【遺伝医学】世代をこえて受け継がれるDNAのスイッチの状態

2019年5月12日(日) 21:00~21:50に放送されたNHKスペシャルではDNAのスイッチがどのように運命を左右するのか秘密をさぐる,という内容でした.

出演者は, タモリさん, 山中伸弥先生, 久保田祐佳さん(NHKアナウンサー)
ゲストは 石原さとみ さん,阿部サダヲさんでした.

そのなかで,興味深い内容があったので,論文を探して読みました!

折角なので,抄録だけでも翻訳して,みなさまにお読みいただきたいなと思います.

ちなみに,DNAのスイッチというのは

DNAが巻きついているヒストンというタンパクの修飾(メチル化,アセチル化など)の種類で巻きついているDNAが読まれやすくなったり(発現しやすくなったり),逆に読まれにくくなったりすることを表現しているようです.

医学的には ゲノム ではなく,エピゲノム と表現されます.


ゲノムヒストンと呼ばれるたんぱくに巻き付いて折りたたまれる画像です.

ruo.mbl.co.jp/bio/product/epigenome/images/histone-nuleosome.jpg


ヒストン修飾の一つであるアセチル化とその構造変化の画像です.

ruo.mbl.co.jp/bio/product/epigenome/article/histone-modification.html

 

 

 

その中で,興味深かったのは

祖父の代が食べ過ぎると子や孫は普通に食べただけで太る肥満体質を受け継ぐという研究結果があるということです.

その論文を探して読んじゃいました!

抄録だけ訳すとこうなります.

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Grandpaternal-induced transgenerational dietary reprogramming of the unfolded protein response in skeletal muscle

骨格筋における折りたたまれていない蛋白質応答の祖父性誘発性経世代的食事性リプログラミング

Petter S. Almら

抄録

 

目的:親の栄養と生活様式は子孫の代謝表現型に影響する。著者らは、祖父性慢性高脂肪食(HFD)が次世代に経世代的にグルコース代謝を障害することを報告した。本稿では、祖父性食が骨格筋のトランスクリプトームおよびリピドームに経世代的に影響を及ぼすかどうかを調べた。本研究の目的は、環境誘導表現型の世代間遺伝に関与する組織特異的経路を同定することであった。

方法: F0雄SpragueeDawleyラットに、12週間HFDまたは食餌を与えた後、食餌を与えた雌と交配してF1世代を作った。F2の子孫は、飼料給餌雌の独立系統と飼料給餌雌を給餌したF1雄を交配することによって作製した。F1およびF2の仔動物に12週間固形飼料またはHFDを与えた。F2雌ラットの長指伸筋において、転写分析およびLC-MSリピドミクス分析を実施した。Gene Set Enrichment analysis (GSEA)を実施し、祖父性食事によって再プログラムされた経路を決定した。

結果: GSEAは、食餌摂取雄の大児と比較して、HFD摂取祖父由来の大児の骨格筋において、折りたたまれていない蛋白質応答経路の富化を明らかにした。ストレスセンサー(ATF6a)の活性化は、この経路が活性化される重要なポイントである。興味深いことに、F1児の骨格筋にも同様の影響はみられなかった。大父性食による骨格筋リピドームプロファイルに大きな変化は観察されなかった。

結論:祖父HFD誘導肥満は骨格筋トランスクリプトームに経世代的に影響した。この知見はさらに、親の環境因子への暴露が子の開発と健康に及ぼす影響を強調している。

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この研究で,ゲノム(DNAの塩基配列そのもの塩基配列)ではない,エピゲノム(DNAが折りたたまれて保管される際の修飾のされ方)が遺伝することが明らかとなりました.

数世代にわたる骨格筋遺伝子発現に対する父性食の効果が調査され,食事誘発性肥満による代謝機能不全の父親への伝播は、肝臓や脂肪組織におけるトランスクリプトームプロフィールを変化させることがわかったんです.

父親由来の慢性HFD食が2世代後に骨格筋トランスクリプトームに影響することを示す。肥満の祖父から下降するHFD給餌雌ラットの骨格筋においてアップレギュレートされるUPR経路に富むいくつかの遺伝子を同定されました.

さらにこの研究では小胞体レベルでの蛋白質産生の恒常性制御が世代を超えたエピジェネティック遺伝(スイッチのオンオフという状態)の結果として変化していることが示唆されています.

注目すべきこととして,肥満では関連遺伝子の発現が変化しなかったため,これらの変化を直接的に説明しないようなのです.

このことは,受胎前の環境因子への父親の暴露がその後の世代にわたる代謝のエピジェネティックプログラミングに寄与しているという仮説を支持する事となります.

環境ストレス因子は,数世代にわたってエピジェネティックなプログラミングを変化させることがあるのですね.

何にしても,すごい研究です!

番組ではこれをもとにさらに発展した研究が紹介されていました.

精子トレーニングです!

また別稿で.



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