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なぜダウン症の子どもが生まれるのか?年齢によって流産しない確率も下がる

高齢出産ダウン症候群21トリソミーなど染色体異常をはじめとする赤ちゃんの障害が増えるとかよく聞きますが、その他の問題はどうでしょうか?実は、染色体異常によらない赤ちゃんの先天異常や死産も増加します。

また、男性側の加齢は遺伝子異常につながります。詳しくはこちらのページからご確認ください。

高齢出産|母体高齢が妊娠に及ぼす影響

はじめに

実は、女性がいくつになったら生殖年齢として高齢なのかについての普遍的な定義はありません。

たとえばダウン症候群(21トリソミー)のお子さんが生れるという反応を誘発するために、ある値以上の強さを有する必要があるのならば、その年齢は閾値(しきいち)とよばれることになるでしょう。しかし、ダウン症候群(21トリソミー)のお子さんが生れる母体年齢自体は20歳から45歳オーバーまで連続的に報告されています。ゆえに、ダウン症候群(21トリソミー)などの染色体異常(異数性:染色体の数が異常になる。ダウン症候群(21トリソミー)では通常21番染色体が2本のところ3本となることで発症します)と母体高齢化(高齢出産)の問題は閾値効果としてではなく、連続的なものとして生じていることが明らかであり、そのために「高齢」出産の高齢とはという定義自体が普遍的に、つまり世界各国どの地域どの個人でも同じ定義を持つという風に定まらないのです。

特に母体年齢が30代半ば以降になると、年齢が上がるにつれて受胎能は明らかに低下し、妊娠した女性は妊娠合併症のリスクが高くなることが報告されています。

しかし、一般的に45歳以上の女性や50歳以上の女性であってもそのほとんどの女性たちの妊娠転帰は良好で、妊娠や育児の身体的・情緒的ストレスに対処できることが報告されています。女性の年齢が妊娠に及ぼす影響については、このページでお伝えします。父親の高齢における妊娠管理に関連した問題点については、別のページでお伝えいたします。

高齢出産における妊娠初期の問題点:ダウン症候群(21トリソミー)などの染色体異常の増加による流産

高齢女性は、若い女性と同じ妊娠合併症のリスクがありますが、一部の問題では年齢に応じてリスクが高くなります。

自然流産

高齢女性では自然流産の割合が増加することが報告されています。
母体年齢と流産率

流産はトリソミー(染色体が通常2本のところ3本ある)およびダイソミー(染色体が2本:正常)の両方ともがみられ、主に卵母細胞の質の低下に起因すると考えられていますが、子宮機能およびホルモン機能の変化も原因となっている可能性があります。大多数の流産は妊娠6~14週の間に起こります。

大規模なケースシリーズでは、病院で管理された自然流産の全体的な割合は約11%でした。流産した女性の80%のみが入院したと仮定すると、各年齢層における自然流産リスクの計算値は、 <30歳(12%)、30~34歳(15%)、35~39歳(25%)、40~44歳(51%)、≧45歳(93%)でした。

母体年齢自然流産%子宮外妊娠%死産率/1000
12-1913.325
20-2411.11.54.2
25-2911.91.64
30-34152.84.4
35-3924.645
40-44515.86.7
≥4593.478.2

自然流産率に対する母体年齢の影響は、出産歴および過去の流産歴とは無関係でした。

ダウン症候群(21トリソミー)のリスクを評価するための臨床試験では、母体の年齢による36,000例を超える妊娠の妊娠転帰が分析されました。この臨床試験は、規模が大きいこと(結果の信憑性が高くなります)、完全な診療記録があることはよいのですが、女性たちは妊娠10~14週に登録されたため、流産の最も一般的な時期である超早期妊娠における流産は除外され、大きな囊胞性ヒグローマ(全身がむくんでいる)を有する胎児も除外されました35歳未満、35~39歳、40歳以上の女性の妊娠10週以降の自然流産率は、それぞれ0.8%、1.5%、2.2%でした。

35歳以上の高齢女性における最終的な自然流産のリスクは、経膣超音波検査により胎児の心拍が見えてもなお高いものとなっています。つまり、胎児心拍が確認できたからといって安心できないということです。

148,000例を超える生殖補助医療ART妊娠を対象とした研究では、母体の年齢別にみた胎児心拍がみえた後7週以降のの流産率は、33歳未満(9.9%)、33~34歳(11.4%)、35~37歳(13.7%)、38~40歳(19.8%)、41~42歳(29.9%)、42歳以上(36.6%)と報告されています。流産の増加は枯死卵に限られていないことを示しています。

高齢出産と赤ちゃんの障害:染色体異常

自然流産、妊娠中絶、羊水穿刺、生児・死産児からの核型解析(染色体分析)では、女性年齢と染色体異数性のリスクは正の相関関係にあります。最も一般的な染色体異数性は常染色体トリソミーです。この観察の生物学的基礎は、卵母細胞が胎児期(受精後5か月)に第一減数分裂の中期に達し、排卵直前に卵母細胞が分裂するように刺激されるまで、中期で静止したままであることにあります。

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加齢に関連したミスは、分裂完了時に不均等な染色体産物につながる不分離のリスク(1本ずつを2本ずつに増やして4本にしてから分けるときに3本と1本になるとかのわけ間違いを不分離と言います)を増加させると考えられています。これらの加齢関連のミスは、卵子への累積酸化ストレス、成熟に利用可能な正常卵母細胞数が枯渇する、卵母細胞の染色体末端であるテロメアが短くなってしまうため染色体の複製に支障が出る、などが関連している可能性があります。

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理論的には、染色体学的および形態学的に正常な胚の着床前選択は、着床を成功させ、妊娠の機会を増加させるとともに、染色体異常の児の出産を回避することができます。この手技により移植から除外される異数体胚の数が多いにもかかわらず、つまり、正常胚が移殖されているにもかかわらず、無作為化試験および対照研究のデータは、着床前の正常胚の選択が着床率も生児出生率も改善しないかわりに多胎妊娠率を減少させることを示しています。

染色体異常はNIPT新型出生前診断)で分かります

年齢別ダウン症の子どもが生まれる確率

35歳を過ぎるとダウン症の子どもが生まれる確率が高いというお話を聞いたことがあるでしょう。実際にどれくらいの数字になるのか下の表にまとめてありますのでご確認ください。

出産時のママの年齢 ダウン症の確率
20歳 1/1450
32歳 1/750
33歳 1/570
35歳 1/350
37歳 1/200
38歳 1/150
40歳 1/85
42歳 1/55
45歳 1/35
47歳 1/30
49歳 1/25

ご覧の通り、年齢が高くなるとダウン症の子どもが生まれる確率は上がります。その理由は女性は生まれてきたときに一生分の卵子の元を持っており、年齢が上がるにつれて質が落ちてしまうためです。卵子の質を維持する方法はありません。

高齢出産と赤ちゃんの障害:遺伝子異常

生殖補助医療以外で、母体年齢が高齢であることが単一遺伝子疾患エピジェネティックな要因に及ぼす影響に関するデータは殆どありません。疫学研究では、母親および父親の高齢と子供の自閉症スペクトラム障害のリスクとの関連が報告されていますが、自閉症の独立した危険因子として証明されているわけではありません。親の年齢は、潜在的な交絡因子を注意深く検討してきた大規模な集団ベースの出生コホートで検討すべき事柄です。

高齢出産と赤ちゃんの障害:先天奇形

母体の年齢が高くなるにつれて、先天異常児をもつリスクが高くなる可能性が指摘されています。歴史的に、母体の年齢が高くなるにつれて先天異常が増加するのは、母体の年齢が高くなるにつれて染色体異数性が増加することが認められ、異数性胎児と構造異常との関連が認められたためであるとされてきた。しかしながら、いくつかの解析により、女性の年齢とともに非染色体異常のリスクも増加することが示唆されている。特に心奇形は、染色体異数性とは無関係に母体年齢とともに増加することが観察されています。

米国National Birth Defects Prevention Study (NBDPS)
人種/民族、ボディマスインデックスBMI(肥満の指数)、葉酸内服の有無、妊娠、教育、喫煙、親の年齢差で調整した先天異常と母親の年齢との関連を評価した集団ベースのケースコントロール研究です。症例乳児20,377例、対照乳児8169例を対象とし、染色体異常または単一遺伝子障害が認められるか強く疑われる乳児を除外しています。25~29歳の女性の基準群と比較して40歳以上の女性の児は、いくつかのタイプの先天性の心臓の部分的欠損(aOR 2.2~2.9)、食道閉鎖(aOR 2.9、95% CI 1.7~4.9)、尿道下裂(aOR 2.0; 95% CI 1.4~3.0)、および頭蓋骨癒合(aOR 1.6,95% CI 1.1~2.4)のリスクが高いことが認められています。

FASTER試験

35歳未満、35~39歳、40歳以上の女性の出生児に対する主要な先天異常の割合は、それぞれ1.7、2.8、2.9%で、35歳未満の女性と比較した35歳以上の女性のオッズ比は1.4~1.7であり、この試験が大規模であることを考慮すると、著者らはオッズ比OR>2を臨床的に有意であると考えていて、これらの数学的に有意なORはいずれもこのレベルの臨床的意義に達していません。

世界中のその他の地域の結果は、これらの所見のすべてと一致しているわけではありません。矛盾する結果は、研究デザイン、症例定義、潜在的交絡因子の違いなどが原因となっている可能性があります。

高齢出産と赤ちゃんの障害:周産期死亡率

高齢出産と胎児死亡

世界中の大規模研究では、高齢女性(≧35歳)は若年女性と比較して死産のリスクが有意に高いことが一貫して報告されています。そうした研究のシステマティック・レビューとメタアナリシスからは、35歳を超える母親の年齢は若い女性と比較して死産のオッズが65%上昇する(OR1.65、95% CI 1.61-1.71)と算出されました。死産の相対リスクは、母親の年齢が高くなるにつれて増加しました。死産のリスク増加は妊娠約37週以降に最も顕著となっています。

高齢女性が経験する過剰な周産期死亡は、高血圧、糖尿病、分娩前出血、喫煙、多胎妊娠などの危険因子を調整した後でも、しばしば原因不明の非異常胎児死亡によるものが多いですが、先進国における死産の絶対リスクは、非常に高齢の妊産婦でも小さいものです。

まとめ

始めても妊娠出産ってただそれだけで不安なのに、高齢出産になると、さらに不安が増すのは当然でしょう。

わたしが医学生の1990年代は、出生前診断というとあの怖い羊水検査しかなくて、産婦人科の授業でダウン症候群(21トリソミー)と母体年齢のカーブを見せられて、35歳以上はダウン症候群(21トリソミー)の妊娠確率が増すといわれると、「35歳以上は産むなってことね」と先生の言っていることを理解しました。

ダウン症候群(21トリソミー)と母体年齢・父親の高齢による新生突然変異のリスク

このグラフの青のカーブは母体年齢とダウン症候群(21トリソミー)のお子さんの妊娠確率を示しています。オレンジのカーブは父親側を原因とする赤ちゃんの遺伝子異常の積算リスクが母親の年齢によらず1/600と一定であることを示しています。

このカーブを見ると、怖くなっちゃいますよね。

ところが、時代は進んで、医療技術も格段に進歩を遂げて、今は母体から採血するだけで、ダウン症候群(21トリソミー)などの染色体異常がわかるし、それ以外の疾患リスクにも新型出生前診断(NIPT)がどんどんと拡大されて行っています。

今のような時代に妊娠できるのだったら、わたしも20代で子供を産まずに、専門医をちゃんととるだけのキャリア形成をして、社会経験を積み、人間としても成長した中で落ち着いて余裕がある子育てができたのかなと思うと、ちょっと今の皆さんはうらやましいと感じます。

妊娠初期にNIPTを受けた妊婦さんは安心感が大きいという報告もあります。安心感は悪阻にも良い影響を及ぼします。逆に不安だと悪阻には悪影響があります。

ミネルバクリニックでは世界中から最新のNIPT技術を厳選して採用し、みなさまのマタニティライフを安心かつ快適化したいと考えています。

また、障害のあるお子さんを受け入れるのかどうかはご夫婦が選択すべきであって、第三者が口を出すことではないと考えています。出生前診断に対して悪いイメージをお持ちの方々もいらっしゃいますが、リスク管理をしない人生は存在しません。妊娠出産は結婚と同じ、またははるかに重いライフイベントですし、ご夫婦は嫌になれば離婚可能ですが、お子さんの養育義務は一生なので、慎重になるのも当然なのではないでしょうか。

この機会に是非、出生前診断のエキスパートである臨床遺伝専門医がいるミネルバクリニックにご相談ください。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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