InstagramInstagram

中絶すると妊娠しにくくなるの?

ほとんどの人が中絶というと、人工的に誘発された中絶を意味しています。人工妊娠中絶をする人は、それが将来の生殖能力や妊娠に対してどのような意味を持つのかを心配しているかもしれません。しかし、中絶をしたからといって、後になって再び妊娠する能力に影響を与えることは通常ありません。

ごくまれな例外として、外科的な中絶の後に傷跡が残った場合、アッシャーマン症候群と呼ばれる子宮内膜が癒着した状態になることがあります。

この記事では、さまざまな種類の中絶、将来の生殖能力、中絶後に妊娠するのが難しい場合にどうすればよいかを探ります。

中絶の種類にはどのようなものがありますか?

中絶の種類が将来の生殖能力に影響を与えることがあります。一般的に、中絶の方法は、妊娠がどのくらい進行しているかによって決まります。また、薬による中絶か外科的な中絶かは、そのタイミングによって決まります。

薬による中絶

薬による中絶は現在のところ日本では認められていません。こちらのページに詳しく記載しておりますので是非ご覧ください。

妊娠7週目まで

メトトレキサート(Rasuvo、Otrexup)という薬は、胚の細胞が急速に増殖するのを止めることができます。その後はミソプロストール(Cytotec)という薬を服用し、子宮収縮を促します。しかし、メトトレキサートを医師が中絶のために広く処方することはありません。この方法は通常、胚が子宮外に着床し、妊娠が成立しない子宮外妊娠の女性にのみ用いられます。

妊娠10週目まで

薬による中絶では、ミフェプリストン(Mifeprex)とミソプロストール(Cytotec)の2種類の薬を服用することもあります。日本では現在、これらの薬剤は使用できません。ミフェプリストンは製薬会社が承認申請中です。

外科的中絶

外科的中絶は、妊娠を終わらせるか、稽留流産といって流産したのに子宮内に残ってしまっている妊娠の産物を取り除くための処置です。薬による中絶と同様に、時期によって方法が異なります。

妊娠12週未満

海外では妊娠16週目まで超音波吸引法という中絶の最も一般的なアプローチの一つがなされるのですが、日本ではなぜか初期中絶も掻破法を用いるところが多く、2012年のWHOのガイドラインに違反している状況です。また、超音波吸引法で中絶がなされるのも日本では妊娠11週まで、とされていてその後は機械的に子宮口を拡張して排出する中期中絶がなされるようです。

超音波吸引法では、特別な器具を使って、子宮から胎児と胎盤を取り除きます。

妊娠13週以降

拡張・排出dilation and evacuation (D&E) は、胎児と胎盤を外科的に除去する方法です。この方法は、真空吸引、鉗子による摘出、

拡張・掻爬などの他の技術と組み合わせることができます。また、女性が流産した場合、医師は残った受胎物質を取り除くために、拡張・掻爬 dilation and curettage (D&C)を行います。

掻爬とは、医師がキュレットと呼ばれる特殊な器具を使って、子宮内膜から妊娠に関連する組織を取り除くことです。

中絶のリスクとは?

中絶は低リスクの手術です。中絶後の死亡のリスクは10万人に1人以下です。

中絶に伴う潜在的な合併症には以下のようなものがあります。

出血
中絶の後、出血することがあります。通常、出血は医学的に問題となるほど極端なものではありませんが、まれに輸血を必要とするほどの出血をすることがあります。
不完全な中絶
組織や他の受胎生成物が子宮内に残ることがあり、残った組織を取り除くために拡張・掻爬 dilation and curettage (D&C)が必要になることがあります。このリスクは、中絶のために薬を服用した場合には高くなります。
感染症
このリスクを防ぐために、通常は中絶の前に抗生物質を投与します。
隣接臓器の損傷
医師が中絶の際に誤って子宮や膀胱などといった周辺の臓器を傷つけてしまうことがあります。このようなリスクは、妊娠期間が長くなるほど高くなります。

アッシャーマン症候群とは何ですか?

理論的には、子宮に炎症を起こすものはすべて、将来の生殖能力に影響を与える可能性があります。しかし、これが起こる可能性は非常に低いと考えられます。

アッシャーマン症候群とは、子宮内膜にダメージを与える可能性のある摘出手術などを受けた後に発生する稀な合併症です。子宮腔内に瘢痕が形成されることで、将来、流産や妊娠に問題が生じる可能性が高くなります。

アッシャーマン症候群は、それほど頻繁に起こるものではありません。アッシャーマン症候群が発生した場合、手術によって子宮内の組織の瘢痕部分を除去することで治療することができます。

手術で瘢痕組織を除去した後は子宮内にバルーン(風船のように膨らますものです)を残します。バルーンは、子宮が治癒するために開いた状態を維持し、再度子宮壁どうしが瘢痕で癒着しないようにするのに役立ちます。子宮が回復したら、バルーンを取り除きます。

中絶後にまた妊娠することは可能でしょうか?

中絶が清潔で安全な医療環境で行われた場合、ほとんどの処置は生殖能力に影響を与えません。中絶をしても、一般的に将来妊娠する能力に影響を与えることはありません。再度妊娠しても、中絶したことにより妊娠合併症のリスクが高まることもありません。

また、体が回復するまでの時間を確保するために、中絶後一定期間、性交渉は控えましょう。

中絶後に妊娠するのが難しいと感じる場合は、中絶が妊娠に関して問題を起こす可能性は殆どないので、生殖能力に影響を与える他の要因を考慮することが重要です。以下の要因は生殖能力に影響を与えます。

年齢
年齢が高くなるにつれて、生殖能力(妊孕性)は低下します。詳細は卵子の質のページをご覧ください。
生活習慣
喫煙(たばこ)などの生活習慣は、妊孕性に影響を与えます。
性感染症にかかったことがある
子宮や付属器の炎症は妊孕性に影響を及ぼします。
糖尿病、自己免疫疾患、ホルモン異常などの慢性疾患がある
こうした慢性的な疾患は妊孕性に影響を及ぼします。
パートナーの生殖能力
精液の質は、女性の妊娠能力に影響を与えます。過去に同じパートナーとの間で妊娠したことがあっても、生活習慣や加齢がパートナーの生殖能力に影響を与えることがあります。

まとめ

中絶とは、妊娠を中途で終わらせるための医療行為や薬の服用(日本ではまだ未承認です)を指します。米国でも日本でも大体、全妊娠の2割弱が人工妊娠中絶によって妊娠を終了しています。中絶をしたからといって、後になって妊娠できないということはありません。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

関連記事