InstagramInstagram

人工授精のスケジュールと適応について紹介

タイミング法で妊娠に至らず、次のステップである人工授精をはじめる方にとって、どのようなスケジュールで人工授精が行われるのかはとても気になるのではないでしょうか。

不妊治療では、仕事の都合でなかなか病院へ行く時間がとれないというのが大変なことの一つとして挙げられます。

スケジュールを知っておくことで、どの程度時間を空ければよいのかを知ることができるとともに、どのようなスケジュールで進められていくのかという不安も解消できます。

この記事では、人工授精のスケジュールと、人工授精の適応についてをご紹介します。

人工授精には有効とされるケースと有効でないケースがあるため、適応を把握しておくことも重要です。

これから人工授精をはじめることで不安を感じている方は、ぜひ参考にしてみてください。

人工授精とは

胎児のエコー写真と薬
人工授精は、男性が射精した精子を人工的に女性の子宮内にチューブを使って注入し、自然妊娠と同様の過程を経て妊娠を目指す治療法です。

採取した精子はそのまま子宮内に注入すると、女性が卵管炎を起こす可能性があるため、運動性の高い精子のみを殺菌し、子宮内に注入します。

人工授精の際、精液中にある精子を洗浄抽出して0.5ml程度にまで濃縮します。そうすることにより、人工授精の成功率が高くなります。

人工授精で妊娠する方の70%が3回目までに妊娠するとされていて、7回目以降の妊娠率は極端に低下することから、3~6回の人工授精で妊娠に至らなかった場合は、次のステップへ移ることを考えます。

人工授精のスケジュール

医師と患者夫婦
人工授精はいくつかの検査や薬の処方を経て、予測された排卵日に行われます。

ここからは、人工授精のスケジュールをご紹介します。

排卵誘発剤の処方

排卵誘発剤は、以下のような方に処方されます。

  • 月経不順
  • 排卵障害
  • 黄体機能不全症
  • 原因不明不妊

排卵のメカニズムは、脳から分泌されたホルモンの刺激で、下垂体からゴナドトロピンと呼ばれるホルモンが分泌され、卵巣の中で卵胞が育ち、排卵が起こります。

排卵誘発剤はゴナドトロピンの分泌を促進したり、ゴナドトロピンと同じ働きをしたりする薬剤のことを指します。

排卵誘発剤は以下のような種類があります。

  • エストロゲン剤(飲み薬)…クロミッド、セロフェン、セキソビットなど
  • FSH、hMG製剤(注射薬)…ゴナピュール、ゴナールエフ、フェリルモン、HMGフェリングなど
  • LH製剤(注射薬)…オビドレル、HCG「F」など

排卵誘発剤には飲み薬と注射薬があり、どのような原因で不妊となっているかによって使い分けます。

副作用によって吐き気や嘔吐、下痢などを引き起こすこともあり、辛い思いをする方もいれば、副作用は感じなかったという方もいます。

超音波検査で卵胞をチェック

排卵日を予測するために、超音波によって卵胞のチェックを行います。

まずは過去の基礎体温のグラフから排卵日を予測し、排卵時期が近付いたら病院へ来院して超音波検査で卵胞の大きさを測定します。

月経周期によって変わる場合もありますが、卵胞径が12mm程度になってからは、卵胞は1日あたり約2mmのペースで成長します。

卵胞径が18~22mmになると排卵されるため、いつ排卵するかを超音波検査によって予測します。

卵胞の大きさが20mm程度に発育したら、ホルモン検査によって総合的な判断をし、排卵日を確定します。

このときに、排卵誘発のための筋肉注射を併用するケースもあります。

人工授精当日

人工授精当日の朝、自宅か病院で精液を採取して病院で精液を洗浄、濃縮させ準備を行います。

精子の準備が終わったら、超音波測定で卵胞径を計測して人工授精を行います。

腟内を生理食塩水で洗浄し、専用のカテーテルによって子宮内に精子を注入します。精子を注入することによる痛みはほとんどないので安心して治療を受けることができます。

基本的にはやわらかいカテーテルを使いますが、挿入が困難な場合など、硬めのカテーテルを使用することがあり、その場合は若干痛みを伴うこともあります。

治療時間は10分程度で、注入後は安静に過ごし帰宅します。

人工授精当日は激しい運動は避け、感染予防のため入浴なども控えるようにします。

稀に腹痛や出血が起こる場合もありますが、2、3日で治るので心配いりません。それ以上続くようだったら、病院に連絡するようにしましょう。

黄体補充療法

排卵後は、黄体機能の維持をするために黄体補充療法を行います。黄体補充療法に使う薬品は以下です。

  • 黄体ホルモン剤…ルトラール、デュファストンなど
  • 黄体ホルモン腟座薬…ウトロゲスタン、ルティナスなど
  • hCG注射…注射用hcg
  • 黄体ホルモン注射…プロゲデポーなど

黄体補充療法による副作用はとくにありませんが、注射は筋肉注射になるので比較的痛みが強くなります。

服用薬は来院の必要がないのに対して、注射は即効性のある治療です。

人工授精の適応について

医師と患者男性
人工授精は有効なケースと有効でないケースがあります。そのため、事前の検査によって不妊の原因をある程度特定する必要があります。

ここからは、人工授精の適応についてご紹介します。

人工授精が有効なケース

人工授精が有効なケースは以下のような場合です。

  • 機能性不妊
  • 射精障害
  • 性交障害
  • フーナーテストの結果が悪い
  • 精子の数が少ない、運動率が良くない

タイミング法を一定期間行っても妊娠に至らない場合や、一般的な不妊の検査で夫婦ともに問題がなく不妊の原因がわからない場合に適応となります。

射精障害や性交障害の方も適応となりますが、マスターベーションによる射精が可能なことが条件となります。

精液検査による各項目の正常値は以下になります。

  • 精液量…1.5ml以上
  • 総精子数…3900万/射精以上
  • 精子濃度…1500万/ml以上
  • 総運動率…40%以上
  • 前進運動率…32%以上
  • 生存精子率…58%以上
  • 正常形態率…4%以上

これらはWHOの基準となっていて、基準を満たしていない場合は精子の受精能力が低下していると考えられ、人工授精の適応となります。

フーナーテストは、排卵前の性行為によって頸管粘液の中にどの程度精子がいるかを調べるテストで、頸管粘液の中の運動精子の数が少ないと妊娠率は低いと判定されます。

人工授精が有効でないケース

以下のようなケースでは、人工授精では妊娠が難しいので体外受精を勧められることになります。

  • 卵管が完全に詰まっている
  • 卵管に癒着がある
  • 重度の男性不妊
  • 一般不妊治療で妊娠しなかった場合

卵管が完全に詰まっていたり、癒着があったりして卵管機能障害が認められる場合は、精子が卵子まで届くことが難しいため体外受精による妊娠が望ましいとされます。

また、重度の男性不妊で精子の運動量が少ない場合も、人工授精で妊娠に至らないため体外受精が適応されます。

人工授精のメリット

医師と胎児の超音波写真を見る女性の手
人工授精は、ある程度の妊娠率を確保でき、自然妊娠に近いかたちで妊娠できることが大きなメリットとなります。

治療の際に痛みを感じることもなく、体への負担は少なくて済むので繰り返し治療がしやすいという特徴もあります。

また、性行為のタイミングが合わないなどの理由から精子を凍結し、排卵時期に合わせて精子を解凍して人工授精を行うこともできます。

精子の運動率などが悪くても、洗浄法などによって濃縮して調整してから子宮内に送り込めるので、通常の性行為に比べると妊娠率は高くなります。

人工授精によって赤ちゃんに異常が起こることはあるのかと心配される方も多いのですが、人工授精は自然妊娠と同じ過程を経て受精や着床が行われるため、人工授精によって胎児に異常を引き起こす心配はありません。

体外受精と比べると成功率は低いとされていますが、金銭的には体外受精を行うよりも人工授精のほうが負担が少なくて済みます。

人工授精に健康保険は適応されませんが、自治体によっては助成金制度が適用される場合もあるので、お住まいの自治体の助成金を確認することをおすすめします。

まとめ

人工授精のスケジュールと、人工授精の適応についてご紹介しましたが、参考になりましたか?

人工授精は通常の性行為によって妊娠しなかった夫婦にとって、ある程度の妊娠率を確保できる方法となるうえに、自然妊娠に近いかたちでの妊娠となるのが特徴です。

痛みや体への負担もないので、妊娠できなかったとしても何度も行える治療で、長期的に挑戦できるのがメリットといえます。

人工授精のスケジュールを把握することで、仕事の調整や心構えができるので、どのような手順で人工授精が行われるかを把握しておきましょう。

人工授精にトライしようとしている方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。

東京の「ミネルバクリニック」は臨床遺伝専門医が在籍するNIPT実施施設であり、たくさんの妊婦さんの悩みや不安と真摯に向き合い、笑顔になれる出産に導いてきました。ミネルバクリニックでは、妊娠9週から受けられる赤ちゃんの健康診断である「NIPT」を業界最新の技術と業界随一の対象疾患の広さで行っております。遺伝のエキスパートである臨床遺伝専門医が出生前診断を提供しておりますので、是非、お気軽にご相談ください。妊娠初期からの出生前診断を受ける医療機関にお悩みの方は、知識・経験・実績とも「第三者から認証されている」臨床遺伝専門医が診療している「ミネルバクリニック」まで是非、ご相談ください。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

関連記事