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体外受精のスケジュールをわかりやすく解説

不妊治療において、体外受精を検討されている方も多いのではないでしょうか。実際に体外受精をする前に、どのようなスケジュールで進むのか知っておきたいですよね。体外受精のステップによっては方法が複数あるため、医師と相談のうえ自分たちで選択することが大切です。そこで今回は、体外受精のスケジュールを各ステップに分けて詳しく解説します。

体外受精のスケジュール


体外受精とは女性の体内で受精が困難な場合に、卵子を体外に取り出して精子と培養液の中で受精させ、培養した受精卵を子宮内に戻す方法です。体外受精は、男性に射精障害や性交障害がある場合、女性に卵管狭窄や卵管閉塞がある場合などに適しています。 体外受精のスケジュール は、下記のとおりです。 1. 排卵誘発:生理開始3~10日目ごろ 2. LHサージ誘起:生理開始9〜13日目ごろ 3. 採卵:生理開始11〜14日目ごろ 4. 受精:採卵日当日 5. 培養:採卵から1〜6日後 6. 胚移植:採卵から2〜5日後 7. 妊娠判定:採卵から2週間後 個人差はありますが、排卵誘発から妊娠判定まで約1か月弱かかります。では、それぞれのステップについて詳しく解説します。

STEP1:排卵誘発(生理開始3〜10日目)

排卵誘発(卵巣刺激)は、妊娠成功率を上げるために必要な最初のステップです。排卵誘発では卵胞を複数発育させより多くの卵子を得るため、ホルモン薬で排卵をコントロールします。ホルモン薬の種類や投与方法は複数あり、卵巣の状態や患者の希望に合わせて決定します。 排卵誘発の方法と特徴は下表のとおりです。

完全自然(無刺激法) マイルド法(低刺激法) 高刺激法
排卵誘発剤 なし クロミッド法 アンタゴニスト法 ・アゴニストショート法

・アゴニストロング法

採卵数 少ない 少ない 少ない 多い

年齢や体質などによって、それぞれの方法を使い分けます。高刺激法のアゴニストショート法とアゴニストロング法は、一度に採卵できる数が多いことが特徴ですが、その分身体的な負担が大きいため高齢の場合には実施できない可能性がある方法です。いずれの方法を選択する場合も、まずは医師に希望を伝えたうえで相談して決めます。

STEP2:LHサージ誘起(生理開始9〜13日目)

LHサージとは、排卵の数日前に黄体形成ホルモンが脳の下垂体から大量に分泌されることです。人工的にLHサージを起こすことで、排卵に向けて卵子をしっかり成熟させることができます。LHサージを誘起させる方法は、hCG注射と点鼻法、リュプロアセテート法の3種類です。 下表 に方法と特徴をまとめました。

hCG注射 点鼻法 リュプロアセテート法
LHサージの確実性 高い 低い 高い
リスク 卵巣過剰刺激症候群
・卵子の変性
卵巣過剰刺激症候群 なし
自分で実施できる

hCG注射には、遺伝子組み換えhCG製剤と妊婦尿由来hCG製剤の2種類があります。遺伝子組み換えhCG製剤はLHサージの確実性が非常に高いこと、妊婦尿由来hCG製剤は費用が安いことが特徴です。どちらも自己注射が可能ですが、妊婦尿由来hCG製剤は事前に練習が必要です。 点鼻法は点鼻薬で行うため、呼吸が不十分な場合LHサージが起こせず、採卵しても卵子が取れないことがあります。また、卵巣過剰刺激症候群の既往歴がある方は、リスクが低いリュプロアセテート法がおすすめです。

STEP3:採卵(生理開始11〜14日目)

採卵では、成熟した卵子を排卵日の直前に体外に取り出します。採卵と同日に採精も行い、受精の準備を整えます。採卵は、無麻酔で行うか静脈麻酔下で行うかの選択が可能です。採卵時の静脈麻酔では、まれにアレルギー反応や吐き気、嘔吐などの副作用が出ることがあります。

STEP4:受精(採卵日当日)

採卵した卵子を培養液内で確認した後、採精した精子の中から運動率の高い精子を選び出し、培養液内で卵子と精子を一緒にして受精させます。 受精の方法は、下記の2種類です。 • 体外受精:シャーレの上で卵子と精子を合わせる方法。精子が自力で卵子の中に入る • 顕微授精:顕微鏡下で精子を卵子に注入する方法 顕微受精は、体外受精では受精卵が得られない場合や精液所見が不良な男性不妊症の場合に行います。

STEP5:培養(採卵日の1〜6日後)

精子と一緒になった卵子は受精卵となり、専用の培養液につけて培養します。受精卵は一度細胞分裂を始めると胚と呼ばれ、1~6日かけて細胞分裂を繰り返します。通常移植されるのは、受精してから2~3日後、もしくは5日後 です。その間、インキュベーター と呼ばれる体内に似た環境を作ることができる機械の中で培養されます。 なお、早期流産を2回以上繰り返している場合には、GM-CSF含有培養液 という特殊な培養液を使用することも可能です。

STEP6:胚移植(採卵日の2〜5日後)

胚移植とは、培養した受精卵である胚を子宮内に移植するステップです。 胚移植には下記の選択肢があり、医師と相談しながら決定します。 1. 新鮮胚移植か凍結融解胚移植か選ぶ 2. 分割期胚移植か胚盤胞移植か選ぶ 選択には胚の質も重要な要素の一つです。では、胚移植における選択肢について詳しく見ていきましょう。

1:新鮮胚移植か凍結融解胚移植か選ぶ

新鮮胚移植とは、採卵と同じ周期に胚を移植する方法です。対して凍結融解胚移植は、採卵で得られた受精卵を凍結保存し、採卵とは別の周期に融解して移植します。 それぞれの方法には、下表のようなメリットとデメリット があります。

新鮮胚移植 凍結融解胚移植
移植の時期 採卵と同じ周期 採卵とは別の周期
メリット 胚移植から妊娠判定まで1周期で終わる • 妊娠率が高い
• 流産率が低い
デメリット 卵巣過剰刺激症候群などのリスクが高い 時間、通院回数、費用がかかる

新鮮胚移植のデメリットである卵巣過剰刺激症候群のリスクですが、凍結融解胚移植では発症リスクを回避できます。

新鮮胚移植は、卵巣過剰刺激症候群発症のリスクが低く、子宮内膜の厚さが十分な方に採用される方法です。一方、凍結融解胚移植は卵巣過剰刺激症候群の既往歴がある方や、新鮮胚移植で良好な胚を子宮に戻しているにもかかわらず妊娠に至らない方に採用されます。

2:分割期胚移植か胚盤胞移植か選ぶ

分割期胚移植と胚盤胞移植は胚移植を行う時期が異なります。分割期胚移植は、受精後2~3日の分割期胚を移植する方法で、古くから実施されているものです。胚盤胞移植は受精卵を5~6日培養し、着床寸前の状態である胚盤胞と呼ばれる胚を移植します。

それぞれの移植方法には、下表のようなメリットとデメリットがあります。

分割期胚移植 胚盤胞移植
培養期間 2~3日 5~6日
メリット 胚移植のキャンセル率が低い • 妊娠率が高い
子宮外妊娠の可能性が低い
デメリット 良好な胚の選別が難しい 胚移植のキャンセル率が高い

胚移植のキャンセルとは胚の分割がうまくできず、胚移植ができないことを指します。 分割期胚移植は、スタンダードな方法で胚移植のキャンセルが少ないため、初めて体外受精を行う方に採用される方法です。対して、胚盤胞移植は分割期胚移植で妊娠に至らなかった方や、胚移植がキャンセルになるマイナス面も理解したうえで妊娠の確率をより高めたい方に採用されます。

STEP7:妊娠判定(採卵日の2週間後)

採卵日から約2週間後に、採血で血中のhCGを測定して妊娠しているかどうかを判断します。陽性か陰性かの結果は当日に出ます。妊娠判定前に出血などがあっても、自己判定せず必ず医療機関で判定を受けてください。

まとめ

生理開始3~10日ごろに行われる排卵誘発から妊娠判定までの体外受精のスケジュールをご紹介しました。不妊治療において体外受精を検討されている方は、体外受精がどのような流れで行われるのか事前に把握しておくことが大切です。また、排卵誘発やLHサージ誘起、胚移植に関しては医師と相談のうえ、複数ある方法から選択しなければなりません。それぞれの方法において夫婦や家族間でしっかりと知識を持ち、自分たちに最適な選択をしましょう。

東京の「ミネルバクリニック」は臨床遺伝専門医が在籍するNIPT実施施設であり、たくさんの妊婦さんの悩みや不安と真摯に向き合い、笑顔になれる出産に導いてきました。ミネルバクリニックでは、妊娠9週から受けられる赤ちゃんの健康診断である「NIPT」を業界最新の技術と業界随一の対象疾患の広さで行っております。遺伝のエキスパートである臨床遺伝専門医が出生前診断を提供しておりますので、是非、お気軽にご相談ください。妊娠初期からの出生前診断を受ける医療機関にお悩みの方は、知識・経験・実績とも「第三者から認証されている」臨床遺伝専門医が診療している「ミネルバクリニック」まで是非、ご相談ください。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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