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早期破水は大丈夫?原因やリスク・出産までの流れなどについて解説

出産が近づいてくると、陣痛や破水のタイミングについてあれこれ不安になるものです。

出産のはじまりは、陣痛からの場合や破水からの場合など人によってさまざまですが、中には陣痛がはじまったものの、子宮口が開ききるまでに破水してしまう「早期破水」になる場合もあります。

はじめての出産を迎えるママにとっては何もかも未体験のことなので、「子宮口が開ききっていないのに破水した場合はどうなるの?」「赤ちゃんは苦しくないの?」と、心配されている方もおられるのではないでしょうか。

この記事では、適切なタイミングよりも早く破水が起こってしまう早期破水の定義や原因、リスク、対処法と出産までの流れについて解説します。早期破水について知りたいという方は、ぜひ参考になさってください。

早期破水とは

病院の妊婦

そもそも破水とは、ママのお腹の中で赤ちゃんを包んでいる卵膜が破れて羊水が体外に流れ出すことです。本来であれば、破水は陣痛がピークに達し、子宮内圧が高くなることで起こりますが、それよりも早く破水してしまうこともあります。

まだ赤ちゃんが体外に出てくる適切な時期ではないにもかかわらず破水してしまうと、多くのママが不安になってしまうことでしょう。そこでここでは、早期破水の定義や原因、リスクについて詳しくご紹介します。

早期破水の定義

早期破水とは、陣痛がはじまって出産は開始しているが、子宮口が全開(10cm)になっていない段階で破水してしまうことです。陣痛が起こらないうちに破水する「前期破水」と混同してしまいがちですが、「陣痛がはじまる前か後か」によって区別されます。

以下は、破水の時期による分類です。

  • 適時破水
  • 早期破水
  • 前期破水
  • 遅延破水

適時破水とは、陣痛がはじまって子宮口が全開大に近い頃に起こる破水です。そして前期破水は陣痛がはじまる前の破水、今回詳しくご紹介する早期破水は、陣痛は開始していても子宮口が十分に開かないうちに破水することをいいます。

前期破水と早期破水はどちらも非適時破水といいますが、前期破水は分娩開始前の破水であることに対し、早期破水は陣痛がはじまってから破水するので、誰にでも起こる可能性があります。通常は早期破水が起こってもすぐに出産となるため、トラブルに発展することはあまりありません。

また、子宮口が全開大に達し、出産目前になっても卵膜が破れず破水しない状態を遅延破水といいます。卵膜が破れないまま誕生する「被膜児」にならないよう、分娩介助の際に人工的に破水させることもあります。

早期破水の原因

以下は、早期破水の原因です。

  • 炎症などによる卵膜の脆弱化
  • 軟産道強靭による子宮頚管の伸びの悪さ
  • 喫煙
  • 羊水検査のための羊水穿刺
  • 羊水過多症
  • 胎位異常
  • 腹腔内圧の急昇 など

一般的に、早期破水は原因不明で起こるケースが多いとされていますが、卵膜や子宮の状態によっては早期破水の可能性が高まる場合もあります。

なんらかの炎症によって卵膜が脆弱化している場合や子宮の奇形などによる軟産道強靭、喫煙、急激な腹腔内圧の上昇などは、早期破水が起こりやすいといえるでしょう。

また、羊水検査のための羊水穿刺によって卵膜が損傷して脆くなっている場合も、破水しやすい状態であるといえます。子宮内における胎児の位置や羊水過多症も早期破水の原因となることがあるので、気になる場合は担当の医師に相談してみるとよいでしょう。

早期破水のリスク

一般的に、子宮口が約5cm以上開いた状態で早期破水が起こってもそれほど分娩の経過に影響するものではなく、予後にも変わりはありません。しかしそれ以下の場合、以下のようなリスクもあるため注意が必要です。

  • 子宮内感染
  • 遷延分娩(せんえんぶんべん)
  • 臍帯脱出(さいたいだっしゅつ)

この中でもっとも起こりやすいのは、破水による子宮内感染でしょう。破水が起こるまで子宮内は無菌状態でしたが、子宮口が開ききる前に卵膜が破れてしまうことで、子宮内や胎児が細菌感染する恐れが出てきてしまうのです。

陣痛がはじまってからすでに出産予定の病院にいる場合は、担当の医師や助産師が適切な処置を施してくれるので大きなトラブルにつながることは少ないです。しかし、それ以外の場所で早期破水が起こった場合は、早急に病院へ行かなければいけません。

また、子宮の奇形や高齢出産などで子宮口の開きが遅れている場合は、分娩がなかなか進まず「遷延分娩」となる可能性も。そうなってしまうと、陣痛促進剤が必要になったり、状況によっては帝王切開に切り替えたりするケースもあります。

胎位によっては、赤ちゃんと子宮口の間に隙間がある状態で破水が起こり、赤ちゃんの頭ではなく臍の緒が先に体外へ出てしまう「臍帯脱出」になります。

臍帯脱出になると、臍の緒が圧迫されて酸素や栄養が赤ちゃんに届きません。長時間経過すると赤ちゃんは低酸素状態となり、胎児機能不全になってしまうため、緊急帝王切開に切り替えることになるでしょう。

破水しやすい行動

上記でもご紹介したように、早期破水はさまざまな原因によって起こります。子宮の奇形などのように、ママが気をつけても防げないケースもありますが、腹腔内圧の急昇などは防げる可能性がありますので、以下の破水しやすい行動に気をつけましょう。

  • 重たい荷物を持つ
  • 前屈みになって力を込める
  • 転倒
  • ひどい咳やくしゃみ

陣痛がはじまった後に重たい荷物を持つことはあまりありません。しかし、それ以前の行動によって卵膜が弱まっている可能性もあるため注意が必要です。陣痛がきてしばらく自宅待機してから病院へ向かうときも、転倒には十分注意するようにしましょう。

早期破水した場合の対処法と出産までの流れ

出産直前の妊婦の病院を探す男性(スマホ)

陣痛は、生理痛のような痛みからはじまり、徐々に強くなっていきます。

一般的には陣痛が10分間隔もしくは1時間に6回以上くるようであれば、出産予定の病院に連絡しますが、初産の場合は5〜7分間隔になってからでも十分に間に合うため、それまで自宅待機するよう指示されることも。

その間にも早期破水が起こる可能性もありますので、いざというときパニックにならないよう、早期破水した場合の対処法と出産までの流れを知っておくと安心です。

慌てず医師や看護師の指示に従う

陣痛が開始して自宅待機中に破水した場合は、慌てずにかかりつけの産婦人科へ連絡し、破水したことを伝えて担当の医師や看護師の指示に従います。その際、シャワーを浴びたくなるかもしれませんが、破水によって細菌やウイルスに感染しやすい状態となっているので、避けてください。

また、破水後に動き回ると羊水がどんどん体外に出てしまいます。羊水を出来るだけ減らさないためにも、安静にしなければいけません。スムーズに病院へ行けるよう、遅くとも臨月に入る前までには入院の準備を済ませ、病院までの移動手段も確保しておくことをオススメします。

早期破水した場合の出産までの流れ

破水後は、清潔を保つためにも新しいナプキンや尿漏れパッド、産褥パッドなどを装着してから移動します。タクシーやマイカーに羊水が染みてしまうこともあるため、大きめのバスタオルや防水シーツなども用意しておくと安心でしょう。

病院へ到着後は、入院の手続きや各種検査を行います。早期破水の場合は、すでに陣痛がはじまっているため、対応は通常の分娩とあまり変わりません。ただし、子宮口の開き具合によっては抗生剤を投与しながら様子を見ることになるでしょう。

一般的に、破水すると分娩の進みが早くなるといわれています。ママと赤ちゃんの状態や羊水の量によっては、陣痛促進剤を使用したり帝王切開に切り替えたりして対処することもあるようです。

子宮口が10cmまで開くと子宮口全開となり、いよいよ分娩がはじまります。分娩台に移動して医師や助産師の指示に従っていきみ、待望の赤ちゃんとの対面を果たしましょう。

早期破水は、陣痛より前に破水する前期破水と比べて感染症や合併症のリスクは低いといえます。すでに入院してから早期破水するケースも多いので、あまり心配せずに最後の妊婦生活を楽しんでください。

まとめ

早期破水の定義や原因、リスク、対処法と出産までの流れについて解説しました。

早期破水とは、子宮口が全開になる前に破水することです。万が一自宅で破水してしまった場合も、慌てずに病院へ連絡し指示に従えば大きなリスクはないケースがほとんどでしょう。

破水は、流れ出る羊水の量などに個人差があります。はじめての出産では、どうしたらよいかわからないことも多いかもしれません。しかし、破水を尿漏れと勘違いするケースも多々あるようなので、自宅待機を指示されている中で破水かどうか迷ったときは、ためらわず再度病院へ連絡し指示を仰ぎます。

正産期に入り出産が近づいている方は、ぜひ本記事を参考に落ち着いて出産に臨むようにしましょう。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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