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妊娠中期にちょうどよい体重増加とは?適正体重や増えすぎ・不足によるデメリットと体重管理のポイント

妊娠15週目から妊娠27週目の妊娠中期の3か月は、胎盤も完成して一般的には安定期と呼ばれます。妊娠初期から吐き気や眠気などのつわり症状に耐えてきたママも多いですが、安定期に入ると落ち着いてくる方も増えてきます。

それと同時に、徐々に食欲も戻ってくるため、妊娠中期は食べ過ぎによる体重増加に注意しなければいけません。

また、近年では妊娠前から痩せている方や出産後の体型の崩れを気にする方も多く、体重増加の不足も問題となっています。

妊娠中の体重増加量は、多すぎても少なすぎても母子の安全に関わる重要なことです。

妊娠中は、お腹が大きくなるとともに少しずつ体重も増えていくものですが、とくに安定期である妊娠中期の適切な体重コントロールは非常に大切だといえるでしょう。

この記事では、妊娠中期の適正体重、急激な体重増加と体重が増えないことによるデメリット、妊娠中期の体重管理のポイントについてご紹介します。

妊娠中期の適正体重とは

自分の体重がどれくらい増えたのかわかっていない妊娠中期の女性

妊娠中にどの程度体重が増加しても大丈夫なのかは、ママの妊娠前の体格によってそれぞれ異なります。まずは適正な体重増加の目安を知るために、自分のBMI値を算出してみましょう。

BMI値は、妊娠前の体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で計算できます。BMI値を算出したら、以下の表を参考に妊娠中の推奨体重増加量を確認してください。

近年の低出生体重児の増加に伴い、2021年3月には妊婦の適正体重に対する指標が見直されました。

体格区分 BMI値 妊娠全期間を通しての推奨体重増加量【改訂前】 妊娠全期間を通しての推奨体重増加量【改定後】
痩せ型 BMI18.5未満 9〜12kg 12〜15kg
普通 BMI18.5以上25.0未満 7〜12kg 10〜13kg
肥満 BMI25.0以上

BMI30以上

個別対応 7〜10kg

個別対応(上限5kgまでが目安)

出典元:厚生労働省「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針より(日本肥満学会の肥満度分類に準じた)」

現在では、「妊娠時期による体重増加量を厳格に指導する根拠は必ずしも十分ではない」という認識から、妊娠全期間を通して個人差を考慮したゆるやかな指導が行われています。

とはいえ、妊娠中期の急激な体重増加は、ママと赤ちゃんの両方にさまざまなリスクが発生しやすくなるので注意しましょう。

妊娠中期の急激な体重増加によるデメリット

急に体重が増えたのを気にしている妊娠中期の女性

妊娠中期は、つわりも落ち着いて食欲が出ることから、体重が急激に増えてしまうママも多くいます。急激な体重増加は妊娠中特有の症状が起こりやすくなることから、十分注意して生活したいものです。

とくに注意すべきなのは、もともと糖尿病や高血圧、肥満、40歳以上の方だといわれています。まずは妊娠中期の急激な体重増加によるデメリットを知り、体重を増やしすぎないことの大切さについて考えてみましょう。

妊娠高血圧症候群のリスクが上昇

妊娠高血圧症候群は、全妊婦さんの5分の1に起こるといわれている疾患です。妊娠34週未満で発症した場合、重症化しやすくなるため注意しなければいけません。

肥満や急激な体重増加は血圧の上昇を招き、妊娠高血圧症候群のリスクを上昇させるといわれています。妊娠中期以降で、1週間に500g以上の体重増加がある方は要注意です。

妊娠糖尿病のリスクが上昇

妊娠糖尿病とは、妊娠後に胎盤などから分泌されるホルモンの影響により、血糖を抑制するインスリンの作用が弱まるために血糖値が上がる疾患です。妊娠してはじめて発見、診断されますが、糖尿病には至りません。

以下は、妊娠糖尿病で胎児に起こる可能性のある異常です。

  • 流産や早産
  • 出生体重が4000g以上の巨大児
  • 心臓肥大
  • 低血糖
  • 黄疸 など

35歳以上の高齢出産や肥満の方などは妊娠糖尿病のリスクが高いといわれているため、妊娠中の急激な体重増加には十分注意が必要です。

腰痛が出やすくなる

腰痛は、妊婦さんのQOLを著しく低下させる要因のひとつです。

妊娠後期になるにつれ多くの妊婦さんが腰痛に悩まされることになりますが、妊娠中期に急激な体重増加があった場合、早期から体への負担が大きくなることから、お腹が出てくるとともに腰痛が出やすくなることもあります。

とくに1日中家にいる方や座り仕事の方は、妊娠中期になると食欲が戻ったことでついつい間食をしがちです。お正月やイベント時期などもたくさん食べる機会があるので、十分注意しなければいけません。

微弱陣痛の可能性

微弱陣痛とは、陣痛の強さや頻度、持続時間などの不足により、出産時に赤ちゃんがスムーズに外へ出せない状態のことです。

子宮口が開かず分娩も困難になるため、ママだけでなく赤ちゃんにもダメージがおよび、最悪の場合命に関わる事態になることもあります。

妊娠中期に食べ過ぎや運動不足で急激に体重が増加すると、子宮のまわりに余分な脂肪がついてしまいます。そのため、赤ちゃんが膣へ降りにくくなったり、骨盤内の神経への刺激が起こりにくくなったりして、微弱陣痛に陥りやすくなるので注意が必要です。

巨大児の可能性

一般的に、巨大児は糖尿病のママから生まれることが多いとされており、母体の血糖コントロール不良も大きな要因であるとされています。

妊娠中期に急激な体重増加があり、母体が高血糖になってしまうと、胎盤を通して多量のブドウ糖が胎児に移行するため、胎児はインスリンを多量に分泌させて血糖の調節を行います。

これが胎児の体重増加に関係し、巨大児になるとされているのです。

巨大児は、産道を通り抜けにくいことから、難産になりやすいとされています。さらに、赤ちゃんが成人後に肥満や糖尿病発症のリスクが高まるため注意しなければいけません。

妊娠中期に体重が増えないことによるデメリット

自分のウエストを量っている妊娠中期の女性

これまで、妊娠中期の急激な体重増加によるデメリットをご紹介してきましたが、最近では痩せ過ぎているママのトラブルも懸念されています。

とくに、もともと痩せているママは、妊娠初期のつわりなどでさらに痩せてしまうこともあり、適切な体重増加がないことによってさまざまなデメリットが生じてしまうことも。

では、妊娠中期に体重が増えないことで、どのようなデメリットが生じるのでしょうか。

切迫早産や早産の可能性

妊娠22週0日から、妊娠36週6日までに赤ちゃんが産まれてしまうことを早産といい、早産になりかけている状態のことを切迫早産といいます。

ある研究では、妊婦さんが痩せていればいるほど赤ちゃんの在胎日数は短くなり、出生体重も小さくなる傾向にあることが明らかにされています。

妊娠週数が早いほど赤ちゃんは未熟な状態で生まれてくるため、命の危険や障害が残る可能性も高まってしまうのです。また、早産で生まれた赤ちゃんは、新生児集中治療室での長期間にわたる治療が必要になるケースも多くなるでしょう。

赤ちゃんの発育が遅れる

ママの栄養不足により赤ちゃんに送られる栄養が足りない場合、赤ちゃんは発育が遅れた状態で産まれてしまいます。とくに日本は世界的にみても2500g未満の低出生体重児が生まれる確率が高く、この40年余りで1.8倍に増えているようです。

胎内での発育が不十分な状態で産まれてしまうと、出生後に低体温や低血糖、黄疸などになりやすいほか、赤ちゃんが成人後の生活習慣病のリスクまで高まる可能性も。

以下は、低出生体重児に将来発症するリスクのある疾患の例です。

  • 虚血性心疾患
  • 2型糖尿病
  • 高血圧
  • メタボリック症候群
  • 脳梗塞
  • 脂質異常症
  • 神経発達異常

胎内でママの栄養を十分に取れず飢餓状態だった赤ちゃんは、出生後の飢餓状態に備えて脂肪を栄養に変換しやすいよう遺伝子を変化させることがわかっています。

つまり、少しの食べ物からでも多くの脂肪分や栄養分を体内に取り込める体質になっているということです。

現在の日本では、栄養が足りないような状態になることはほとんどありません。そのため、出生後は太りやすく、それに伴って早い段階で生活習慣病などにかかりやすくなる可能性が高まるのです。

妊娠中期の体重管理のポイント

以下は、妊娠中期の体重管理のポイントです。

  • 毎日同時刻に体重計に乗る
  • これまで行ってきた家事や散歩はできるだけ継続する
  • 1日のうちに食べたものをすべて書き出す
  • 出汁を利用した塩分控えめの食事にする

妊娠中期は、胎盤も完成してママの食事が赤ちゃんに直接影響します。急激に体重が増加している場合も、なかなか増えない場合も、まずは1日3回バランスの取れた食事を規則正しく食べ、毎日体重の管理をするようにしましょう。

体重がなかなか増えないときは、かかりつけの産婦人科で相談し、適度な間食を摂るのもおすすめです。

また、妊娠中期は体調も落ち着き、家事や散歩もしやすい時期です。動き過ぎはよくありませんが、適正な体重キープと出産に必要な筋力をつけるためにも、適度に動くようにしましょう。

まとめ

妊娠中期の適正体重、急激な体重増加と体重が増えないことによるデメリット、妊娠中期の体重管理のポイントについてご紹介しました。

お腹の赤ちゃんが健やかに育つためには、適正体重をキープすることが重要です。太り過ぎても痩せ過ぎても母子の健康に悪影響が出る可能性もあるので、注意しましょう。

ただし、体重の増減を気にするあまり、ストレスを抱えてしまっては逆によくありません。

妊娠中期の急激な体重増加などが気になる方は、ぜひ本記事を参考に楽しい妊娠中期を過ごしてくださいね。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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