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不妊治療の助成金制度一覧|貰える条件や申請のタイミング

現在、不妊治療を受ける夫婦が増えてきています。2003年の段階で、推定46万6,900人ほどだといわれていましたが、2017年には56,617人が生殖補助医療(卵子を採取する「採卵」、体外での卵子と精子の「体外受精」や「顕微授精」、受精卵を子宮内に移植する胚移植などを含む医療技術の総称)で生まれてきています。これは全出生児(約94万人)の6%にあたり、約17人に1人の割合です。

今や子どもが欲しくて不妊治療を受けるのが珍しくない時代になってきました。ところが、治療を受けるネックの一つが高額な費用です。保険が適用されないため負担が大きくなってしまいます。

しかし、近年では国や地方自治体で不妊治療の助成金を出していて、条件がクリアできれば治療後にもらえます。今回は、子どもが欲しいご夫婦の悩みを一つでも減らせるよう不妊治療の助成金について詳しく紹介をしていますので最後までご覧いただき、不妊治療を受けるときにご活用ください。

国からもらえる助成金

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不妊治療は自由診療のため何かとお金がかかりがちです。妊活にかかった費用は平均で134万円(WEBサイト「妊活ボイス」調べ)もかかると知れば、二の足を踏むのも当然です。しかしながら現在、国から不妊に悩む夫婦のために助成金を給付する制度設けられています。先述したように不妊治療の高額な費用を一部負担して一人でも多くの子どもを産んで育てて欲しいという考えからです。

補助金が給付されるには条件がありますが、申請をしないともらえません。絶対にもらっておいたほうがいい補助金ですので、最後まで記事をご覧いただいてから補助金の申請をして費用面の負担を軽くしてください。

もらえる条件

国からもらえる不妊治療の助成金には条件があります。厚生労働省のHPに記載されていますので転載をしますと

  • (1)特定不妊治療以外の治療法によっては妊娠の見込みがないか、又は極めて少ないと医師に診断された法律上の婚姻をしている夫婦
  • (2)治療期間の初日における妻の年齢が43歳未満である夫婦

●外部リンク:不妊に悩む夫婦への支援について(厚生労働省)

以上の二つが条件です。助成される費用は1回につき15万円まで(初回のみ30万円)です。但し、凍結胚移植(採卵を伴わないもの)等については7.5万円となります。
また、費用が補助される治療は下記の二つです。

  1. ・体外受精
  2. ・顕微授精

タイミング法、ホルモン療法、人工授精では補助金の対象になりませんのでご注意ください。
その他の条件としては初めて申請した夫婦の初回治療を受けるときの妻の年齢によって変わってきます。

  1. ・39才までは通算6回
  2. ・40才以上は通算3回
  3. ・43才以上はもらえません

上に掲載したように三つの条件があります。所得制限もあり、夫婦二人の所得が730万円までです。他にも自治体によっては、卵子や精子、胚の第三者提供、代理母、借り腹での不妊治療を除いているところや、市税の滞納をしていないことを条件にしているところもありますのであらかじめご確認の上、申請をしてください。

申請するタイミング

助成は1回の治療ごとに行われ、治療終了後に申請する自治体が多いです。申請期限は受け付ける自治体によって異なりますので、お住まいの自治体で必ず確認してください。「1回の治療」が終了した日が属する年度内が一番申請しやすいタイミングとなります。

そのため不妊治療を終了した月が4月から12月の間なら翌年の3月31日にまで、1月から3月の間なら同じ年の3月31日までです。申請期限を過ぎると補助金の対象にならなくなるので忘れずに申請しましょう。

申請方法

不妊治療の助成金を受け付けしてくれるのはお住まいの自治体となります。期限内に役所へ申請書と必要な書類を提出しないといけません。必要書類は自治体によって変わってきますが、東京都の場合だと

  1. 1.特定不妊治療費助成申請書(夫婦が記入)
  2. 2.特定不妊治療費助成事業受信等申請書(指定医療機関が記入)
  3. 3.住民票
  4. 4.戸籍謄本
  5. 5.夫婦それぞれの前年度の所得を証明する書類
  6. 6.指定医療機関発行の領収書のコピー(保険適用外診療分)
  7. 7.精巣内精子生検採取法等受診等証明書(医療機関が記入、※夫が手術を受けた場合)
  8. 8.7を行った医療機関発行の領収書のコピー(保険適用外診療分)

以上の8点が必要です。不妊治療が終了したらお住まいの自治体HPから申請書をダウンロードして必要事項を記入します。申請の必要な書類を役所から取り寄せをした後、担当部署に書類を提出すれば審査結果を待つだけです。自治体によって異なりますが、審査結果が届くまで3~4ヶ月ほどかかります。助成金がもらえるのは審査結果からおおよそ1ヶ月後です。

助成金制度の変更点

実は厚生労働省から不妊治療の助成金の拡充策が発表されています。2021年1月以降に終了した治療が対象です。

年齢制限は今まで通りですが、かなり条件が緩和されていますので下記にリストとして掲載しておきます。

  1. ・所得制限:730万円→撤廃
  2. ・助成金額:15万円→30万円
  3. ・助成回数:最大6回→一子につき6回まで

もし助成金をすでにもらったご夫婦にとっては新しいチャンスといえるかもしれません。

自治体からもらえる助成金

役所
自治体によっては国からの助成に加えて独自の補助金で上乗せをしてくれるところもあります。そうした独自の上乗せをしている補助金を紹介しますので対象地域にお住まいの方は是非忘れずに申請しておきましょう。

  1. ・東京都
  2. ・埼玉県
  3. ・神奈川県藤沢市

上記以外の市町村が、独自で助成金を設けている場合もありますのでお住まいの自治体に問い合わせをしてみましょう。もしあるなら必ず申し込みをしてください。助成金は申請をしないと審査してもらえません

東京都

東京都は国からの助成金に上乗せする形で不妊治療のサポートをしています。内容は二回目の新鮮胚移植(採卵後すぐに移植を行う体外受精)に5万円プラス。凍結胚移植(受精卵を凍結して翌周期以降に体外受精をする)だと10万円プラスになります。
条件は以下の通りです。事実婚も対象になるのでかなりの優遇措置といえます。

  1. ・奥さんの年齢が40歳未満
  2. ・夫婦二人の所得が年間905万円未満

条件に当てはまるご夫婦は東京都にお問い合わせしてみてください。

●外部リンク:不妊検査等助成事業の概要(東京都)

埼玉県

埼玉県も東京都と同じく国からの助成金に上乗せする形で補助金を出しています。不妊検査、35歳未満の早期不妊治療に最大10万円が補助されます。妊娠しても流産や死産を繰り返す「不育症」にも最大2万円を給付していますので、もしお若いご夫婦で不妊治療を検討しているなら是非活用してください。

●外部リンク:ウェルカムベイビープロジェクト関連事業(埼玉県)

神奈川県藤沢市

助成金は都道府県単位の自治他だけではなく市町村単位でも行っています。その中の一つが神奈川県藤沢市です。藤沢市は国からの助成金の条件である730万円の所得制限をオーバーしてしまったご夫婦に対して補助金を出しています。
その内容は1回の治療につき最大10万円で3回まで助成します。年度の制限もありません。但し、以下の条件がありますのでご注意ください

  1. ・法律上の婚姻をしている夫婦であること
  2. ・申請時点で夫婦が1年以上前から藤沢市に住所を有し、かつ引き続き申請日現在も在住していること
  3. ・市税を完納していること(分納中は完納とみなしません)
  4. ・所得制限を超過していることを除けば、神奈川県の助成を受けられる対象であること

事実婚や地方税を滞納があると助成金の審査が通りませんのでお気を付けください。

●外部リンク:藤沢市特定不妊治療費助成事業

国と自治体の助成金は両方もらえる?

自治体独自でやっている助成金は、国からの助成金に上乗せできる場合とできない場合があるので一概には言えません。藤沢市のように国からの助成金の条件に当てはまらないご夫婦向けのもありますし、埼玉県のように若い夫婦を対象にした助成金もあります。もし両方の助成金を受け取れるのであれば受け取ってしまったほうがいいでしょう。

もし、治療が長引いてしまうと助成金だけでは賄えない場合も出てくるかもしれません。そうしたときは医療費控除として確定申告すれば税金の一部が還付されることがあります。ただ、確定申告をご自分で行う必要があるので税務署に確認してみてください。

まとめ

家族
不妊治療の助成金についてまとめて紹介をしてきました。不妊治療は自由診療のため費用が高額になってしまいがちです。費用面の負担が大きくて治療を止めてしまったり、子どもを諦めてしまったりするご夫婦に国が少子高齢化対策の一環として始めました。

国内では少子高齢化は大きな問題となっており、国も対策の一環として取り組んでいます。もしこの記事を読んでいる方が不妊治療を受けようか迷っている場合は、助成金を活用したシミュレーションをしてみましょう。そして不妊に悩むご夫婦が一組でも減ると幸いです。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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