝えしましたが、これに加えて、卵胞・卵子の成熟を停止させ、多嚢胞性卵巣症候群を引き起こしてしまうことも明らかとされています。

排卵が行われた後、卵子が精子と受精して受精卵となり、この受精卵が着床しやすくするために、女性の身体(特に子宮内環境)はホルモンの影響を受けて変化していきます。この際に大きく影響を与えているのが「黄体ホルモン」と呼ばれるホルモンです。このホルモンは排卵した後に残った主席卵胞や、排卵することのなかった卵胞たちが「黄体」という組織へと変化することで分泌されるようになります。黄体ホルモンの影響を受けて子宮内膜が厚くふかふかな状態へと変化し、受精卵が着床しやすい子宮環境を整えていきます。しかしながら、卵巣や生殖器官全体の機能が低下することによって、卵胞が黄体へと変化する作用が失われることがあります。そして、これが多嚢胞性卵巣症候群を引き起こすきっかけとなることがあります。

上記にて説明した生殖器官の機能低下・ホルモンの乱れによって多嚢胞性卵巣症候群が引き起こされると、卵巣内に未成熟な卵胞が滞留するようになります。これが嚢胞(のうほう)と呼ばれるものであり、卵巣内に10個以上の嚢胞が確認されることが多嚢胞性卵巣症候群と診断するためのひとつの条件となっています。

多嚢胞性卵巣症候群の原因

原因を示すイメージ画像

上記にてホルモンの分泌量増加や、ホルモンバランスの崩れを挙げましたが、多嚢胞性卵巣症候群が生じる原因に関して更に詳しく見ていきましょう。

具体的には以下のものが多嚢胞性卵巣症候群の原因となっていると考えられています。

  • ・男性ホルモンの分泌過多
  • ・女性ホルモン(卵胞刺激ホルモン・卵胞ホルモン・黄体ホルモン)のバランスの乱れ
  • 遺伝的な性質、生活習慣の乱れや外部環境要因

それぞれに関しての説明は以下の通りです。

男性ホルモンの分泌過多

男性ホルモンには精神の安定化、意欲の向上といったプラスの効果があり、女性の体内でも一定量が分泌されています。しかしながら、このホルモンの分泌量があまりにも多くなると、卵胞の成熟を抑制する、卵胞を包む膜を厚くして排卵を妨げるなどマイナスな効果が強く現れるようになり、多嚢胞性卵巣症候群を引き起こす原因となってしまうことがあります。

女性ホルモンのバランスの乱れ

正常な排卵・月経サイクルが行われるには、適切なタイミングで適切な女性ホルモンが分泌されることが必要条件となります。「卵胞刺激ホルモン」は卵胞の成熟の合図、「卵胞ホルモン」は卵胞の成熟、「黄体ホルモン」は着床・妊娠のための身体づくりという役割を担っていますが、これらのホルモンバランスや分泌量に異常が生じることによって多嚢胞性卵巣症候群が引き起こされることがあります。

遺伝的な性質、生活習慣の乱れや外部環境要因

上記のホルモンバランスの乱れが多嚢胞性卵巣症候群と強く結びついていることはご実感いただけたかと思いますが、ホルモンバランスの乱れそのものが更に他の要因と結びついているということも多くあります。

特に顕著であるのが、生活習慣の乱れや、さまざまなストレスといった外部環境要因です。これらは身体全体の機能低下をもたらす原因となりますので、ぜひご自分の日常生活を振り返ってみられてください。

多嚢胞性卵巣症候群の治療方法

治療法のイメージとして医師たち

次に、多嚢胞性卵巣症候群の治療方法に関してご説明していきます。

多嚢胞性卵胞症候群の治療では、まず始めに生活習慣の改善が求められます。肥満体質であるという場合には肥満解消を目標とした、食生活の改善、適切な運動の習慣化などが行われます。

上記の生活習慣の改善を基本としながら、多嚢胞性卵巣症候群の治療では、妊娠を希望しているか否かに基づいた治療法が用意されています。

それぞれに関して見ていきましょう。

妊娠を希望する場合

妊娠を希望する場合には排卵障害を改善するための治療が行われます。

具体的な治療方法には以下のものがあります。

  • ・排卵誘発剤の使用
  • ・腹腔鏡下卵巣多孔術

それぞれに関して見ていきましょう。

排卵誘発剤の使用

多嚢胞性卵巣症候群を患うことで生殖器官内では正常な排卵が行われなくなっている可能性が高いですが、排卵誘発剤の使用は一定の効果が得られることが明らかにされており、卵胞の成熟の促進に期待が持てます。

腹腔鏡下卵巣多孔術

卵巣の表面に多数の穴を開けて排卵を促す手術が腹腔鏡下卵巣多孔術です。この手術には排卵誘発剤の効果を高める作用があるため、排卵誘発剤の使用と併せて行われることもあります。

妊娠を希望しない場合

妊娠を希望しない場合には月経不順を改善するための治療が行われます。

具体的には以下の治療法が挙げられます。

  • ・カウフマン療法
  • ・低用量ピル

それぞれに関して見ていきましょう。

カウフマン療法

カウフマン療法とは、正常な月経サイクルを支えるうえで必要となる卵胞ホルモンと黄体ホルモンの乱れの改善を目的として、人工合成の卵胞ホルモンと黄体ホルモンを3~6ヵ月に亘って周期的に補充し、規則的な月経サイクルの実現を図る治療方法です。

低用量ピル

低用量ピルもカウフマン療法と同様に、ホルモンを補充することで、多嚢胞性卵巣症候群の改善、規則的な月経サイクルの実現を図るものですが、ホルモンの服用量がカウフマン療法と比較して少ないことが特徴です。そのため、治療の中で生じる副作用がカウフマン療法よりも小さく済み、長期的に取り組みやすくなっています。

多嚢胞性卵巣症候群と妊娠確率

確率

最後に、多嚢胞性卵巣症候群を患った女性が妊娠する確率はどれくらいであるのかに関して見ていきましょう。

結論からいいますと、「多嚢胞性卵巣症候群を患うことによって、一般的な女性よりも妊娠しづらくなる傾向が高まります。」多嚢胞性卵巣症候群は排卵や月経のサイクルに支障をきたす病気であるため、妊娠のために必要となる卵子そのものが作られない、受精機能がきちんと備わった卵子が育てられないなどを理由にして、妊娠のチャンスそのものが小さくなるのです。

しかしながら、多嚢胞性卵巣症候群の発症に伴った排卵障害であったとしても、完全な無排卵となっているのか、何か月かに1度は排卵が行われているのかなどには個人差があり、妊娠率もこれに影響されます。

医療機関によっては、患者さんが若い場合や症状が軽度であり自然な排卵が可能であると考えられる場合には自然に妊娠するのを待ち、積極的な(多嚢胞性卵巣症候群の改善を基本とした)不妊治療を行わないというケースもあります。

多嚢胞性卵巣症候群の治療には、生活習慣の改善という超長期的な治療方法が基本にあります。ご自身の年齢や今妊娠を希望しているのか、将来的に赤ちゃんを望むのかなども考慮しながら治療を進めることが、多嚢胞性卵巣症候群を踏まえた妊娠に向けて大切なこととなります。

まとめ

前向きにほほ笑む女性

ここまで、多嚢胞性卵巣症候群がどのような病気であるのか、どのような原因によって引き起こされるのか、治療はどのように行われるのか、多嚢胞性卵巣症候群を発症した女性の妊娠の確率はどの程度であるのかに関してご説明してきましたが、ご理解いただけたでしょうか?

この記事をきっかけに、多嚢胞性卵巣症候群や不妊症に関する読者様のご理解がより深くなれば幸いです。

東京の「ミネルバクリニック」は臨床遺伝専門医が在籍するNIPT実施施設であり、たくさんの妊婦さんの悩みや不安と真摯に向き合い、笑顔になれる出産に導いてきました。ミネルバクリニックでは、妊娠9週から受けられる赤ちゃんの健康診断である「NIPT」を業界最新の技術と業界随一の対象疾患の広さで行っております。遺伝のエキスパートである臨床遺伝専門医が出生前診断を提供しておりますので、是非、お気軽にご相談ください。妊娠初期からの出生前診断を受ける医療機関にお悩みの方は、知識・経験・実績とも「第三者から認証されている」臨床遺伝専門医が診療している「ミネルバクリニック」まで是非、ご相談ください。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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