がん薬物療法専門医
がん薬物療法専門医とは、がんの薬物療法のみに限らず手術療法、放射線治療、緩和治療、臨床試験、治験などにがん関する様々な領域の高い知見と経験を習得したものに付与される専門医資格を有するがん診療の司令塔の役割を果たすべく養成される専門医たちです。
がん薬物療法専門医は、公益社団法人日本臨床腫瘍学会が認定する学会認定専門医の一つですが、一分野一専門医の大原則があるので、「がん」という名称を冠する唯一の専門医となっています。
悪性腫瘍に対する薬物療法の高度な知識やスキル、経験を持つ医師が「症例報告を書い」たうえで、「筆記試験」と「面接試験」に合格して付与される資格です。
認定には認定施設における一定の研修期間や科学業績(筆頭の原著論文)が必要で、研修は少なくとも5つの分野にわたり行わなければならない決まりになっています。
また、薬物療法はもちろん外科治療、放射線治療などのがん治療に対する総合的な理解が必要ですし、がんの疫学や公衆衛生、緩和医療の知識も求められる。
特に、多々あるエビデンスを患者さんに還元するために気を付けなければならない「他人のいうことや他人の書いた論文をうのみにする」という態度を排除すべく、臨床試験をデザインしたり、その良しあしをちゃんと評価できる技量も求められます。
ベースとなる診療科は悪性腫瘍の化学療法などを広く請け負う腫瘍内科のほか、消化器内科、呼吸器内科、血液内科および乳癌診療をうけもつ乳腺外科の医師が多い。
同じがん治療に携わる認定制度であるがん治療認定医は2日間の研修のあと試験を通れば付与されますが、がん若物療法専門医は研修要件が厳しく、経験症例の詳細な症例報告(行った治療に対するエビデンスレベルの記載も求められうる)の書類審査をまず通過し、次に筆記試験、さらに口頭試問を通過する必要が有るため、1万人を超えるがん治療認定医に比べて数が非常に少なく、2020年現在、1300人程度です。
がん薬物療法専門医は5年毎に必要な研修を受け、また更新試験に合格する必要があります。
更新に試験を課される唯一の専門医であり、「患者さんのために」専門医たちの質を担保するという厳しい姿勢に基づいています。
2020年現在でも東京や大阪などの大都市部に集中していることや、がんセンターや大学病院などの中核病院に集まる傾向があるため市中病院に所属するがん薬物療法専門医が少ないなど、その偏在が問題となっています。。
この記事の著者:仲田洋美医師
医籍登録番号 第371210号
日本内科学会 総合内科専門医 第7900号
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 第1000001号
臨床遺伝専門医制度委員会認定 臨床遺伝専門医 第755号