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妊娠中期に出血する原因といざというときの行動の手引き!知っておきたい危険な症状のチェック表も紹介

妊娠中期の出血は、少量から大量で危険なものまでさまざまです。本来は母体も胎児の安定しているはずの妊娠中期に少しでも出血があると、ママは驚いてしまうことでしょう。しかし、これくらいの出血で病院へ電話や受診してもよいのか、迷ってしまうこともあるはずです。

この時期にもっとも注意すべきなのは、出血が止まらない、むしろ増えているなどのケースです。

出血に気づいたら安静にして様子をみるのが一般的ですが、まずはその前に出血量や色、状態など、チェックすべきポイントがいくつかあります。いざというときにパニックにならないよう、今のうちにしっかりと確認しておきましょう。

この記事では、妊娠中期に出血する原因、行動の手引きと危険な症状チェック表をご紹介します。妊娠中期に出血があって不安な方や、これから妊娠中期に突入する方はぜひ最後まで読んでみてください。

妊娠中期に出血する原因とは

腹痛がひどくてお手洗いに駆け込んだら出血していた妊娠中期の女性

「安定期に入ったはずなのに、出血があります」「出血とともにお腹も張っている気がします」という質問は、妊娠中期の妊婦さんからよく聞かれるものです。

妊娠中の出血は、全妊婦さんの2〜3割が経験するといわれており、それほどめずらしいことではありません。しかし中には緊急を要するものもあるので、そのまま放置するのは得策ではないでしょう。

ここではまず、妊娠中期に出血する原因についてご紹介します。

切迫流産や切迫早産

一般的に、妊娠22週(妊娠6か月)までに妊娠が中断してしまうことを流産、23週(妊娠7か月)以降36週(妊娠10か月第1週)までを早産といいます。切迫という文字がつくと、その一歩手前の状態であることを示しています。

妊娠中期に出血を繰り返す原因としてもっとも多いのが、この切迫流産や切迫早産です。

妊娠5か月目以降の流産や早産は、陣痛のように周期的な腹痛を伴うのが特徴で、お腹の張りも定期的に起こります。すなわち、出血があっても腹痛がなければ流産や早産の可能性は低いということです。

ただし、症状がなくても破水してしまうと妊娠の継続が困難になり陣痛が始まってしまうため、入院しての投薬治療などが必要になるでしょう。

その他妊娠に関連するもの

よく、少量の出血があっても胎動があれば妊娠に影響しないという噂を耳にしますが、実際のところ胎児が動いていたとしても出血することはあります。

その代表的な症状が、前置胎盤や低置胎盤、常位胎盤早期剥離、子宮破裂などです。これらの症状は急な出血が特徴で、腹痛を伴うこともあります。

以下は、妊娠に関連する出血のそれぞれの特徴です。

前置胎盤:胎盤が子宮口を覆った状態。妊娠20週以降の出血が特徴で痛みを伴わないことも多い。出血量が多いと母体、胎児ともに危険な状態になることも。

低置胎盤:胎盤が子宮口に近い位置に形成されているものの、子宮口を塞いではいない状態。前置胎盤と同様、大量出血の可能性がある。

常位胎盤早期剥離:分娩よりも前に胎盤が剥がれてしまうこと。場合によっては胎児が脳性麻痺や死に至ったり、母体が死亡したりするケースもある危険な状態。

子宮破裂:子宮が破れて母子ともに危険な状態に陥る恐れもある重篤な疾患。妊娠中期では、子宮手術や帝王切開の傷跡などが原因となることが多い。

胎動のあるなしで、ママが赤ちゃんに影響しないかどうかを判断するのは困難です。上記のように、腹痛を伴ったり出血量が多かったりする場合は、ママと赤ちゃんの生命が危ぶまれる可能性もあるため、一刻も早い対処が必要になります。

また、妊娠中期にはおりものも増えてきますが、サラサラと水っぽい場合は破水している可能性もあるので早急に受診しなければいけません。

妊娠に直接関係のないもの

下着やトイレットペーパーに血液が付着していると、膣からの出血ではないかと不安になってしまう妊婦さんも多いですが、中には性器以外から出血しているケースもあります。

以下は、妊娠に直接関係のない出血の例です。

  • 痔による出血
  • 子宮膣部びらん
  • 子宮頸管ポリープ
  • 膀胱炎 など

不正性器出血と間違えやすいのは、痔や膀胱炎による出血です。妊娠中は、とくに子宮周辺の臓器に関する症状が起こりやすくなります。

子宮膣部びらんや子宮頸管ポリープは、子宮口や子宮頸部にできるただれや良性腫瘍のことです。痛みはありませんが、内診や性行為の刺激で出血することもあります。ただし、出血が続くと感染が起こりやすくなり、流産や早産の恐れもあるため、医師による適切な処置が必要です。

妊娠中期に出血がみられた際の行動の手引きと危険な症状チェック表

出血した理由がわからない妊娠中期の女性

妊娠中の出血は、妊娠に伴って自然に起こることもありますが、上記でもご紹介したように病気が原因で起こる可能性もあります。妊娠中期に注意したいのは切迫流産や切迫早産ですが、他にも危険な病気が隠れている恐れもあるため、きちんと原因を追求すべきです。

とくに妊婦健診ですでに胎盤の位置が低めといわれている場合などは、大出血につながる恐れもあるため、これからご紹介する項目をチェックし、かかりつけの産婦人科に連絡しましょう。

ここでは、妊娠中期に出血がみられた際の行動の手引きと危険な症状チェック表をご紹介します。

妊娠中期に出血がみられた際はどうすればいいの?

妊娠中期は、少量の出血でも自己判断せずに受診するのが基本です。しかし、感染症が流行している昨今、必要以上に病院へ行きたくないという方が多いのも事実。

出血の度合いによっては受診せずに済む場合もありますので、以下の妊娠中期に出血がみられた際にとるべき行動の手引きを参考にしてください。

  1. 出血の状態をチェック:下記の「危険な症状チェック表」を参照
  2. かかりつけの産婦人科へ連絡:30分から1時間程度安静にした後、必ず妊婦さん本人が電話し、状況を明確に伝える
  3. 受診する、もしくは自宅で安静に:早急に受診するか自宅で安静にして様子をみるか、医師の指示に従う

出血がみられたら、まずは焦らず出血の状態をしっかりと確認します。かかりつけの産婦人科へは必ず出血の状態を把握している妊婦さん本人が連絡し、症状をすべて明確に伝えます。

場合によっては緊急入院して手術を行う可能性もあるので、母子手帳や保険証、診察券などとともに、下着など入院に必要なものをある程度まとめておくとよいでしょう。

危険な症状チェック表

妊娠中期は妊娠期間中でもっともママと赤ちゃんの状態が安定しているため、ママもついつい安心しがちです。そのため突然出血が起こると、ママも家族もパニック状態になってしまうことがあります。

まずは以下の危険な症状チェック表を参考に、冷静に出血の状態を観察し、かかりつけの産婦人科に相談するようにしましょう。

出血量:「ティッシュにつく程度」「生理2日目くらい」「生理より多い」など、具体的に。

出血の色:鮮やかな赤なのか、茶色っぽいのか、ピンク色なのか色を具体的にチェック。

出血の状態:血液の粘度やかたまりの有無、量の増減、継続しているかなどを確認。

出血回数と頻度:いつ頃に何回出血したかなどを具体的に伝えられるようにする。

出血のタイミング:安静にしているときなのか、仕事中なのか、排尿時なのかなどを確認。

出血以外の症状:お腹の張りや痛みはないか、おりものが水っぽいなど、出血以外の情報も具体的に確認。

出血が起こったら、まずは落ち着くことが大切です。

診断の際は、出血量や出血部位、お腹の張りや痛みの有無を診ます。医師は出血の状況をリアルタイムでみているわけではないので、できるだけ多くの情報を伝えられるようにきちんと確認しましょう。

まとめ

妊娠中期に出血する原因、行動の手引きと危険な症状チェック表をご紹介しました。

妊娠中の出血原因は、妊娠週数によってさまざまです。妊娠中期では、切迫流産や切迫早産の他に前置胎盤や低置胎盤、子宮周辺の臓器からの出血などの可能性があります。

とくに切迫流産や切迫早産、妊娠に関連する出血は、適切な治療を受けないと妊娠を継続できなくなる恐れもあるので注意が必要です。

下着やティッシュにわずかに血液がつく程度の少量の出血で腹痛などがなければ、慌てて受診することはありませんが、自己判断は危険です。念の為かかりつけの産婦人科に電話で状況を説明し、医師の指示を仰いだ方がよいでしょう。その際は、今回ご紹介した危険な症状チェック表を見ることをおすすめします。

本来トラブルが少なく安定しているはずの妊娠中期に出血すると、ママは不安になってしまいますが、冷静に対処すれば大事に至らないことも多いです。ぜひ本記事を参考に、マタニティライフを楽しんでくださいね。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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