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高位破水とは?尿漏れとの見分け方、原因や対処法、放置すると怖い理由を解説

高位破水とは、子宮口から離れた位置で卵膜が破れて起きる破水です。通常の破水は子宮口付近で起こり、羊水が一気に流出する点が特徴です。しかし、高位破水では羊水が少量しか流出しないため、尿漏れと見分けがつかないこともあります。

本記事では、高位破水とは何か、原因や通常の破水との違い、放置するリスクを解説します。

高位破水とは子宮口から離れた場所で卵膜が破れて起きる破水のこと

高位破水とは?原因や破水との違いを詳しく解説

破水とは、胎児を包む卵膜が破れて、羊水が膣から外に流出している状態です。陣痛があり子宮口が全開大の状態で起こるため、胎児が外に出やすく、お出産をスムーズに進める役割があります。

一方、高位破水とは子宮口から離れた場所で卵膜が破れ、少しずつ羊水が漏れ出る状態です。尿漏れと間違って放置してしまうケースもあるものの、母体・胎児双方に感染症などのリスクがあるため、適切な処置をしなければいけません。

高位破水の特徴

「破水」というと、羊水が一気に流出するイメージがありますが、高位破水は少量の羊水が流出する程度です。また、色も臭いもないケースが多くあります。高位破水の特徴をまとめると以下のとおりです。

  • ・おりものや尿漏れ程度の水分が流出する
  • ・色は透明か、あっても薄い乳白色や黄色程度
  • ・ニオイは無臭。生臭さや甘酸っぱいニオイを感じる人もいる
  • ・少量の流出を繰り返す

次に尿漏れやおりものとの違いを解説しますが、見分けがつかないときは放置せず、速やかにかかりつけの病院に相談しましょう。

尿漏れと高位破水の見分け方

妊娠中は子宮が大きくなり、膀胱を圧迫するため尿漏れを経験する妊婦さんは多くいます。高位破水と見分けるためにも、まずはアンモニア臭があるか確認しましょう。

また尿漏れの場合、咳やくしゃみで腹部に力が入ったとき、立ち上がったとき、笑ったときなどに起こりやすく、自覚のあるケースも多いでしょう。しかし、高位破水は膣から羊水が流出する状態のため、尿意のような自覚症状がない点も特徴です。

自分の意思で止められず、繰り返し流出するときは高位破水の可能性があります。

おりものと高位破水の見分け方

妊娠中はおりものの量も増えるため、高位破水と見分けづらいケースもあります。しかし、おりものの場合、少しネバネバしている、透明ではなく白っぽく黄色がかっている、ニオイは無臭、もしくは酸っぱいニオイがするなどが特徴です。

特に、粘り気の有無は、サラサラとした液状の高位破水とは異なります。とはいえ、見分けるのは困難なため、気になる際はかかりつけ医に連絡しましょう。

なお、おりものが以下の状態のときも、速やかに病院を受診しましょう。

  • ・おりものから腐敗臭がする
  • ・おりものの色が濃い黄色や緑色である

合わせて発熱などの症状があれば、感染症の恐れがあるためです。

高位破水の原因

妊娠中に体調不良になる女性(つわり・吐き気)

高位破水が起きる原因は複数あるものの、代表的ものは以下が挙げられます。

  • ・感染症
  • ・腹圧
  • ・性交渉
  • ・喫煙
  • ・多胎妊娠
  • ・高齢出産

それぞれ、詳しく解説します。

感染症

通常であれば、膣や子宮頸管が細菌の侵入を防ぐため、子宮や胎児が感染症に疾患する事態とはなりません。しかし、妊婦さんの体調の悪化など、何らかの理由により細菌が侵入すると、絨毛膜羊膜炎などを引き起こします。

炎症は子宮をもろくしたり収縮させたりするため、早産や高位破水の原因となります。また、性感染症への疾患も、高位破水の原因になる恐れがあります。

腹圧

お腹に力のかかる動きは、高位破水を含む破水の原因になる恐れがあります。妊娠中は、重い荷物を持ったり、転倒の危険がある場所を歩いたりしないようにしましょう。激しい咳も腹圧がかかるため、風邪をひいたらかかりつけ医に相談しましょう。

また、体勢でいえば、前かがみや腹部を下にして寝るなどもよくありません。

性行為

性行為は、細菌感染の恐れがある、腹部に圧力がかかる、以上2つの理由から高位破水につながる可能性があります。とはいえ、妊婦さんの体調が良好で医師から妊娠の異常を告げられていなければ問題ありません。

妊娠中の性行為はコンドームを着用して感染症を予防し、激しい動きは避けるようにしましょう。

喫煙

妊娠中の喫煙は、高位破水だけでなく、母体・胎児双方に深刻な影響を及ぼします。前置胎盤や流産・早産、胎児の奇形や低体重児、乳幼児突然死亡症候群など、多くの疾患に影響の可能性があると示唆されています。

なお、妊婦さん本人の喫煙だけでなく、受動喫煙もよくありません。喫煙者がいるなら、分煙または喫煙しましょう。

多胎妊娠

双子や三つ子など、多胎妊娠は母体への負担が増加するため、高位破水の可能性や早産のリスクが高まります。医療機関と連携するのはもちろん、支援制度なども確認してみましょう。

また、多胎妊娠の産前休業は出産予定日の14週間前から取得できます。制度内容を確認し必要であれば申請し、母体に負担がかからないようにしましょう。

高齢出産

高齢出産とは35歳以上の初産(婦)と定義されています。一般的に35歳以降の出産は高位破水や難産、流産の増加、胎児の発育への影響が増すとされています。

高齢出産に該当するときは、高位破水のリスクがある行為を控え、生活習慣や食生活を含め、健康的に過ごすよう心がけましょう。また、リスクが高い分、不安があればすぐに病院を受診するようにしましょう。

高位破水と破水の違い

出産直前の妊婦と心配する男性(吐き気)

前半でも少し説明しましたが、破水とは卵膜が破れて一気に羊水が流出することです。対して、高位破水は子宮口から遠い(高い)位置の卵膜がやぶれ、少しずつ羊水が流出する状態です。高位破水とその他の破水の違いを解説します。

完全破水と高位破水の違い

出産時に起こる破水は、子宮の内圧や、胎児の頭で押されることで卵膜が破れて起こります。子宮口が完全に開いてから破水すると、羊水が一気に流出するため、胎児を母体の外にスムーズに押し出す役割もあります。

このように、出産時の適切な破水は「適時破水」や「完全破水」「低位破水」といいます。

完全破水は卵膜が破れる位置が子宮口に近く一気に羊水が流出するのに対し、高位破水は子宮口から遠いため、羊水はわずかしか流出しない点が異なります。

早期破水と高位破水の違い

早期破水とは、陣痛はあるものの、子宮口がまだ全開大になっていない状態で起こる破水のことです。早期破水はどの程度子宮口が開いているかにより、扱いが異なります。

子宮口が5cm程度開いている場合は、通常通り分娩が進むケースが多いため、経過を観察しながら対応します。

子宮口の開き方が5cm未満であったり、分娩が順調に進まなかったりするときは、子宮収縮薬により陣痛を促し、分娩を進めることもあります。

早期破水と高位破水も羊水の流出量に違いがあります。

前期破水と高位破水の違い

前期破水とは、陣痛がまだ始まっておらず、子宮口も開いていない状態での破水のことです。早期破水よりも緊急性が高く、妊娠週や胎児の発育状況により対応が異なります。

妊娠37週以降の正期産の破水であれば、大抵の場合、数日以内に陣痛があり分娩に至ります。とはいえ、感染症の心配もあるため、早急に病院で適切な措置を行い、出産に備えます。

妊娠37週以前の破水は早期前期破水と呼ばれ、早産や流産などのリスクが高まります。速やかに病院へ連絡が必要です。入院して母子の経過観察を行う他、妊娠週や胎児の発育状況により、陣痛を誘発させる、感染症予防の治療を行うなど、対処方法は異なります。

前期破水も羊水が一気に流出するか否かが、高位破水との違いです。

高位破水を放置するリスク

破水が起きてショックを受けている妊娠中期の女性

羊水は、胎児を感染症や物理的刺激から守り、発育を助ける作用があります。高位破水は水分の漏れ出る量も少なく気が付きにくく、対処が遅れると胎児・母体ともに危険にさらすため注意が必要です。

感染症の疾患

高位破水により考えられるリスクが胎児感染や羊水感染などの細菌感染です。通常、羊水の中は無菌状態、または、胎児に有害な細菌が入らない環境と考えられています。

しかし、卵膜に傷ができ、そこから羊水が漏れ出ている状態では、いつ大腸菌などが入り込んでもおかしくありません。子宮内で感染が起これば発熱や下腹部痛など母体に影響があり、胎児にまで感染すれば、最悪の場合、機能不全に陥ることもあります。

発育の遅れ

羊水には胎児の正常な発育を促す作用があり、必要量より少ない状態を「羊水過少」といいます。羊水過少では、胎児が自由に胎位を変えられず、呼吸器や手足、皮膚、臀位などに異常が現れる恐れもあります。

なお、高位破水は妊娠初期や中期にも起こり、症状によっては自然に羊水の流出が停止することもあります。しかし、多くの場合流出は止まらず、進行に気がつかなければ羊水過少に発展するケースもあります。

流産や死産

高位破水により感染や羊水過少が起これば、最悪の場合、流産や死産に至る恐れがあります。

また、分娩時も羊水が少なければ、子宮収縮の圧力を均等に伝えることができず、へその緒を圧迫して胎児が低酸素状態になる恐れもあります。また、身動きが取れずにへその緒が絡まれば障害が残ったり、命にかかわったりするため大変危険です。

【まとめ】少量の水分が流出し続けるときは高位破水を疑おう

夫婦は病院の医師から説明を受けた

高位破水とは、子宮口から遠い部分で卵膜が破れて羊水が流出している状態です。高位破水が起きる原因は、感染症や腹圧などと考えられるものの、不明な点も多くあります。

そのため、尿漏れや水っぽいおりものが多いときは、高位破水を疑いましょう。高位破水を放置すると感染症や羊水過少など、胎児に多くのリスクがあるため、疑わしいときはすぐに病院に確認しましょう。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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