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妊娠糖尿病とは?リスクや治療方法をわかりやすく解説

妊娠中は、母体とお腹の中の赤ちゃんのどちらも健康であることが望ましいです。妊娠中だからこそ、気をつけなければいけない病気がいくつかあります。
なかでも妊娠糖尿病は、赤ちゃんに影響を及ぼす可能性があります。妊娠糖尿病になりやすい人や、なった場合のリスクについて理解を深めておくことが重要です。

本記事では、妊娠糖尿病について、また、ダウン症との関連性について解説していきます。

妊娠糖尿病とは?

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そもそも糖尿病とは、膵臓から出るインスリンというホルモンが十分に役目を果たせず、血液中のブドウ糖が増えてしまう病気です。
インスリンには血液中の糖分を一定値でおさえる役目がありますが、妊娠中、血液中の糖分をコントロールできなくなってしまう病気が妊娠糖尿病です。
血液中の糖分が高くなり過ぎてしまうと、さまざまな病気を引き起こす原因となります。

妊娠糖尿病は、3つのケースに分類されます。
もともと糖尿病だった人が妊娠した場合は「糖尿病合併妊娠」、妊娠中に初めて発症したものは「妊娠糖尿病」、妊娠する前から糖尿病で、かつ妊娠中に重度の糖尿病症状が見られる場合は「妊娠中の明らかな糖尿病」となります。
糖尿病は生活習慣病の1つされているため、妊娠糖尿病と聞いて不安に感じられる方もいるかもしれません。しかし実際のところ、妊娠糖尿病は妊娠中に見られる病気のなかでは罹患率が高い部類に入ります。

妊婦全体で見てみると、そのうちの12%が検査を受けており、これは全体のおよそ8分の1にあたります。
妊娠糖尿病は、そこまで珍しい病気ではありません。

参照:一般社団法人 日本内分泌学会「妊娠糖尿病」

妊娠糖尿病になりやすい人は?

では、どのような人が妊娠糖尿病になりやすいのでしょうか。具体例を確認していきましょう。

妊娠前の場合

・家族のなかで糖尿病にかかった人がいる
・肥満気味である(BMIが25を超えている)
・35歳以上である

前回の妊娠時

・産まれた赤ちゃんの体重が4,000g以上だった
流産や早産を繰り返した
・赤ちゃんが胎内あるいは産後すぐに亡くなっている
奇形を持った赤ちゃんが産まれた

今回の妊娠で見られた変化

・体重の増加が顕著
・赤ちゃんが大きい
・羊水が多い
・妊娠中、高血圧になった
・尿検査で血糖値の高さが際立った

高齢出産だと、血管が弱くなり始めることで身体への負担が大きくなる傾向にあります。血管が弱くなると、妊娠糖尿病あるいは妊娠高血圧症候群といった症状に悩まされる可能性が高いです。
このほか、日頃から食べ過ぎであったり運動不足が積み重なったりすると生活習慣病を引き起こしやすいため、妊娠糖尿病に注意しなければいけません。

参照:女性の健康推進室 ヘルスケアラボ「妊娠糖尿病」

w-health.jp/fetation/gestational_diabetes/

妊娠糖尿病によるリスク

妊娠糖尿病は、妊娠中のホルモンの変化に原因があると考えられており、血糖値をコントロールすることさえできれば、合併症を引き起こすことなく通常通り出産できるとされています。産後についても、血糖値は正常になるケースが多いです。
問題は、血糖値のコントロールができなかった場合です。血糖値が望ましくない数値となっていると、さまざまな合併症に繋がる恐れがあります。

巨大児

出生児の体重が4,000g以上の赤ちゃんを、巨大児といいます。巨大児は、出産の際に産道でつっかかってしまい肩甲難産となるかもしれません。肩甲難産は赤ちゃんの腕の麻痺や胎児機能不全など、分娩障害を引き起こす恐れがあります。

妊娠糖尿病により血液中の糖分が増えていると、赤ちゃんにはその分多くの栄養素が供給されます。
それに対し、血糖値を下げるために赤ちゃんはインスリンを分泌します。インスリンは成長因子ではありますが、必要以上に分泌されると臓器が肥大化したり、脂肪が増加したりします。

新生児低血糖症

赤ちゃんがインスリンを分泌し過ぎてしまったために、産まれてからすぐに低血糖となるケースがあります。インスリンは分泌し続けているものの、出産の際に母体からの栄養素の供給がなくなるためです。

大人であれば、低血糖になった際に肝臓グリコーゲンによって糖質を供給してくれます。しかし、産まれたばかりの赤ちゃんの肝臓にはグリコーゲンがあまり蓄えられていません。赤ちゃんの低血糖は、神経発達などにおいて後遺症が残る場合があります。

先天奇形

妊娠糖尿病は、先天奇形にも関係があります。妊娠糖尿病による合併症のなかでもっとも重篤なものとされています。母体が糖尿病を患っている状態で産まれた赤ちゃんは、患っていない場合と比較して、奇形となる確率が2〜3倍高いです。

赤ちゃんの器官は、妊娠7週目から作られはじめます。この妊娠7週目を迎えるまでに血糖値を正常にできるかどうかが重要です。
妊娠7週目まで血糖値が高いままだと、奇形となる可能性が高まります。早い段階で血糖値の変化に気づき、適切に対応することが大切です。

糖尿病ケトアシドーシス

糖尿病によって昏睡してしまう母体側に引き起こる重篤な合併症です。妊娠糖尿病の患者のうち、1.2%が発症しています。
早期に気づいて適切な治療を施さないと、死亡率は10%にまで及びます。母体側が発症すると、胎児は22〜35%の頻度で死亡するため注意しなければいけません。

糖尿病網膜症

糖尿病は、視力にも影響を与えるかもしれません。糖尿症網膜症は、糖尿病によって目の中の網膜と呼ばれる組織が影響を受けて、視力が下がってしまう病気です。完全に治すことはできないため、糖尿病網膜症の治療は、症状の悪化を防ぐために行われます。

妊娠糖尿病の治療方法

糖尿病を治すには食事と運動が重要となりますが、妊娠中に過度な運動は禁物です。そのため、食事療法がメインとなります。血糖値を正常な状態にするために食事を見直すことを心がけましょう。
しかし、それでも改善が見られなければインスリンを投与して血糖値の低下を促します。食事療法と薬物療法について、それぞれ見ていきましょう。

食事療法

摂取カロリーを制限して体重をコントロールするのが、妊娠糖尿病における食事療法の基本です。栄養バランスを意識して、できるだけ規則正しい食事を心がけましょう。極端に食事を制限してしまうのは、望ましくありません。

赤ちゃんは母体から栄養素をもらうため、少なくなり過ぎてもよくないのです。高タンパクで低カロリーのものが理想的でしょう。意識するポイントとして、以下の2点が挙げられます。

・炭水化物を減らす:ご飯やパン、麺
・ビタミンやミネラル、食物繊維を増やす:野菜やきのこ、海藻

妊娠中の食事量は、どの妊婦さんについても同じ量が勧められるわけではありません。妊婦さんの標準体重によって、適切なエネルギー量が異なってきます。
摂るべき適切なエネルギー量は以下の方式で求めます。

標準体重×30カロリー+付加量(以下参照)=適切なエネルギー量

妊娠時期ごとの必要なエネルギー量は以下の通りです。(*1)
なお、肥満の場合は付加量が0となります。肥満かどうかについては、BMIによって判断できます。BMIは、妊娠前の体重を身長の2乗した数値で割り算することで求められます。BMIが18.5〜24.9の間であれば正常、25以上を肥満、18.5未満が痩せ気味です。

(*1)厚生労働省「ー『主食』を中心に、エネルギーをしっかりとー」

時期 妊娠16週未満 妊娠16-18週未満 妊娠28週以降 授乳期
付加量 50kcal 250kcal 500kcal 450kcal

薬物療法

血糖値の改善が見られないのであれば、インスリンを用いた薬物療法を行います。妊娠中は、経口血糖降下薬を用いることができないため、インスリン注射によって治療します。インスリンを用いた治療で気をつけたいのが低血糖発作です。

インスリン注射のあと、しっかりと食事を摂っていないと、血糖値が下がり過ぎてしまいます。これにより、発作が引き起こされるのです。冷や汗や手足の震え、心拍数の高まりといった症状が見られた際には、速やかに糖分を摂取しましょう。

通常のインスリン注射で低血糖発作を引き起こす例は極めて稀だとされています。注射をしてから速やかに効果が見られる超速効型インスリンもあります。注射する際は、その後速やかに食事を摂れるようにしましょう。

妊娠糖尿病に対する薬物療法は研究が進められており、現在では安全性がほぼ確立しています。
しかし、赤ちゃんのことを思うと薬物療法はできるだけ行いたくないと考える妊婦さんもいます。母体の血糖値が高い状態が続くことは、結果として母体にとって、また赤ちゃんにとっても深刻なリスクが伴うので、病院で医者と相談して、治療を進めましょう。

サプリメント

妊娠中は、赤ちゃんのためにも適度かつ栄養バランスのとれた食事を摂ることが理想的です。しかし、妊娠によって体質が変化してしまい、思ったように食事が摂れないこともあるでしょう。そこでおすすめなのがサプリメントです。
できれば摂取したいものの、なかなか積極的には難しいDHAやEPAが効率よく摂取できます。

DHAやEPAは必須脂肪酸と呼ばれ、体内では合成できないため、食事などから摂取することが必要です。
DHA(ドコサヘキサエン酸)は、人間の脳や目の網膜の脂質成分で、脳に直接入って栄養素として機能できる物質です。一方のEPA(エイコサペンタエン酸)は、血液をサラサラにする効果や中性脂肪低下作用がDHAよりも高く、脳内にはほとんど存在しません。

どちらも赤ちゃんの脳の発達に良い影響をあたえる栄養素として重要な役割を持ちますが、DHAの場合、目安の1.6gに対して実際の妊婦さんの摂取量の平均は1.27g。330mg下回っています。
不足している330mgのDHAを摂取するには、サンマ1匹分や、ブリ1切れが相応しますが、悪阻のひどい妊婦さんには魚の匂いがしんどかったり、おなかが圧迫されて思うように食事が摂取できなかったりします。

こういった場合におすすめしたいのがサプリメントです。
魚を食べるとどうしても一緒に摂取してしまう水銀やダイオキシンなどの有害物質の摂取を避けることが可能で、効率よく栄養を補うことができます。
ただし、サプリメントには複数の成分が高濃度で添加されており、成分同士の相互作用や過剰摂取のリスクもあるため、医師と相談しながら摂取していくとよいでしょう。
参照 妊婦・授乳期におけるDHAの重要性について|エレビットの葉酸サプリは根拠がある葉酸800μg+|バイエル薬品

ダウン症と妊娠糖尿病

赤ちゃんを妊娠中のカップルにとっての心配事には、わが子が先天性の疾患を持って生まれるかもしれないというものも挙げられます。
妊娠中の体調管理と先天性疾患との関わりを気にしてしまう妊婦さんも少なくないでしょう。染色体異常による先天性疾患と、妊娠糖尿病とに関わりはあるのでしょうか。以下で解説していきます。

ダウン症とは

ダウン症とは、妊娠中に胎児に発症する先天的な染色体異常のことです。染色体異常の中では最も発症率が高く(700人に1人の割合)、偶然的に発症することが特徴になります。そのため発症を予測が難しく、妊婦健診や出生前検査で発覚することがほとんどです。

妊娠中にダウン症が発覚すると両親は自責の念にかられることがあります。しかし、発症は偶発的であるため、ご自身のことを責めないでください。また、ダウン症の程度は重症から極わずかに症状が見られる軽症まで様々であり、実際に出産や育児を進めていくまで程度は分かりません。

近年、医療の進歩や社会的な理解が進んだことでダウン症の寿命は延びてきています。徐々にですが、ダウン症の児やその家族が生活しやすい社会作りが進んでいると言えるでしょう。

ダウン症の発生原因

ダウン症の原因は、21番目の染色体が一本多いことです。通常、21番目の染色体は2本ですがダウン症の場合は3本(トリソミー)であることが分かっています。胎児が成長していく中、何らかが原因で染色体に異常が生じることで偶然的に発症すると言われています。
つまり、妊娠する以上、どのカップルでもダウン症の胎児が生まれる可能性はあるということです。

また、妊娠糖尿病はダウン症を誘発する直接の原因にはなり得ず、あくまでダウン症は染色体異常によって生じる先天性疾患です。
ただし、年齢とともに卵子精子の劣化や活動性の低下が起こることで、染色体異常が誘発されます。特に35歳以降はダウン症の妊娠率が極端に高まります。
妊娠 糖尿病 ダウン症2
出典:niptjapan.com/prenatal-diagnosis/ NIPT Japan 新型出生前診断より画像引用

このようにダウン症の妊娠は偶然である一方で、年齢による発症リスクが高まることも知っておきましょう。

出生前診断はNIPTで

生まれてくる赤ちゃんに先天性の疾患がないか事前に調べる出生前診断では、ダウン症をはじめとした染色体異常による先天性の疾患の有無を検査することが可能です。
なかでもNIPTは非確定検査であるにも拘わらず、99%という高い精度での検査が可能です。

NIPTとは?

NIPT(新型出生前診断)とは、お母さんの採血結果から胎児のDNAを分析し、染色体・遺伝子異常を特定する検査のことです。採血だけで検査できるうえ、検査から10 日程度で結果が分かります。さらに検査精度も99%と非常に高いことから、受検を希望する妊婦さんが増えています。

ただし、NIPTは非確定的診断です。陽性反応だからといって、ダウン症が確定したわけではないことを理解しておきましょう。
結果を確定させたい場合、確定的検査と呼ばれる絨毛・羊水検査を受ける必要があります。NIPT新型出生前診断の費用は施設により異なりますが、およそ10〜20万円前後であり、検査時間は採血のみなので10分程度です。
※参考資料:日本産科婦人科学会/「母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)」指針改訂についての経緯・現状について
www.jsog.or.jp/news/pdf/shussyouzenkenkaikaitei_20110206.pdf

NIPTを受けるミネルバクリニックで

東京の「ミネルバクリニック」は臨床遺伝専門医が在籍するNIPT実施施設です。たくさんの妊婦さんの悩みや不安と真摯に向き合い、笑顔になれる出産に導いてきました。

ミネルバクリニックでは、妊娠9週から(ご希望の方は妊娠6週から)受けられる赤ちゃんの健康診断「NIPT」を業界最新の技術と業界随一の対象疾患の広さで行っております。
遺伝のエキスパートである臨床遺伝専門医が出生前診断を提供しておりますので、安心してご相談ください。

まとめ:ダウン症と妊娠糖尿病に関連はない!

ダウン症は染色体異常によって引き起こされる先天性の疾患であり、妊娠糖尿病との直接の関連はありません。
ですが、妊娠糖尿病によるリスクは、母体と赤ちゃんどちらにも及びます。母子共に健康な身体であるためには、妊娠糖尿病のリスクに備えて適切な対応をとることがポイントです。
あえて食事量を極端に減らしていると別の問題が生じますので、適切な食事量を心がけましょう。また、ダウン症は年齢とともにそのリスクがあがることが報告されています。生まれてくる赤ちゃんに向き合うためにも、出生前診断を受けることを検討してみてはいかがでしょうか。

この記事の著者:仲田洋美(医師)

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ミネルバクリニックでは、以下のNIPT検査を提供しています。少子化の時代、より健康なお子さんを持ちたいという思いが高まるのは当然のことと考えています。そのため、当院では世界の先進的特許技術に支えられた高精度な検査を提供してくれる検査会社を遺伝専門医の目で選りすぐりご提供しています。

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プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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