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【医師執筆】胎動でダウン症候群がわかる?胎動についてと妊娠中に行える検査を紹介

妊娠20週前後になると、多くの妊婦さんは胎動によって赤ちゃんの存在を感じられるようになってきます。

胎動にはさまざまな噂が飛び交っていて、そのなかには「胎動が弱いとダウン症候群の可能性がある」という、ママを不安にさせる内容もあります。

このような噂を耳にしたことがある方は「20週を過ぎても胎動が弱いからこの子はダウン症…?」と生まれてくる赤ちゃんの健康状態が気になっていることでしょう。

実際には、胎動が弱いとダウン症候群であるという医学的な根拠はなく、赤ちゃんの染色体異常を調べるには、専門の施設で検査を受ける必要があります。

この記事では、胎動とダウン症候群の関係と、ダウン症候群を見分ける検査方法についてご紹介します。

胎動とは?ダウン症候群との関係

妊娠中の♪夫婦

胎動とは、赤ちゃんがママのお腹の中で動くことにより感じられる動きで、妊娠15週~20週頃が一番赤ちゃんが活発に動く時期とされています。

冒頭で、胎動が弱いとダウン症候群だという医学的根拠はないとお伝えしましたが、そもそもなぜそのような噂が出るようになったのでしょうか。

まずは、胎動についてや、胎動とダウン症候群との関係をご紹介します。

胎動はなぜ起こる?

胎動とは、赤ちゃんが頭や手足を動かした際に子宮壁にぶつかったときの動きで、一般的には妊娠18週~20週頃に胎動を感じられます。

実は、赤ちゃんの筋肉は妊娠8週頃にはすでに発達しているので、この頃から自発的に動いてはいるものの、まだまだ体が小さく子宮内が広いので、赤ちゃんが子宮壁にぶつかることがなく、妊娠初期は胎動を感じません。

妊娠30週前後になると、ママのお腹の皮膚が薄くなってくるので、胎動は外からでも感じられます。

家族と一緒に胎動を感じられる瞬間があると、これから生まれてくる赤ちゃんがよりいっそう愛おしくなり、親としての実感が生まれる瞬間でもあります。

胎動の種類

胎動には以下のような種類があります。

  • お腹の中でぐるぐる回転する
  • 手足をお腹の中から押すキックやパンチ
  • 痙攣のようなしゃっくり
  • ピクッと震えるモロー反射

妊娠中期頃、お腹の中の赤ちゃんは羊水に浮かびながらぐるぐる回転して、全身運動をしています。病院へ検診に行くたびに赤ちゃんの向きが違っていたり、運が良ければエコーの際にぐるぐる動く姿を確認できたりします。

さらに赤ちゃんの骨格がしっかりしてくると、発達した手足を曲げたり伸ばしたり、強くキックやパンチをすることもあります。

赤ちゃんの強いキックやパンチは、お腹の外からでも確認でき「足の形がみえた!」ということもあるほどです。

また、痙攣しているような動きは赤ちゃんのしゃっくりやびっくりしたときの動作、モロー反射だと言われています。

ダウン症候群の赤ちゃんと胎動について

ダウン症候群の赤ちゃんの胎動が弱いといわれるようになったのは、ダウン症候群の特徴にあると考えられています。

ダウン症候群には、筋力や運動能力が弱い、知的な発達が遅れるなどの特徴があります。

胎動が少ないのは筋力が弱いから、筋力が弱いのはダウン症候群だから、という誤解が生まれ、その噂が一人歩きしている状態です。

そのため、胎動が弱いからダウン症候群の心配があるとも、胎動が強いからダウン症候群ではないとも言えません。

実際にダウン症候群の赤ちゃんかどうかは、後述する検査を受けなければ見極めることは難しく、胎動だけでは何もわからないというのが事実です。

胎動が弱い原因

胎動が弱いと「赤ちゃんは健康的に育っているのかな…?」と心配になってしまいますが、妊婦検診で異常が発見されていなければ、安心して過ごすようにしましょう。

胎動が弱い方には以下のような原因があります。

  • お腹に脂肪が多い
  • 胎動に気がついていない
  • 羊水の量が多い

ママが肥満気味でお腹に脂肪が多くついていると、胎動を感じにくくなることがあります。胎動を感じやすくするために、安静にしてお腹の動きに集中する時間を作ってみましょう。

また、胎動に敏感な方もいれば、鈍感な方もいます。周りの妊婦さんと比べて胎動を感じにくいからといって、心配しすぎないようにしましょう。

子宮の中の羊水の量には個人差があるので、医師からの指摘がない範囲であれば問題ないのですが、羊水の量が多めだと胎動に気がつきにくいケースもあります。

普段から胎動をあまり感じないという方は、このような原因が考えられ、妊婦検診で異常が認められなければ過度に心配する必要はありませんが「普段からよく動いていた赤ちゃんが急にパタッと動かなくなって心配」という方は、躊躇せずにかかりつけの病院へ連絡するようにしましょう。

妊娠中にダウン症候群を見分ける検査方法

血液検査

胎動の強弱はダウン症候群に一切関係がないので、胎動では赤ちゃんに染色体異常があるかを見極めることはできません。

赤ちゃんの染色体異常を調べたいと考えている方は、出生前診断と呼ばれる検査を受ける必要があります。

ここからは、いくつか種類がある出生前診断についてご紹介します。

新型出生前診断(NIPT)

新型出生前診断は、2013年から導入された検査方法で、NIPTとも呼ばれています。

ママの血液を採取することで、血液中に含まれている胎児由来のDNAのかけらを調べ、染色体異常を判断するというものです。

NIPTは一般的に妊娠10週から受けられる検査ですが、施設によっては妊娠9週から受けられます。

また、認可施設で受けるには以下のような制限があります。

  • 妊婦さんの年齢が35歳以上
  • 以前の妊娠で染色体異常があった
  • 妊婦さん、またはパートナーが染色体転座保因者
  • 超音波検査や母体血清マーカー検査で胎児の染色体異常の可能性を指摘されている

このように認可施設でNIPTを受ける際は制限がありますが、無認可施設であれば年齢制限なく検査を実施している場合もあります。

妊婦さんの年齢に関係なく染色体異常をもった赤ちゃんは生まれているので、35歳未満の妊婦さんで検査を受けたいと考えている方はとくに、年齢制限のない無認可施設での受検を検討しましょう。

NIPTは非確定的検査なので、NIPTの結果が陽性であった場合は確定的検査を受ける必要がありますが、NIPTは感度99%と非常に高い確率で染色体異常の可能性を検出できます。

NIPTは早い段階で検査を受けられるので、確定的検査までの間に十分な時間を持ち、気持ちの整理ができるのが特徴です。

母体血清マーカー検査

母体血清マーカー検査は、妊婦さんの血液を採取し、血液のなかに含まれる「AFP、非抱合型E3、hCGインヒビンA」という4つの成分を測定することで、染色体異常の可能性を調べる検査で、クアトロテストとも呼ばれています。

4つの成分の詳細は以下です。

  • AFP…赤ちゃんから分泌されるホルモン
  • 非抱合型E3…赤ちゃんの副腎皮質ホルモン、肝臓、胎盤から生成
  • hCG…主に赤ちゃんの肝臓で生成
  • インヒビンA…胎盤から分泌されるホルモン

これらの数値を計測し、それぞれの疾患に対して陽性となる基準を見る検査です。

母体血清マーカー検査の検査精度は約80%と言われていて、NIPTに比べると検査精度は低いのが特徴です。

母体血清マーカー検査は、妊娠15週~18週頃までに受けるとされていて、NIPTと同じように非確定的検査であるため、結果が陽性であった場合は確定的検査を受ける必要があります。

コンバインド検査

コンバインド検査は、別々に行われていた超音波検査と母体血清マーカー検査を組み合わせて行い、赤ちゃんが特定の先天性疾患を持っているかの確率を調べる検査です。

超音波検査では、NTと呼ばれる赤ちゃんの首の後ろに見える黒い部分の厚みを調べる検査が行われます。

NTは厚みがあるほど染色体異常の可能性が高いと言われているものの、それだけでは判断できないため、母体血清マーカー検査や母体の年齢、妊娠週数、体重、家族歴などを掛け合わせて、赤ちゃんが染色体異常をもっている可能性を調べます。

コンバインド検査は妊娠11週から13週までに超音波検査と採血によって行われます。

コンバインド検査の検査精度は約83%となっていて、こちらもNIPTに比べると検査精度は低くなっています。

羊水検査

NIPT、母体血清マーカー検査、コンバインド検査によって陽性の結果が出た際に行うのが、確定的検査である羊水検査です。

羊水検査は、子宮内の羊水を採取して染色体異常や遺伝子に異常があるかを診断します。

羊水検査の対象者は以下です。

  • 夫婦のどちらかが染色体異常保因者である
  • 過去に染色体異常をもった赤ちゃんを妊娠した経験がある
  • 高齢妊娠
  • 出生前診断で陽性が出た

羊水検査は妊娠14週以降に受けられますが、検査結果が出るまで3週間ほどかかるという特徴があります。

羊水検査は確定的検査なので、感度は100%です。しかし、羊水を採取するために子宮に針を刺すので、流産、早産の危険性や胎児を傷つける可能性があるということを覚えておきましょう。

絨毛検査

絨毛検査は、妊娠早期の胎盤の一部である絨毛を採取し、染色体異常や遺伝子疾患を診断する検査です。

絨毛検査は経腟法と経腹法があり、それぞれ以下のような特徴があります。

  • 経腟法…子宮頚管を通して絨毛細胞を採取する
  • 経腹法…腹壁を通して絨毛細胞を採取する

胎児の位置によって経腟法と経腹法のどちらかが選択され、検査が実施されます。

絨毛検査は妊娠10週~妊娠14週で受けられるので、羊水検査よりも早く確定的検査が受けられるという特徴があります。

しかし、羊水検査に比べて高い技術が必要になるため、実施できる施設が限られていることや、流産や死産のリスクが高いことがデメリットとなります。

流産のリスクは羊水検査が0.3%なのに対して、絨毛検査では1%となります。

羊水検査と同様に、確定的検査になるので感度は100%ですが、リスクも多くある検査なので、非確定的検査で陽性が出た場合に検討するようにしましょう。

まとめ

胎動とダウン症候群の関係と、ダウン症候群を見分ける検査方法についてご紹介しましたが、参考になりましたか?

胎動が弱いからダウン症候群だという噂は、医学的根拠のない迷信で、胎動の強弱で染色体異常を見極めることはできません。

「あまりにも胎動が少なくて不安」「先日まで元気に動き回っていたのに急に胎動を感じなくなった」という方は、検診を待たずに医師に相談することをおすすめします。

また、ダウン症候群を出産前に検査するためには、まずは非確定的検査を受け、その結果が陽性だった場合に確定的検査を受けるという流れになります。

赤ちゃんの健康状態を出産前に知っておきたいと願う方は、まずは非確定的検査を受けてみるようにしましょう。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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