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不妊治療のタイミング法とは?治療方法一覧と治療開始の目安

「いつぐらいから不妊治療を受けたらいいのだろう」「不妊治療は負担が大きくて怖い」と不妊治療受ける決断ができないご夫婦がいるかもしれません。現在、不妊治療を受けているご夫婦は急増しており、妊活で生まれてきた子どもも増えています。

今回は、タイミング法を中心に不妊治療について解説をし、悩んでいるご夫婦の決断の一助になればと思っています。是非最後までご覧いただき参考にしてください。

不妊治療のタイミング法とは

医師と夫婦
タイミング療法とは、「最も妊娠しやすいタイミングに性交渉を行う」方法です。基礎体温や超音波検査、尿中LH検査などを参考にしながら排卵日を予測し、効果的な性交渉のタイミングを医師がアドバイスします。最も自然な妊娠に近いのが特徴です。

年齢などの条件はありますが、排卵に問題がなく精子の数や動きも正常ならばタイミング法からおすすめする医師がほとんどです。

基礎体温を測ることで排卵日の予測をし、超音波検査で卵胞の成長をチェックし、排卵日を判断します。条件が整ってきたら尿中LH検査を行い、夫婦生活を実施するタイミングを指導します。その後は、超音波検査にて確認して妊娠しているかどうか待つだけです。

ところが、排卵が自分の思っているタイミングと異なっていることも珍しくありません。月経が不順だと予測が難しくなり、自分たちなりのタイミングによる性交渉でなかなか妊娠できない場合もあります。もし、タイミング法で妊娠ができないときは次の方法へとステップアップします。

タイミング法のメリット

一番のメリットは自然な妊娠に限りなく近い治療法のためご夫婦の負担が軽いことです。下記の条件がそろえば誰でも受けられる気軽さも大きな利点です。

  1. ・排卵があること
  2. ・子宮や膣が存在していること
  3. ・卵管が少なくとも片側は通っていること
  4. ・精子検査結果に問題がないこと

特に女性男性ともに35歳よりも前の場合は、治療費を安くする目的からタイミング法から始めるのがスタンダードな流れです。性交渉が少ないご夫婦であれば、妊娠する可能性が高くなるのも特長となります。因みに日本性科学会によると、「夫婦間で月に一度も性の営みをもたなかった場合」がセックスレスの定義だそうです。

タイミング法のデメリット

どんなに効率よく行ったとしても排卵は4週間に1回しかできません。そのため予測した日時に性交渉を行わないと妊娠する確率はグッと下がってしまいます。そうなるとご主人が多忙で自宅に戻るのが遅くなったり、単身赴任中や出張が多かったりすると難しくなります。そうしたケースだとタイミング法ではなく人工授精を選択した方が確率は高いかもしれません。

もう一つの難点は、通常の性交渉があるカップルの場合妊娠率上昇は低いことです。世の男女が性と正しく向き合える幸せな社会づくりに貢献することを目的とした『ジャパンセックスサーベイ2020』の調査結果によると日本の夫婦の2組に1組以上はセックスレスだそうなので、もしかしたら心配はいらないかもしれません。

後は、前述したようにご主人との協力が不可欠なのでお互いに納得いくまで話し合ってから治療を受けないと夫婦仲にも亀裂が入る可能性も考えられます。その際、お互いにパートナーの声に向き合いながらご自分の気持ちを話すようにしてください。

タイミング法にかかる費用

自由診療で高額なイメージのある不妊治療の中もタイミング法だけは保険が適用されるためかなり割安です。医院によって多少の幅はありますが、1回につき数千円程度です。そのため一番初めにタイミング法を行うクリニックが多くなります。

事前に行う検査も高額な費用はかかりません。血液検査(ホルモン採血)も保険適用されるため5,000円と低くなっています。AMH(抗ミュラー管ホルモン)は自由診療ですので6,000円前後、精液検査も保険適用外なので4,000円前後の費用が発生します。

タイミング法の妊娠確率

TVでは20%くらいといっていたそうですが、その数字が正確なのかは不明です。よく言われているのは、妊娠しやすい人がタイミングのあった性交をすると、16~18%位妊娠すると言われています。しかしながらその数字は不妊症でない人の場合です。不妊症でない人は、避妊しなければ半年で70%、1年で90%妊娠するほど確率は高くなります。ところが不妊症の人が何もせず妊娠する確率は、一周期で約2%と言われています。

女性の年齢などにもよりますが、3~6ヶ月タイミング療法を続けても妊娠しない場合はステップアップして別の治療法にうつるのが一般的な流れです。

タイミング法以外の不妊治療方法

夫婦
もしタイミング法で妊娠に至らなかった場合はステップアップして他の治療法を実施します。主な治療法として下記の4つです。

  1. ・ホルモン療法
  2. ・人工授精
  3. 体外受精
  4. ・顕微授精

これらの治療法はどれも自由診療のため費用は高額です。人工授精と体外受精は国からの助成金が受けられるので是非活用してください。

ホルモン療法

不妊検査で高温期での黄体ホルモンの分泌低下が明らかになれば黄体ホルモンの補充を経口剤や注射剤で行う治療法です。黄体ホルモンの分泌不全(黄体機能不全)は受精卵の内膜への着床障害、初期の流産の原因になるからです。

  1. ・頸管粘液不全
  2. ・黄体機能不全
  3. ・造精機能障害

主に上記の症状が出ていてホルモンバランスが乱れている場合にお薬を服用し、足りないホルモンを補います。排卵に必要なホルモンは、視床下部の下垂体からでるFSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体化ホルモン)の2つです。薬の服用するためどうしても副作用のリスクがつきまといます。医師の説明を聞いて、納得した上で治療を開始してください。

費用は薬によって変わりますが、黄体ホルモン剤が1本500円くらいです。高いものでも数千円で済むので負担は軽く済みます。

人工授精

受精の場である卵管膨大部に必要十分な精子を届けるため、精製選別した良好精子を子宮腔内に注入する治療法です。向いているのは下記に当てはまるご夫婦です。

  1. ・原因が不明で不妊期間が2年以上あるご夫婦の場合
  2. ・不妊検査により男性因子の存在が明らかになった場合
  3. ・妻が40歳以上である場合

治療は、月経周期や過去の排卵の様子と超音波検査で卵胞の成長をチェックして排卵日の予測をします。卵胞の大きさ、子宮頸管粘液の性状など排卵するための条件が整ってきたら、ホルモン検査(E2,LH)を行い、合的に判断して排卵日を推定して人工授精日が決まります。当日は、精子を持参するか院内に採取をしてから精製ををした後に受精をします。後は妊娠するのを待つばかりです。リスクとしては

  1. 卵巣過剰刺激症候群OHSS
  2. ・出血
  3. ・感染
  4. ・多胎妊娠

以上の考えられます。妊娠5週に子宮内に胎嚢が確認されれば臨床妊娠と呼ばれ、6~7週目に心音が確認されたら妊娠成立です。費用は自由診療のため高額です。医院にもよりますが、費用の相場は1回あたり1~2万円です。トータルになるとWebメディア「妊活ボイス」が2017年に実施した「『妊活・不妊治療』に関するインターネット調査」によると人工受精・体外受精・顕微受精のいずれかの経験者に限った場合は約134万円です。ただ、人工授精は国からの助成金の対象に入っているため申請しておけば後から戻ってきますのでご活用ください。

体外受精

治療法は、体外に女性の卵子を取り出し、パートナーの精子と一緒にして受精させ、できた受精卵を子宮に戻して着床を促すやり方です。。卵管性不妊(卵管の通過障害、ピックアップ障害が疑われる場合)、受精障害(卵子の問題、精子の問題)、男性不妊、自然性交や人工授精で妊娠が成立しなかった場合、その他、原因不明不妊、高齢、子宮内膜症、重症排卵障害、多のう胞性卵巣(PCO)の方が向いていると言われています。

流れは排卵誘発剤を飲んで排卵をコントロールしながら、多くの卵子を十分に成熟させて採卵させていきます。成熟した卵子を排卵日の直前に体外に取り出し、同じ日に精子も採取して受精の準備を整えます。採卵した卵子を培養液の中で確認し、採精した精子は運動性の高い精子のみを取り出し、卵子と精子を一緒にして受精させます。その後、専用の培養液で培養をし、胚移植をしてから着床率を高めるために黄体補充療法を実施します。二週間後に尿判定で妊娠していれば「おめでた」です。

リスクは人工授精と同様、出血や感染などが考えられます。費用もやはり高額で先述した「『妊活・不妊治療』に関するインターネット調査」では高度不妊治療(体外受精・顕微受精)の経験者に限ると、193万円という結果が出ています。

顕微授精

顕微授精は、体外受精がうまくいかない場合や、精子の数が非常に少ない重症の男性不妊症が発覚した場合に検討される方法です。精子の量的不足(精子数が少ない)を補うことはできますが、精子の質的低下(DNA損傷を含む精子機能の異常)を克服することはできません。そのため精子の状態が悪い方には不向きの治療です。

流れとしては卵子を採取し、精子の選別を行います。その後、精子を卵子に注入し胚を培養する専用の培養液に入れた後、温度、酸素濃度、二酸化炭素濃度、窒素濃度が厳密に管理されているインキュベーター(培養庫)内で2日から6日間培養します。どの胚を胚移植に使用するかを決定した後、胚移植専用のカテーテルで胚を子宮腔にそっと戻して、子宮内膜に着床させます。後は、妊娠しているかどうか判断するだけです。

治療のリスクとして卵巣刺激による卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が発生する恐れ、精子の状態によっては妊娠が困難なケースが考えられます。費用も負担は大きく体外受精と同じくらいかかるとみて間違いありません。国からの助成金を申請しておきましょう

不妊治療を開始するタイミング

不妊治療を始めるタイミングは年齢によって差があります。35歳以上であれば半年、それよりも若いご夫婦でだと1年を目安にしてください。40歳以上だと3カ月くらいでご検討された方がいいでしょう。なぜなら35歳を超えてくると卵子や精子は年齢による劣化や数が少なくなってしまうからです。

日本生殖器学会が「女性の年齢による妊孕力の変化」を調査によると出産数は30歳から徐々に減少し、35歳を過ぎるとその傾向は顕著になり、40歳を過ぎると急速に減少する結果が出ています。平均寿命が伸びてもあまり変化はありません。具体的には、不妊の頻度は25歳~29歳では8.9%、30~34歳では14.6%、35~39歳21.9%、40~44歳では28.9%と報告されており、30歳を過ぎると自然な妊娠をしにくくなっているのが現状です。

しかも不妊に悩んでいる人の割合は25〜29歳で8.9%、30〜34歳で14.6%、35〜39歳で21.9%、40〜44歳で28.9%と年代別・不妊症患者の割合の推移と一致しています。

ただし、女性に子宮内膜症や子宮筋腫、極端な月経不順や月経痛、月経量の異常などがある場合は、1年を待たずに受診したほうがいいでしょう。

まとめ

説明を受けた後笑顔の患者さん
今回は一番負担の少ない方法であるタイミング法を中心に不妊治療の種類や始めるタイミングについて紹介しました。現代は、晩婚化が進んでいて30歳過ぎて初婚というのも珍しくありません。不妊治療を受けて生まれてくる子どもの割合も増えてきています

今では、子どもが欲しいならば不妊治療を検討するのが当然といった流れになっています。

ただ、何もわからずに闇雲に調べてもますますわからなくなってしまい混乱するのはご夫婦に取って喜ばしいことではありません。正しい知識を知ってから検査を受けることでより妊活についてお互いの理解が深まると思います。

これからもご夫婦二人の妊活や出産への不安が和らぐために正しい知識と情報を提供していきますので是非ご覧ください。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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