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卵子提供の基礎知識|メリットやリスク・日本の卵子提供事情を詳しく解説

近年、晩婚化の進展に伴って不妊症に悩まれるカップルも増加傾向にあります。

そのような社会情勢がある一方で、さまざまな事情によって妊娠の機会を失ってしまった女性、カップルが「卵子提供」という方法を検討することもあります。

この記事では卵子提供がどのようなものであるのか、基本的な内容から押さえていくとともに、卵子提供を受けるための条件、日本や世界各国における卵子提供事情、世界各国の卵子提供の特徴、卵子提供までの流れ、卵子提供の際に掛かる費用に関してご説明していきます。ぜひ最後までご覧ください。

卵子提供とは

疑問
「卵子提供」とは、卵子を提供する第三者(ドナー・卵子提供者)から卵子を譲り受け、ご主人の精子とドナーの卵子を体外受精の技法を用いて受精させた後、奥さまの子宮内に受精卵(胚)を移植し、奥さまご自身で妊娠・出産することを主旨とした不妊症治療のひとつです。

卵子提供を検討される方の背景には、病気に伴った卵巣摘出や、早期閉経によって排卵がなくなってしまったという事情があります。複数回の体外受精を試してみたものの妊娠に至らず、その原因が卵子にあると認められた場合にも卵子提供が行われることがあります。

卵子提供によって産まれた赤ちゃんとお母さんの関係性ですが、日本では「お子さんを出産なさった方が実母」と認められるように法が敷かれているため、戸籍上、産まれた赤ちゃんは卵子提供を受けられたご夫婦の実子と認められます。

では、この卵子提供にはどのようなメリットと考えるべきリスクがあるのかに関して見ていきましょう。

卵子提供のメリット

卵子提供におけるメリットは以下のものが挙げられます。

  • ご自身の卵子と比較して妊娠成功率が高まる
  • 採卵の負担がない
  • 染色体異常流産の発生率、ダウン症を持った出生児の可能性を下げられる

それぞれに関して見ていきましょう。

ご自身の卵子と比較して妊娠成功率が高まる

卵子提供を希望される、卵子提供を受けるための条件に該当する女性・ご夫婦の背景には、卵子の老化に伴い、幾度となく体外受精を試みても妊娠、出産にまで至らなかったということが考えられます。体外受精は必要となる費用が決して安価であるとは言えず、金銭的にも、精神的にも取り組むうえでの障壁が高く、成功に至らなかった場合には体外受精のために費やした時間も犠牲にしてしまうこととなります。

卵子提供における卵子は比較的若い(20代)ドナーの方から提供された、若く元気な卵子を用いるため、妊娠・出産の可能性も高まります。

採卵の負担がない

ご自身の卵子を用いた不妊症治療の場合には、月経を1周期として排卵までの間に排卵誘発剤やLHサージ誘発剤を用いた治療が行われ、採卵の際には器具を用いて女性の身体から直接採取することとなるため、女性の身体への負担がゼロであるとは言えません。

加えて、排卵を促すための誘発剤を用いることによって排卵過剰刺激症候群などの副作用が生じることもあります。

卵子提供を利用することによって女性の身体への負担を無くすとともに、副作用などが生じてしまうリスクが回避できる点も大きなメリットであると言えます。

染色体異常や流産の発生率、ダウン症を持った出生児の可能性を下げられる

卵子は、卵子のもととなる「原始卵胞(げんしらんほう)」が「減数分裂(げんすうぶんれつ)」という細胞分裂をすることで作られるのですが、原始卵胞は女性が母親のお腹の中にいる時点で作られた後、出生してから新たに作られるということはありません。そのため、原始卵胞は排卵のときまで減数分裂を中断させているのです。

年齢を重ねるということは、減数分裂の中断期間を延長させる、ということと同じ意味であり、いざ排卵がされたとしても、歳を重ねた(老化した)卵子というのは分裂が上手く行われていないということもあります。

これは結果として、精子と受精して、無事に受精卵となったとしても、受精卵の内部では染色体異常が生じてしまい、着床しても流産してしまったり、赤ちゃんが染色体異常を背負って生まれてくるということにつながります。

卵子提供では前述したように元気な卵子を用いることができるため、上記のリスクを回避する効果があると言えます。

卵子提供のリスク・デメリット

卵子提供におけるリスク・デメリットは以下のものが挙げられます。

  • 妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの合併症のリスク
  • 治療費が大きい
  • 周囲の理解・生まれてきてくれた子どもへの説明

それぞれに関して見ていきましょう。

妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの合併症のリスク

妊娠高血圧症候群とは、むくみ、たんぱく尿や高血圧などのいずれかの症状が現れたことを指します。

特に高血圧の場合には注意が必要です。卵子提供を始めとした体外受精を望むご夫婦は、年齢が高い方が多く、高齢出産に該当する場合も多くあります。高齢出産の場合には、高血圧になる可能性が20代のおよそ1.8倍と示されています。

また、妊娠糖尿病とは、妊娠の影響によって発症してしまう糖代謝異常のひとつであり、妊娠中に初めて発症したもので、糖尿病には至らない軽度のものを指しています。

卵子提供の場合には妊娠糖尿病の発症率が8倍ほどに増えるというデータも示されているため、注意が必要となります。

卵子提供に必要となる費用が大きい

現在は、卵子提供を希望するご夫妻の多くは海外渡航をしたうえで、国外で検査や受精卵の移植を受けることが主流となっています。

この背景には、卵子提供が日本では十分に普及していないという事情があります。

国外での卵子提供は日本のエージェントを通じて進められるため、手続きとしてはスムーズに進むことも多いかと思いますが、渡航費や国外での滞在費などが治療費とは別に必要となるため、これらをすべて考慮した費用は決して安価であるとはいえません。

周囲の理解・生まれてきてくれた子どもへの説明

卵子提供に対する法整備や制度が充実していないことが大きな要因なのですが、卵子提供に対する周囲の理解をどのように得るのか、生まれてきてくれたお子さんにどのように伝えるのかも気に掛けておく必要があります。

子育てにはお母さん・お父さんのお力が必要であることはもちろんですが、それだけでなく多くの方がさまざまな形で子育てにかかわることになります。

卵子提供に関してご夫妻の間で理解を深め、決断することも重要ですが、加えて、周囲の方や将来的なお子さんのことも十分に相談なさってください。

日本の卵子提供事情

日本
次に、日本における卵子の提供事情に関してご紹介します。

簡潔にいえば、「日本の卵子提供のための法律や制度が十分に整備されていない」というのが結論となります。

平成15年には厚生科学審議会生殖補助医療部会から、「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療制度の整備に関する報告書」が提出されるというように、法制化に向けた動きが見られていたものの、結果としては法制化には至りませんでした。

厚生労働省は卵子提供による体外受精の是非に関して、「必要な制度の整備がなされるまで実施されるべきでない」と結論付けています。

このような背景のもと、日本では不妊治療専門のクリニックなどがひとつとなって「JISART(日本生殖補助医療標準化機関)」という団体を設立し、独自のガイドラインを定めて卵子提供を行っている実情があります。

卵子提供を受けるための条件

日本の卵子提供のための整備は十分でないという認識のもと、JISARTが公表している卵子提供のガイドラインより、卵子提供を受けるための条件を確認していきましょう。

ガイドライン「非配偶者間体外受精を受けることができる者の条件」では以下の条件が挙げられています。

卵子提供による非配偶者間体外受精を受けることができる者の条件

  • 卵子が存在しない場合
  • 夫婦間体外受精(採卵)によっても妊娠または出産に至らず、その原因が卵子にあり、今後妊娠の可能性が極めて低いと医師が判断した場合
  • 妻が重篤な遺伝性疾患保因者または患者で、着床・出生前検査および妊娠中絶を望まない場合

上記に示すような第三者(ドナー)からの卵子の提供を受けなければ妊娠できない医学的理由が認められる者であることが条件となります。

ガイドライン上での注意点

注意すべきこととして、加齢によって妊娠できない夫婦ではないということも要件のひとつとなっています。この点に関する具体的な判断は医師の裁量に任せられているものの、奥さまの年齢が50歳までであることが目安として判断するように示されています。

加えて、卵子提供を望むご夫婦の婚姻関係において法律上の夫婦であること、夫婦の健康状態、精神的な安定度、経済的状況など、生まれてくる子どもを安定して養育することが可能であると認められる夫婦であることも要件となっています。

世界の卵子提供の特徴

世界
上記に示した背景から卵子提供を検討されるご夫婦の多くが海外渡航、国外での卵子提供を利用しています。海外では非配偶者間体外受精等の整備も進んでおり、これらに関係する医療技術等も充実しているためです。

国外での卵子提供を日本でスタートさせる場合には、卵子提供を実施しているエージェント機関を利用し、提携している海外の医療施設とご夫婦を結ぶという運びが一般的です。

ここでは卵子提供の提携先医療機関としてエージェント機関が紹介することの多い国それぞれの特徴に関して見ていきたいと思います。

ハワイの特色

リゾート地としての人気も高いハワイですが、ハワイに設置されている多くの病院は医療技術や医療施設の水準を向上させ「医療観光」という分野を確立しています。これに伴い外国人のクライアントに対しても満足度の高い対応を実現しています。

ハワイでの特色は以下のものが挙げられます。

  • 観光地としても人気の高いリゾート地である分、快適な環境のもとリラックスしながら治療を受けられる
  • 日本人も多く訪れているため、日本人向けのサービスが充実している
  • 日本ーハワイ間の直行便も多くありアクセスが楽である
  • 医療技術が高く、医療施設も充実している

マレーシアの特色

マレーシアはアジアでも屈指の成長を遂げている国であり、医療技術も充実しています。加えて日系企業も数多く進出しており、日本人に対するサポートも充実しています。

マレーシアの卵子提供における特色は以下のものが挙げられます。

  • 同じアジア圏に位置しており、時差が1時間と短い
  • 物価が非常に安いため、滞在する際の費用も安く抑えられる
  • 観光リゾート地も充実しているためリラックスして治療に取り組める
  • 医療技術が高く、医療施設も充実している

まとめ

幸せそうな母と娘

ここまで、卵子提供の基礎知識として、卵子提供の概要、メリットやリスク、現在の日本における卵子提供事情と世界の卵子提供治療における特徴に関してご紹介してきましたがご理解いただけたでしょうか?

卵子提供が不妊症治療における解決策のひとつとなるのは間違いない一方で、日本におけるハードルはまだまだ高い状態にあるのが事実です。そのため、具体的に卵子提供を検討する際には事前に理解を深めることが大切となります。

この記事が読者様にとって卵子提供に関する理解を深める一助となってくれますと幸いです。

東京の「ミネルバクリニック」は臨床遺伝専門医が在籍するNIPT実施施設であり、たくさんの妊婦さんの悩みや不安と真摯に向き合い、笑顔になれる出産に導いてきました。ミネルバクリニックでは、妊娠9週から受けられる赤ちゃんの健康診断である「NIPT」を業界最新の技術と業界随一の対象疾患の広さで行っております。遺伝のエキスパートである臨床遺伝専門医が出生前診断を提供しておりますので、是非、お気軽にご相談ください。妊娠初期からの出生前診断を受ける医療機関にお悩みの方は、知識・経験・実績とも「第三者から認証されている」臨床遺伝専門医が診療している「ミネルバクリニック」まで是非、ご相談ください。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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