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産休、育休中の退職は可能?手当や給付金をもらえるケースと注意点

「産休を終えたら仕事に復帰するつもりだったが、赤ちゃんの体調が悪く復帰できそうにない」「産休中にパートナーが転勤になり、一緒について行くことになった」

産休や育休は、基本的に取得後に復職することが前提です。しかし、その予定だったものの、さまざまな理由から休暇中に退職せざるを得なくなることもあります。

産休、育休中に退職を申し出ることや実際に退職することは、これまでお世話になった会社へ迷惑をかけることになりますが、法律的にはなんら問題ありません。

ただし、手当や給付金がもらえなくなる経済的なデメリットや注意点があるため、今一度本当に退職すべきか考える必要があります。

この記事では、産休、育休中の退職でも手当や給付金がもらえるケースと退職する際の注意点についてご紹介します。産休、育休中に退職をお考えの方は、ぜひ最後まで読んでみてください。

産休、育休中の退職は可能?

クエスチョンマークをお腹につけている妊婦さん

女性にとって、妊娠や出産は人生の中で非常に大きな出来事です。妊娠によってホルモンが変化し、体調や精神面も不安定になり、徐々に大きくなるお腹に不安を抱えながらの仕事は、本当に大変だったことでしょう。

また、出産を終えた後は生活が大きく変化することで戸惑うこともありますし、体調がなかなか戻らない方も多いです。

そんな中、「産休、育休が終わった後、いつも通りに業務に戻れるのか」と不安に感じたり、復職後に赤ちゃんのお世話を手伝ってもらうはずだった両親のサポートが受けられなくなったりと、さまざまな理由で退職を検討する方もいます。

冒頭でもご紹介した通り、結論としては産休や育休中でも法律的には退職が可能です。

やむを得ない事情で退職を選ばなければならない場合もありますが、少なからず会社に迷惑がかかってしまうため、倫理的には問題があるということは理解しておくようにしましょう。

産休、育休中の退職でも手当や給付金をもらえるケース

家族で仲良く過ごしている姿を表現している木像

産休や育休中は、基本的に給与の支給はなく、無給の状態になります。その間は、給与の代わりとなる手当や給付金が支給されるのが一般的ですが、もしも産休や育休中に退職してしまった場合、それらのお金はもらえなくなってしまうのでしょうか。

実は、それぞれの手当や給付金が設けている条件を満たしていれば、退職してしまっても受給することはできます。

ここでは、産休、育休中の退職でも手当や給付金をもらえるケースについてご紹介します。

出産手当金

出産手当金とは、出産のために仕事を休んだ際に、勤め先で加入している健康保険から支払われる手当金です。女性には、産前6週間と産後8週間の間、休暇を取得できる権利があることは、労働基準法の第65条によって定められています。出産手当金は、その間の生活費の一部を保障するための制度なのです。

産休、育休中に退職する場合は、以下の条件を満たすことで復職する場合と同じように手当金を受給できます。

  • 退職日までに1年以上継続して勤務先の健康保険に加入していた
  • 退職時すでに出産手当金を受給している、もしくは受給するための条件を満たしている
  • 出産6週間前より1日でも後に退職している

退職後にパートナーの健康保険の被扶養者になった方や、国民健康保険に加入した方は、出産手当金の受給資格がなくなるため、もらえなくなってしまいます。また、退職日に出勤した場合も、継続給付が受けられなくなるので注意しましょう。

出産育児一時金

出産育児一時金とは、出産費用を補助するために健康保険から支払われる助成金のことです。

基本的な支給額は赤ちゃん一人につき42万円で、健康保険に加入しているもしくは配偶者の健康保険の被扶養者となっている方で、妊娠4か月が経過していれば支払われます。

退職前に1年以上勤め先の健康保険に加入しており、退職後6か月以内に出産していれば、退職後に健康保険を変更した場合でも、元の勤め先の健康保険から助成金が受け取れるのも特徴です。

この場合、加入している健康保険によって申請方法が異なる可能性もありますので、出産する医療機関で確認してみることをおすすめします。

育児休業給付金

育児休業給付金とは、育休中で給与が支払われない場合に、加入している雇用保険から支給される給付金のことです。子どもが1歳になるまで(場合によっては1歳6か月もしくは2歳まで)受給できます。育児休業給付金は、産後8週間の産後休業の後の育児休業に入ってから支給が開始します。

以下は、育児休業給付金を受給するための条件です。

  • 雇用保険に加入しており、育休後も退職する予定がないこと
  • 育休中の給与が通常の8割以下であること
  • 育休前の2年間に11日以上働いた月が12か月以上あること

育児休業給付金は、育休後に復職することを前提とした給付金であるため、退職後は支給されません。つまり、産休中に退職してしまうと、一切受け取ることができなくなるということです。

退職の予定があるのに給付金を受け取ってしまうと、不正受給とみなされてしまう恐れもあるため、退職を決めたらすみやかに会社へ申し出ることをおすすめします。

退職金はどうなるの?

産休や育休中の申し出や取得を理由に、不利益な取り扱いをすることは法律で禁止されています。そのため、退職金が支給される会社に勤めており、支給対象労働者であれば、産休や育休中でも規定通りに退職金を受け取ることが可能です。

一般的な退職金の計算方法は、基本給×勤続年数に応じた支給乗率となっています。産休、育休の取り扱いについては法律で決められていないため、退職金の算定に含めるかどうかは勤め先の規則によって異なります。

産休、育休中の退職を検討している場合は、会社の退職金規定を確認してみましょう。

産休、育休中に退職する際の注意点

悩みの解決策を見つけた妊婦さん

手当や給付金の受給やさまざまな手続きなど、ただでさえ複雑な産休、育休中の退職。出産や育児によって生活環境も大きく変わり、やることがたくさんあって当惑してしまう方もいるのではないでしょうか。

産休、育休中の退職にあたっては、手当や給付金の手続きの他にも、気にしなければいけないことがいくつかあります。そこでここでは、産休、育休中に退職する際の注意点を3つご紹介します。

退職届を出すタイミングに注意

上述したように産休や育休中に退職することは、本人にとってはもちろんですが、会社にとっても新たな人材の確保やさまざまな手続きなどをしなくてはならないため大変です。

中小企業では、雇用主の方から産休後の退職を促されることもあるようです。

しかし何にせよ大きな問題ですので、退職をする場合はできるだけ早く、遅くとも退職予定日のひと月前までに会社へ連絡するようにしましょう。

失業保険の受給期間の延長申請をしておく

産休、育休中に退職を決めた場合でも、今後再就職を希望するのであれば失業手当の受給期間を延長する申請を行っておくことをおすすめします。

そもそも失業保険とは、公的保険制度の一つで雇用保険のことです。加入者は失業や退職に当たり、失業手当(基本手当)を受け取ることができます。

本来、失業手当を受けられるのは、退職した翌日から1年間です。しかし、妊娠や出産で就職ができない場合は、失業手当の給付条件である「いつでも就職できる健康状態、環境」を満たしていないことになるため、受給できません。

今後再就職する意思がある方は「受給期間の延長申請」をしておき、再度就職活動をはじめる際に受給申請をすることで、失業手当を受け取ることができるのです。

延長申請が可能な期間は、最大で4年間です。育児が落ち着いてからの再就職を検討している方は、この手続きをしておくことをおすすめします。

健康保険をどうするのか考えておく

産休、育休中は免除されている健康保険などの社会保険料ですが、退職すると適用されなくなるため、その後どうするのか考えておく必要があります。

以下は、退職後の健康保険の選択肢です。

  • 夫の健康保険に扶養家族として入る
  • 任意継続被保険者制度を利用する
  • 国民健康保険に入る

ほとんどの方が夫の扶養に入るか、退職後2年まで退職前の健康保険を継続できる任意継続被保険者制度を利用します。

出費を抑えたいのであれば扶養に、2年以内に再就職を検討しているのであれば任意継続被保険者制度を利用してもよいでしょう。いずれにせよ、退職後はすぐに手続きをする必要がありますので、退職前にどうするのか決めておくことをおすすめします。

まとめ

産休、育休中の退職でも手当や給付金がもらえるケースと退職する際の注意点についてご紹介しました。

産休、育休中は、赤ちゃんの誕生により生活が激変するため、これまで通り仕事が続けられないと思う方も多いかもしれません。近年、女性も職場で活躍できるようになっていますが、実際のところ産休、育休に伴う退職は比較的多いようです。

産休は、労働基準法第65条で定められた女性の権利です。産前6週間は申請すれば休業が認められており、産後8週間は労働自体が禁止されています。これはつまり、復帰する意欲があるかどうかは関係ないということであり、退職も可能です。

育休については、基本的に退職を前提として取得することはできませんが、会社ごとに規定を設けることが認められているため、社内規定を確認してみるとよいでしょう。

ただ、産休を取得して退職することは法律に反しているわけではないものの、これまでお世話になった会社への配慮や、社会人のマナーとしては褒められることではありません。

退職の理由はさまざまですが、ご自身と子ども、家族のことを考えて、慎重に決めるようにしましょう。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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