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妊娠中期に前期破水が起こったらどうする?原因や症状、注意点などについても紹介

破水とは、赤ちゃんを包んでいる卵膜が破れ、中の羊水が外へ流れ出てしまうことです。生まれる直前に起こるイメージも強いですが、妊娠中期に破水が起こるケースもあります。

妊娠中期は、徐々にお腹も大きくなり妊娠していることをリアルに感じられる時期です。

ときには万が一妊娠中期に破水してしまったときのことを想像して、「まだまだ生まれる時期より早いのに破水しても大丈夫?」「赤ちゃんは無事生まれてこられるの?」など、さまざまな不安がよぎることでしょう。

そこでこの記事では、破水の種類と妊娠中期に前期破水が起こる原因や症状、前期破水が起こったときの注意点や病院での処置についてご紹介します。

もしも妊娠中期に破水してもパニックにならないよう、破水についての知識を身につけておきましょう。

破水の種類

お腹の赤ちゃんをいたわっている妊娠中期の女性

妊娠中は、お腹の赤ちゃんは袋のような卵膜に満たされた羊水に浮かんでおり、卵膜が破れて羊水が体外へ流れることを破水といいます。

破水は、起こるタイミングによって以下の3種類に分類されます。

  • 適時破水:分娩第1期から第2期(子宮口全開大)にかけての破水
  • 早期破水:陣痛開始から子宮口が全開大するまでの破水
  • 前期破水:陣痛(1時間に6回以上規則的な陣痛)が起こる前の破水

この中で妊娠中期に起こるのは前期破水ですが、正期産(妊娠37週)よりも前であることから、「早期前期破水」と呼びます。

前期破水から長時間が経過してしまうと、膣から細菌が侵入してお腹の赤ちゃんが感染してしまうことも。

また、妊娠中期は妊娠16週から妊娠27週です。そのため、胎児の肺が十分に成熟していない未熟児の状態で生まれてしまったり、脳出血や場合によっては死亡したりする可能性もあるので、適切な処置を受けなければいけません。

妊娠中期に前期破水が起こる原因や症状

お腹の赤ちゃんをいたわっている妊娠中期の女性

分娩開始前に破水してしまう前期破水は、全妊娠の5〜10%の確率で起こるとされていますが、多くの場合、破水が起こると陣痛が起きて分娩に進行します。

膣から突然羊水が流れ出て下着が濡れたりすることなどをきっかけに気づくケースも多く、安定期と呼ばれる妊娠中期には、外出中に起こることも。

まずは妊娠中期に前期破水が起こる原因や症状を知り、万が一のときに備えておくことが大切です。

前期破水が起こる原因

正期産の時期の前期破水はとくに原因がないこともありますが、妊娠中期に起こる前期破水は、以下の原因で起こる可能性があります。

絨毛膜羊膜炎

妊娠中期に前期破水が起こる原因としてもっとも多いのは、「絨毛膜羊膜炎」です。胎児を包んでいる卵膜に雑菌などが侵入し炎症を起こしており、炎症部位に白血球が集まることで白血球が持つ酵素の働きによって羊膜のコラーゲンが脆くなり、卵膜が破けてしまいます。

子宮内圧の上昇

急激な子宮内圧の上昇は、破水の原因のひとつです。

妊娠中期は安定期であることから、仕事や家事を妊娠前と同じようにこなしている方も多い時期です。そのため、重い荷物を持ち上げたり、無意識のうちにお腹に負荷がかかるような動きをしたりすることも。

また、徐々にお腹が大きくなってきたことでこれまでと体の重心が変わり、バランスを崩して転倒したり高いところから墜落したりして子宮内圧が急激に上昇する可能性もあります。

他にも、双子や三つ子などの多胎妊娠や、子宮内の要水量が800ml以上になる羊水過多、子宮内の赤ちゃんの位置に異常がみられる胎位異常(逆子)、子宮頸部円錐切除術の既往歴がある場合なども前期破水のリスクが高まるでしょう。

前期破水が起こりやすい方

上記でご紹介した原因を踏まえ、前期破水が起こりやすい方についてまとめました。

  • 重い荷物を持つ、転んだなどお腹に負荷をかけている方
  • 絨毛膜羊膜炎や膣炎などの疾患により卵膜が柔らかくなっている方
  • 羊水過多の方
  • 双子や三つ子などの多胎妊娠の方
  • 慢性的、もしくは子宮収縮に伴う子宮内圧の上昇がみられる方
  • 子宮の奇形がみられる方

妊娠中期は、ママと赤ちゃんが安定していることから、仕事だけでなくお出かけや出産準備などで外に出る機会も多いことでしょう。妊婦健診などでもともと前期破水のリスクについて説明を受けている場合もありますが、突然起こることも考えられるので安定期とはいえ、外出時は注意が必要です。

前期破水の症状

前期破水は、突然膣から急激に水のような羊水が流れ出たり、水っぽいおりものが増えたりします。

高位破水(子宮口から離れた子宮の高い位置に穴があいた状態)などの場合、羊水が流れ出る量も多いとは限らないため、少量ずつチョロチョロと流れ、尿漏れと勘違いしてしまうママもいるようです。

とくに本来破水することの少ない妊娠中期の場合は、羊水が流れ出る量が少ないとなかなか破水したことに気づけないことも。

発熱や頻脈、子宮の圧痛、膣分泌物からの悪臭などの症状がある場合は、感染の可能性も出てくるので早急にかかりつけの産婦人科へ連絡しましょう。

妊娠中期に前期破水が起こったときの注意点や病院での処置について

前期破水について医師から電話で説明を受けている妊娠中期の女性

妊娠中期に前期破水が起こった場合は、状況にもよりますが、できる限り妊娠を継続させるための処置を行います。なぜなら、お腹の赤ちゃんは胎外で生きられるほど各器官が出来上がっていない状態だからです。

また、妊娠中期はママ自身も破水するとは思っていないことも多く、妊婦さんのマイナートラブルで多い尿漏れと勘違いしてしまうことも。

妊娠中期の前期破水は、一刻も早い処置が必要です。とくに妊娠24週未満の場合は、破水によって胎児に危険が及ぶこともあるため、前期破水と尿漏れの見分け方や注意点、病院での処置について知っておきましょう。

前期破水と尿漏れの見分け方

破水には、勢いよく羊水が流れだすケースと、少しずつ進行するケースがあります。妊娠中期では「破水したら連絡をください」と病院で言われることもほとんどないため、尿漏れとの違いを見分けるのは困難でしょう。

以下は、前期破水と尿漏れの見分け方のポイントです。

出てくる水の色

破水の場合は透明もしくは薄い乳白色、黄味がかった透明の液体であるため、尿との色の違いをチェックしましょう。

におい

羊水は尿のようにアンモニア臭はありません。破水の場合は無臭か甘酸っぱいにおい、塩分を含んでいるような生臭さがあります。

意識して止められるか

自分の意志で止められる場合は尿漏れ、止められない場合は破水です。

妊娠後期に近づくにつれ、お腹も大きくなってきます。そのため、風船が割れるような衝撃や、音が聞こえることも。

これらのポイントを冷静にチェックし、破水の可能性があるときは必ず病院へ連絡しましょう。自分では破水かどうか判断できない場合も、ためらわずに連絡してください。

妊娠中期に前期破水が起こったときの注意点

思わぬタイミングで破水が起こってしまうと、下半身の汚れが気になってシャワーを浴びてから受診したいと思われる方もいるようです。

しかし妊娠中期は、感染が起こってしまうと胎児が危険な状態になってしまうため、破水後のお風呂やシャワーは絶対にやめましょう。トイレの温水洗浄便座も使用しないようにしてください。

破水後は足を軽くタオルで拭き、大人用のオムツや尿取りパッドなどを当てたあと、慌てず落ち着いてかかりつけの産婦人科へ連絡します。

また、痛みがないからといって病院へ行く準備のために動き回らないでください。

体を動かすたびに羊水が流れ出てしまい、胎児が危険な状況に陥ってしまう可能性もあります。タクシーで病院へ向かい、入院することになったら、後から家族やパートナーに病院まで荷物を持ってきてもらいましょう。

病院での処置は子宮内感染があるかで大きく異なる

妊娠中期に破水が起こった場合、まずは入院して子宮内の様子を注意深くモニタリングします。

施設によって治療方法は異なりますが、37週に満たない場合はNICU(新生児集中治療室)がある周産期センターなど、設備の整った医療機関へ転院する場合もあるでしょう。

妊娠中期の前期破水では胎児が未熟なことも多いため、母体と胎児の状態が許す限り子宮の収縮を抑える薬を使って妊娠期間を延長し、胎児の肺の成長を促進する薬を使ったりします。しかし、感染が進行したり胎児の状態が悪化したりする場合は、分娩する可能性も。

ちなみに、胎児が体外で生存できる限界は妊娠22週だといわれています。一般的にこのようなケースでは、人工妊娠中絶という形をとることがほとんどですが、中には妊娠16週に破水し、人工羊水を注入して最終的に妊娠25週で生まれた赤ちゃんも。

羊水補充療法は、週数や母体の状況を考慮した上で慎重に検討すべき治療ですが、そのような治療があることも知っておいた方がよいでしょう。

まとめ

破水の種類と妊娠中期に前期破水が起こる原因や症状、前期破水が起こったときの注意点や病院での処置についてご紹介しました。

妊娠中期に起こる可能性があるのは、前期破水です。妊娠中期に前期破水が起こり、分娩となってしまうと、生まれた赤ちゃんに重篤な合併症が発生する確率も高まります。

そのため、できる限りママのお腹にとどめる方向で治療を行いますが、場合によっては早産や人工妊娠中絶の道を選ばなくてはいけないことも。

前期破水の原因は今回ご紹介した以外にも特定できないものも多いため、残念なことに予防することができません。

実際に前期破水を経験した先輩ママの中には、自分を責めてしまった方もいるようですが、予防法もないので責任を感じる必要はありません。

破水の心配があると感じたら、すぐにかかりつけの産婦人科へ連絡し、指示を仰ぐようにしましょう。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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